264 『15の光』始動 3
翌日『15の光』はデスビオ山脈に向かった。勿論ゼペック爺さんとクッキーはお留守番だ。
デスビオ山脈は、ルビーノガルツの北東に南北に連なる山脈で奥地の山には活火山も存在する。
キル達はまず麓の村々の聞き取り調査から開始した。
「ドラゴン?見た事はないねえ、昔々ドラゴンが村の近くを飛んでいたという伝承はあるが?本当かどうかわわからんよ?多分もっと北の方の話なんじゃないのかねえ?」第一の村のお婆さんはそう答えた。
もっと北の方という言葉を頼りに北の村に向かい聞き込み調査を続けた。
「ワシは見た事はないが、ワシの親は見たことがあるといっとったな、北の方から飛んできて戻っていったそうじゃ」90過ぎのお婆さんはそう言った。つまりこの地域でドラゴンが目撃されたのは100年位前の事らしい。
100年前に目撃されたドラゴンならまだ生きている可能性は大きい。
キル達はさらに北の村に向かった。
「ドラゴンを見た人間はこの村にはおらんと思うよ。言い伝えでは此処より北の火の出る山の方から飛んできたというものがあるな。此処より北には村はないよって、あとは山小屋に住む狩人くらいしか話は聞けんだろう。まだワシらより若い者しかおらんだろうから良い話は聞けぬと思うがな」最北の村の老婆はそう言った。
「ここまで最近見たものはいない。これ以上聞き込みをしても意味はなさそうじゃな」
「そうね、ロムの言う通り聞き込みは此処までにしましょう。山小屋を探してまで聞き込みを続けても何も情報は得られないような気がするわ」
「キル君の索敵には何もかかっていないんだよね?」
「はい。ドラゴンと思われる魔物の気配は感じられませんね。他の魔物の気配は有りますけれど」
「とにかく北の方に向けて棲んでいそうな洞窟とかを探していきましょう。もしかすると洞窟の入り口なら中の気配がわかるかもしれないわよ」
サキの意見に皆んなが洞窟のありそうな地形に注意を向けた。
ドラゴンを探しながら北へ北へと移動する。
「あれは何かしら!」クリスが叫んで指を刺した。
木も草も生えられない高地の岩肌付近にゆらゆらと揺れる空間が存在した。それも人が余裕で通れる程の大きさの揺らぎだ。熱による空気の変化で揺らいで見えるのとは様子が違う。そもそも地熱や蒸気が噴き出しているようすも無ければ熱も感じない。
みんなは揺らぎのそばに着地して不審な揺らぎを観察した。
「空間の揺らぎかな?」
グラも不審そうに眉根を寄せる。
「異空間につながっていたりするのかしら?」
「ワープゾーンになっている事もあるかもしれねぞ」
「ただ揺らいで見えているだけかもしれませんよ」
「石でも投げ入れてみたらどうだい」
グラの提案を受けてロムが石ころを揺らぎに放った。
石が揺らぎの中に入ったように消えて無くなる。
全員が顔を見合わせた。
「揺らぎを抜けてどこかに行ってしまったようじゃな!」
「こういうのってくぐるたびに違うところに飛ばされたりして皆んながバラバラになっちゃう可能性もあるわよね!」サキが不安を口にした。
「それとくぐったら最後戻って来れない可能性もあるのと違うか?」
「試してみますか?」
「どうやるのじゃ?」
「精霊を召喚して見て来てもらうんです」
「良い考えだわね」
「やってくれ」
キルは中級の土精霊を呼び出し歪みの中に行って中を確かめて戻ってくるように命じた。
土精霊が揺らぎの中に入ってすぐに戻って来る。そしてもう一度入って今度はもう少し時間が経ってから戻ってきた。
「くぐるたびに同じ所に行けるようですが、とりあえず手をつないで一体になってくぐりましょう。それと2度とも此処に戻って来れているので帰りも此処に戻れると考えて良いでしょう。」
「つまり、2点をつなぐ出入り口になっているという事じゃな」
「そのようね」
「どうしましょう?中を探検しますか?こんなドラゴンの棲家は聞いた事が有りませんが?」
「エンペラードラゴンが棲んでいるとなるとどんな所なのかはわからないからね、中を覗いてみるだけ見てみようか?危険な奴がいるようならすぐ引きかえそう」
グラが皆んなを見回し反対意見がないのを確認する。
「皆んな手を握って一つにつながって」
サキの指示で皆んなが手をつないだ。
「俺が先頭で入りますね」
キルが先頭になり順々に揺らいだ空間をくぐって行った。
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