328 ザロメニア城塞の攻防 17
グラがキルを見つめる。
「キル君でも奴の相手は難しいみたいだね」
キルは暗い表情で頷きながら眉根を寄せた。
「ステータス、特にスピードでは負けているかもしれませんね」
「ステータスの不利はスキルでカバーするしかないわね」
サキがアドバイスをくれた。
「後は、戦うフィールドじゃな。地の利を生かして先手を取る。やはり空で戦った方が有利なのではないか?」
「そうですね。おそらく空中ジャンプとフライでは空中での細かい動きに差がでると思います。その辺に勝機を見出すしかないでしょうね」
ロムの言葉にキルも頷く。
「自分もキル先輩と一緒に彼奴と戦いたいです。後衛から援護射撃できたら良いのですが?良いアーツのスクロールはありませんかね?」
「もっと威力が大い技とか?辞典で調べてみるよ。俺も良さそうな技を増やした方が良さそうだしな」
キルとケーナのやり取りを聞いてビッグベンが不審そうに尋ねる。
「辞典で調べるとはどういう意味なのですか?調べてどうにかなるとか?」
キルはこれは秘密にしておかなくてはならないことだったなと気がつき動揺した。
「良いアーツがあったら使えるようになれればなという事です。深い意味はないですよ。ははは!」
苦しい言い訳をするキル。ビッグベンは小首を傾げたがそれ以上は追求してこなかった。
「とにかく今日は良くやってくれた。これで此方の兵士の補給まで、奴等が攻めてくる心配はほとんどなくなったんではないか?」
「軍を再編成するのには時間がかかるでしょう。相当損害が出ているはずです。ですが少数による奇襲については警戒が必要かもしれませんね」
グラがビッグベンに意見を述べた。
リンメイがキルに視線を向ける。奇襲に対して索敵範囲が一番広くいち早く気付いてくれそうなのがキルだからだ。そして返り討ちにできそうなのもキル以外に考えられないのだ。
「まあ、ゆっくりと休みをとってくれ。しっかり回復しておくのも大切だからな。奇襲に対する備えは我々に負けせてくれ。もしもの時は起こしに行く」
キングナバロがリンメイのキルへの視線に気がついてキルを休ませるために早く休むように勧めた。
「それじゃあ、部屋で休ませてもらうわよ」
サキはそう言うと、さっさと歩き始める。グラや他の皆んなもサキに続いて部屋に向かった。
後には将軍達が残って雑談を始める。
「彼等の活躍には、頭が上がりませんな」
ペロロバン侯爵が口火を切るとキングナバロが頷く。
「本当に助かった」
「しかし、獣人どもは本当に強かったな。王級以上が何人いるんだよ。流石にもう数人しか居なかろう」
バットウが苦虫を噛み潰したような顔をする。
「ロマリア王国には今では聖級以上が俺たちだけだ。在野に埋もれている人材を探せばまだいるのかな?」とリンメイ。
「それよりもあの冒険者パーティーとんでも無く強くないか? 13人全員が神級で一番弱いと思っていた生産職の少年が一番強いって、いったいどう言う事なんだ」
キングナバロが理解できないというように言った。
「ベルゲン王国恐るべしだな。あそことは戦争しないように王に進言しよう」
とビッグベン。
「まったくだ。どうりで緑山泊軍に俺たちがに負けてしまう訳だ。在野の人間が強すぎるぞ」
バットウが自分の敗戦を正当化するかのように言い放つ。
「冒険者ってのは金になるらしいからな。ロマリア王国にも強い冒険者がいるかもしれないな」
リンメイはさっきから人材探しに興味が有るらしい。
「いやいや! 強ければ俺達の耳に入ってるさ。ヤオカ流の奴らのことは知っていたんだ。あのくらいになればロマリアでは有名になってしまうだろう」
「そうだな。事実、奴等とヤオカ流の試合は有名だからな」
リンメイがビッグベンの話に同意した。奴等とはキル達のことだ。
「Sランクの冒険者だってちゃんとチェックされているぞ。ロマリアには三人いる」とキングナバロ。
「SSランクの冒険者はいないのか?」
バットウがキングナバロに聞いた。
「残念だがいると言う話は聞かんな。ただランクと星の数は必ず一致するわけではないからな」
キングナバロが下顎に手を当てる。
「実力があってもランクが上がっていない奴だって大勢いるからな。中には神級の奴が居ないとは限らない訳か」
ビッグベンが言った。
「それに成長途中のやつもいる」
リンメイの言葉にキングナバロが頷く。
「確かにな」
「ロマリアのSランク冒険者はこの戦いに参加する予定はないのかな?」
バットウが疑問を口にした。当然参加してくれるものと期待している。
「これから来る応援部隊の中に参加している可能性はあるだろうな。俺も期待はしている」
キングナバロがニヤリと口の端を上げるのだった。
その後獣人軍からの攻撃は無く、七日の後にロマリアからの援軍五万の兵が到着した。そしてその中には、期待のSランク冒険者三人が含まれていたのだった。
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