179 進化の原因は?
「ミノタロスが進化している現場をまずは調べるしかなさそうね。何か手掛かりがあれば良いんだけれど。」
サキが赤い髪を掻きながら言った。
「もう少しすれば第3騎士団がミノタロス殲滅のために到着するはずです。それまで町を守れれば良いのですが。」とガンクス。
「第3騎士団が派遣されて来るのですか?」グラが聞き返した。
「ミノタロスが大量発生しているという情報と同時に派遣を要請していますから。」
「それくらいの間ならば守りに徹すれば大丈夫でしょう。我々は進化の原因を突き止めることとしましょう。」
グラはキルの方を向くとキルを呼んだ。キルはグラの側による。
「ゴテ、俺達元『天剣のキラメキ』が進化の原因を調べて来るから、町の守りは元『レスキューハンズ』に任せて良いか?」
ゴテ(キル)は頷いてケーナに視線を送った。
ケーナはそれに気づいて答える。
「大丈夫っすよ。グラさん達こそ気をつけてください。」
グラは頷いた。
「じゃあ上空から進化している個体を探すわよ。」
気が早いサキである。
サキの活躍によってミノタロスの押し寄せる数が減り、今のところキルが出るまでもなくケーナ達が排除していた。
グラ達がフライで飛び立ちモーモーの群れを上空から観察し始める。
ミノタロスに進化する場面を探すためだ。
「あそこのモーモーが立ち上がってるぞい!」
ロムが叫んだ。
だいぶ離れた場所を指差すロム。
4人はロムの指差す方向に飛んでいく。
その周囲のモーモーは立ち上がることが多いように感じる。
進化が起こる場所があるのかもしれない。
明らかに今まで通り過ぎてきたところとはモーモーの立ち上がる姿がたくさん見受けられる。
「進化が起こっている範囲を特定できるかもしれない。周囲を回ってその範囲を特定しよう。」
進化が起こる場所とそうでない場所があるなら、進化が起こる場所に進化の原因があるはずだ。
周囲を飛び周りモーモーが立ち上がる場所と全く立ち上がらない場所があるのは明らかだった。
その範囲はかなり広い範囲ではあったがその範囲内を調べれば何かわかるに違いないとグラは考えた。
「進化する場所があるみたいね。それもかなり広範囲だわ。」
「進化する場所としない場所でモーモーの行動に何か違いはあるかよーく調べよう。」
「そうじゃのう。」
モーモー達の様子を観察するグラ達。
「特に違った行動はないようじゃな。」
「そうね。草を食べるか移動するかね。」
暫く考えてからグラが提案する。
「草を調べてみるか?」
「そうね、じゃあ採取して比べてみましょう。」
「生えている全種類を集めるのじゃぞ。あちらだけにある草とかの違いが大事じゃ。」
「そうだね。」
グラ達は地上に降り立つとミノタロスを倒しながら草の採取を行った。
「持ち帰って比べよう。いずれにしても進化が起こる特定の範囲はわかったぞ。」
「待って。土も持っていって調べましょう」
土も採取してグラ達は飛行してキル達の方に引き返した。
その間、キル達はミノタロスを危なげなく倒していたが相手をするミノタロスが徐々に増え出してもいた。
グラ達が帰還して調査の結果モーモーがミノタロスに進化する特定のフィールドが存在していると報告される。
採取してきた土と植物の比較検証も行われたが2つに差がないことが判明する。
進化する原因は不明のままだ。
夕方になり野営の準備をする。
モーモーもミノタロスも夜間はあまり動かなそうだ。
翌日グラ達4人はもう一度原因究明に向かった。
ミノタロスへの進化は止まることなく続いている。
モーモー全てが進化してしまうという事は考えられないが原因を取り除かなければ今後もミノタロスが発生し続ける。
キルと8人の少女は騎士団と共にミノタロスを倒し続けていた。
押し寄せるミノタロスの数は徐々に増え続けている。
キルはまだ本気を出しているわけではないので町の防衛には余裕があるのだがキルとしては本気を出して目立ってしまうのは避けたいところでもある。
聖級精霊などを呼び出そうものなら騎士団からチェックが入って王にまで話が及ばないとも限らないのだ。
特級精霊4体を呼び出しているだけでも目立っていそうな気がするがクリスやケーナ、その他の実力も半端ないのでその分隠されているように思う。
レスキューハンズの活躍で増え続けるミノタロスの攻撃も難なく退けてはいたがそろそろキルも力を出す必要がありそうになってきた。
そんな時、第3騎士団が援軍として到着した。
良いタイミングだ。キルはホット息をつくのだった。
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