181 解決と結果

ミノタロスへの進化は止まった。


進化の原因になった魔石柱がどうして地中にあったのかは不明であるが、モーモーの移動経路に当たる場所で見つかった以上、ミノタロスが現れ出した最近になって魔石柱がそこに埋められた可能性が高い。


何者が埋めたのか?

はたまた何者がこのようなものを作ったのか?

あるいはどこにあったものを持ってきたのか?

まったく謎の多い魔石柱である。


5人はミノタロス殲滅のためリーダーのケーナ達と合流した。

ミノタロスの発生を食い止めた以上、残ったミノタロスを殲滅すれば依頼は完了で有る。


第3騎士団に任せても良いがそれは見るからに荷が重そうであった。

『レスキューハンズ』は騎士団達から離れたところに戦いの場を移しミノタロスの狩りを開始した。


倒したミノタロスは素材としてストレージに収納しつつミノタロスのいない地域を広げていく。


翌日までかかってミノタロスを殲滅することに成功したのだった。


依頼の成功報酬はクランに対して200万カーネルとそこで回収した素材の約束だ。

賃金こそ9人で割れば1日当たりはわずかな金額だが集めた素材はミノタロス1272頭と魔石柱のカケラでかなりの価値になる。


魔石柱は卸値で1つ2000万カーネルの⭐︎6の魔石200個相当とすればそれだけで40億カーネルにもなる。ミノタロスの素材も魔石の他に斧、角、皮、肉、骨、歯などがあり売ればとんでもない金額になるのは明らかだ。


ギルドへの報告を済ませミノタロスの素材は買取に回し、クランのホームに戻った時には夕方になっていた。魔石柱はキルが買い取った。


クランのメンバーは、もう仕事をしなくても暮らしていける状態だ。

後は強くなりたいものとそうでないもので冒険者活動に対する積極性に違いが出てきているようでもあった。


マリカなどは今回『聖女様』などと言われたせいかダンジョンにはあまり行きたくないが他のパーティーと共同で行う依頼には乗り気なようだ。


メンバーで強くなりたいという気持ちの強いのはベテラン4人とクリス、ケーナ、ユミカだ。


だが他のメンバーも強くなる事は嫌いではないように見える。


ただ休みも欲しいという気持ちも強い。

基本この世界の冒険者は怠け者だ。

いや、それは冒険者に限った事ではない。


暮らしていけるお金があるうちは働かない人のほうが普通なのだ。

現代日本のような勤勉さを当たり前に思って疑問も持たない世界の人間とは基本的に違う。当たり前が違う。その点キルは日本人的なのかもしれない。何故だろう。


グラ達4人は⭐︎6のジョブスクロールを購入した。まだ討伐経験値が暫くの間足りないのでステータスはアップしないがいずれは、進化するだろう。


魔石柱は4人の取り分にしたので1人10億、⭐︎6のジョブスクロールは10億なので今回は借金なしで購入できた。彼らの上昇思考は今こそマックスだ。


なにしろ経験値を満たせば王級に進化できるのだから。

多量に討伐経験値を稼ぐには強い魔物をたくさん討伐する事、この辺で言えばフクラダンジョンに潜る事になる。


明日は休養日、その次はまたフクラダンジョンにもぐろう。




ミノタロス大量発生事件の解決に『レスキューハンズ』が関わった事は騎士団により王国首脳に伝わった。


そのメンバーについても注目が集まったのである。

『レスキューハンズ』の名は死亡したキルの所属クランとして最近耳にしたことのあったクランで、キルの調査報告にも詳しく述べられそのメンバーに新たに謎の仮面男ゴテが加入している事に不審の目が向いた。


このことにより、王国は偽装工作の可能性を疑い出すことになる。

また教会にもその情報は伝わることになった。


王国と教会は『仮面の男、ゴテ』の身辺調査を行い出したのである。


キル達がフクラダンジョンから戻ってきた時にはクランの周辺に怪しげな人間による調査の痕跡が見受けられるようになっていた。



「ケーナちゃん、新しく加入したゴテさんってどんな人なの?この前教会関係の人と王国の役人だと名乗る人が聞き込みに来ていたわよ。気を付けなさい。」


ケイトがケーナに近づいてきて小さな声で教えてくれた。


ケーナはキルに危険が近づいている事を知る。

そしてクラン舞戻るとケイトの話をみんなに伝えるのだった。



「大変す、大変っす! ゴテ(キル)さんの事を調べている人がいるらしいっす。ケイトさんの所に来たそうっす。」


クランホームが凍りつく。


「まさかそんなに早く身バレするとも思えんがな。」

口を開いたのはグラだった。


「気をつけることに越した事はないぞ。」


「王国の役人と教会の人間が調べてるらしいっすよ。」


「逃げますか?やはりここでは危ないのかも。」

クリスが心配そうにキルを見つめた。


「仮面も無駄だったね。」

キルはそういうと仮面を取り外した。

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