第5話 母の形見
学校について早々ですが、私は今指導室にいます。なんでかって?私が知りてえよ。そもそも行けとか言われたけど教師いないし。
『キンコンカンコンカンコンキンコン』
お、出たな爆速チャイム。キーンコーンカーンコーンとかやらないからねこの学校。全部が効率重視。あんなん合図さえあればいいだろ的な理由で爆速らしい。
「おはようございますティーナさん」
「おはようございます」
おそらく教師であろうその人は今まで見たことのない人だった。新任だろうか、このオバさんは。
「おっほん、私は…」
「自己紹介求めてないです、…ああEクラスの」
E、D、C、B、Aの五つのクラスの最下層だ。といっても、一番生徒数が多いのでオーソドックスとも言える。普通の家庭ならEが普通、Dで運良し、Cで優秀、Bが一族の誇り、Aは国宝級と言う感じである。
「御用はなんでしょうか、先生」
「そのネックレスの事です。アクセサリーをつけることは魔法制御以外では禁止のはずですが?」
まさかこのネックレスの事だとは。私のネックレスは銀色の葉っぱのような形をしたもので、緑の宝石がいくつかついているものだ。ミスった、これAクラスの先生にしか伝えてないんだった。
「えっと、これは…」
「なんの騒ぎですか?先生」
「校長。ティーナさんの校則違反について話していまして…」
「校則違反?ティーナさんが?」
入ってきた校長は、とても身長が高い。白髪で元の髪色はわからないが、目は黄緑色だ。光の加減では緑にも見える。その人はゆっくりとした口調で話を続ける。
「ええ、ネックレスを…」
「ふむ…ティーナさん、説明してくれ」
自然な形で私が話せるように促してくれた。毒を吐かないように慎重に答えなくてはいけない。
「こちらは…私の母、アイビー・エフェクターの守り飾りであるエメラルドを嵌め込んだ逸品で御座います。私の母唯一の形見であり、私の宝物です。」
その言葉に、先生はたじろぐ。当たり前だ、上級守護魔法のかかった品などただの教師をしていれば見たこともないだろう。
「アイビー…様の…!?申し訳ありません…!」
「いえ、構いませんよ。ただ…」
二度と話しかけないでくださいね。そう耳元で言った。するとその教師は走って立ち去って行った。
「なんだったんですか…」
「まあ許しておやり。最近入ってきたEクラスの問題児に手を焼いているようだからね。」
「問題児、ですか?」
このエリートばかりが集う学校にどうしたら問題児なんてものが入ってくるというのだろうか。
「緑髪だが緑の瞳を持っていて、女子生徒に好意を寄せられ、バリエーションは少ないながら魔法が強いとかなんとか。」
「そうなんですか…」
と、いうよりも。その条件に当てはまる男を想像すると一人思い当たる人物がいた。そんなはずはないのだが。
もしそうであれば、全部当てはまるのだが。
「あの、その人の名前は…」
「ん?ルキ・エーミスだったな」
「じゃあ違うか…すみません、教室に戻ります。」
なんだ、別人のようだ。なら安心だ、是非彼には安全な場所で暮らしていて欲しいから。
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