220 ヤオタ
「君がキル君だね」
「は、はい。確かに俺はキルと言いますが?あなたはどちら様で?」
初めて見る男にキルは警戒を強めた。
グラもロムも振り返って男達を見る。
「俺はヤオカ流頭首、ヤオタというものだよ。先日はうちの門弟がお世話になったと聞いて君を探していたのさ」
ヤオタは身長210cmはあろうかという大男だ。
完全にキルを見下ろしている。
こいつが力の剣と言われる剣聖ヤオタか………
キルの背中に冷たいものが流れた。
よく見ると取り巻きの中にこの前逃げて行った四天王が混じっている。
「どのようなご用件で?」
どうせ仕返しに来たに違いないと思いながらキルが聞いた。
「君がとても強いって聞いてね。ぜひ一度手合わせをお願いしようと思ったのさ。まさか断ったりしないだろう?」
ヤオタは不敵に笑った。
「ちょっと待ってください。キル君とやる前に俺の相手をしてもらえませんかね?」
キルの前に進み打たのはグラだった。
「俺もちょっとは剣の腕に自信があってね。剣聖様と手合わせしたいと思っていたのさ」
「無礼者め!貴様如きがヤオタ様の相手になるものか!貴様の相手はこの俺がやってやる。」
四天王の1人がグラの前に進み出た。
「いや、お前の相手はこの俺が、」
もう1人の四天王が名乗りをあげる。
ホドもグラの横に立った。
「あんた達なんか私たちで十分よ!」「うん。うん」
エリスとユリアが剣に手をかけた。
「ハ!小娘如きが生意気な。身の程をわきまえろ!」
残りの四天王2人も前に出てくる。
「これは面白い。どうせなら5対5の団体戦でもやろうじゃないか、どうだ?」
ヤオタが笑って提案した。
「面白い、それは勝ち抜き戦で良いんだろうな?」グラが注文をつける。
「良かろう。その方が面白い」
ヤオタがグラの出した条件を了承した。
「それと、場所はこのコロシアムで行う。真剣を使ってな!正式な興業として行えば間違って死に至らしめても罪にはならないからな、3日後この時間に此処に来い。ハハハハハ!」
つまりは殺し合いをするつもりだということだ。
ヤオタが笑いながら去っていった。取り巻き達もヤオタに続いて去っていく。
「あらあら、面白いことになっちゃたわね!」
サキが笑いをこらえながら言った。
「グラさん勝手に決めて酷いですよ!」
キルがグラに抗議する。
「まあまあ、キル君に出番はないから気にしないでくれよ!俺が先鋒で5人抜きをやるからね。」
「私たちだって戦いたいんですけど!」「うん。うん」
エリスとユリアがグルの企みに抗議する。
「どう考えても私が先鋒でしょ!」「うん……?私よ」
とエリスとユリア。
「いや、君たちは危ないから俺が先鋒で5人抜きするよ!」
「グラさんはあとね!そうでないと私たち戦えないじゃない」「うん。うん」
「戦わなくって良いんだよ、人間相手は危険なんだから!しかも相手は剣聖だ」
グラが2人をなだめる。
「あの人たち特級だったじゃないですか。そんなのに負けませんよ!」「うん。うん」
「全然問題ないですよ。怪我なんてしませんから!」「うん。うん」
ヤオタは聖級だったがそのほかは特級だったのは間違いない。
「そうだね、そうだけどね!」
「グラさんの嘘つき!本当は自分が5人抜きしたいだけなんだ!」「うん。うん」
「5人抜きは禁止にしましょう!」「うん。うん」
続けざまにまくしたてるエリスとユリア。
「わかった、5人抜きは禁止にしよう。」
グラも2人の勢いに押されて折れる。
それから5人がどこで出て何人まで倒すかでしばらくもめた後、結局先鋒エリス、次鋒ユリア、中堅ホド、副将グラ、大将キルで話がついた。
倒すのは1人が2人までで3人めは次に譲ることになった。
闘モウなんてそっちのけで3日後の団体戦の打ち合わせが嬉々として行われのだった。
グラがホドに頼み込んでいる。
「お願いだから剣聖とやらせておくれ〜」
ホドは頷くはずもなかった。
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