199 キル、4対1で戦う。

鬼蜘蛛の鉄の棒がキルを襲った。

キルはすかさず躱わす。


鉄棒が当たった地面の土が弾け飛ぶ。

メチャクチャな怪力だ。


弾けた土塊がキルに当たる。


ダメージは無いとはいえキルはバランスを崩した。

そこに蜘蛛隠れのスイの細くて見えない鉄糸の攻撃。


キルは倒れ込み回転しながら鉄糸の攻撃を躱わす。

常人であれば触れた鉄糸が見えず、鉄糸で首を飛ばされているところだ。


キルの頬からスーと血がにじんだ。

ただの鉄糸では無いな。ミスリルか?


キルは頬の血を手で拭った。


そこに火焔蜘蛛のファイヤーボールと雷蜘蛛の鎖鎌の分銅が襲いかかった。

キルは飛び上がって二つを躱わすとそのままフライで飛行する。


黒蜘蛛達の囲いの外に降り立つキルに4人は追撃を緩めない。

4人の攻撃を躱し続けるキル。

キルはいつの間にかまた囲まれていた。


上手いな、コイツら、連携も熟練している。

キルは軽く息を吐いた。

「フー」


「ファイヤーピラー!」

火焔蜘蛛のグレンがキルの足元に爆炎と共に5本の火焔の柱を立てる。


キルは炎に包まれた。


キルは一瞬早くスキンシールドとマジックリフレクションを唱えていた。

マジックリフレクションで跳ね返された炎が四方に広がって黒蜘蛛党達に向かった。


炎を避け距離を取る4人。


一瞬の間を見つけキルはすかさず聖級精霊召喚を行った。


王級精霊も呼べるがここは聖級でも十分と判断した。

その方が召喚にかかる時間も消費魔力量も少ないからだ。


4体の精霊達が黒蜘蛛党の4人に攻撃を始める。


炎の精霊は火焔蜘蛛のグレンに、土の精霊は雷蜘蛛のギラリの相手だ。

この2人の攻撃は相性的にこの精霊には効果が弱い。


鬼蜘蛛のジャキには風精霊が、蜘蛛隠れのスイには水精霊が戦いを挑んだ。

これも比較的相性は良い方だろう。


召喚された聖級精霊に黒蜘蛛達は苦戦していた。

ここまで来ればキルは余裕だ。


まずは面倒そうな雷蜘蛛のギラリに狙いを定め、土精霊と挟み討ちにする。

雷撃を放ってきたがマジックリフレクションで跳ね返す。


魔法が効かなければギラリなどはキルの相手ではなかった。

キルは鎖鎌の分銅を躱して懐に潜り込むとミスリルの剣を横に薙ぎ払った。


ギラリの体が腹で2つに切り離される。


キルはそのまま火焔蜘蛛のグレンのほうにむかう。

グレンは炎精霊に魔法が通じず苦闘していた。


背後から近づいたキルの剣が唐竹割りにグレンを2つにする。


あっという間に2人を倒され形勢不利を悟る黒蜘蛛党の2人。


蜘蛛隠れのスイが特殊能力を使う。

スイの体が色を失い空気の中に溶け込んで消えていく。

異空間にでも逃げようとしているのか?


「にがさない」

キルは蜘蛛隠れのスイが隠れきる前に見えないほどの高速で近づき横一閃で切り殺した。


残るは鬼蜘蛛のジャキだけだ。


ジャキは鉄棒を振り回し風精霊の攻撃をしのいでいた。


「残るはあんただけだ。」

キルがジャキを挑発する。


「こうなったらお前だけでも必ず倒す。」

鬼蜘蛛のジャキが吠える。


初めからキルしかいないのに今更何を言っているのだろう?意味不明だ。


キルは鬼蜘蛛を逃さないように4体の精霊に鬼蜘蛛を包囲させる。


鬼蜘蛛は正面のキルに襲いかかった。


ジャキの鉄棒がうなりを上げる。


キルはストレージからミスリルの盾を取り出してジャキの攻撃を受け止めた。

「シールドバッシュ!」


キルの盾攻撃は鬼蜘蛛を吹っ飛ばした。


4体の精霊達の中央に跳ね飛ばされたジャキに精霊達から攻撃が降り注ぐ。


ジャキが鉄棒を高速に振り回し精霊達の攻撃を弾き返した。


「ほーう。なかなかの防御力だな」

キルはミスリルの剣に魔力を流す。

ミスリルの剣が強く輝き出した。


再び鬼蜘蛛のジャキがキルに襲いかかった。

鉄棒を振りかぶり渾身の力で振り下ろす。


キルは振り下ろされる鉄棒の下を潜ってジャキとの間合いをつめるとミスリルの剣を薙ぎ払う。


ジャキの横を通り抜け振り向きざまにまた一刀、袈裟に切る。


ジャキの鉄棒が地面に大きな地響きを立てて土煙を上げた。


「グホー」ジャキの体から血が吹き出しジャキは前のめりに倒れ込んだ。


キルは倒れたジャキの背中にとどめの一撃を入れる。


キルはグサリとジャキの心臓にミスリルの剣を突き刺したのだ。


剣を抜き一振りして剣の血を振り払うとキルは剣を鞘に収める。


「終わったな」


ほっとため息をつくキル。


キルの表情は硬い。たとえ追手といえども人を殺すのは気の重い作業なのだ。



キルは精霊を戻して戦場を離脱、みんなのところに引き返す。


「3日もかからなかったな」

キルが呟きそしてフライで空を飛び始めた。

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