145 天剣のキラメキとキル  3

「ダンジョンに入る前に昼飯を食べておかないか?」

グラがそう言ったのでキルは、ストレージからスープの入った大鍋を取り出しお椀に5人分取り分けた。大鍋は冷えないようにすぐにストレージに収納しなおす。


そしてストレージからパンとあたたかい漫画肉を出してみんなに渡す。


「キル君のストレージは本当に便利で快適な冒険ができるようじゃな。ワシらは今まで干し肉が食事の中心じゃったぞ。」

ロムが顔を綻ばせて漫画肉を頬張った。


グラもサキもホドも満足そうにパンと肉、スープを食べている。


「これからダンジョンの中に入る訳だけれど、おそらく中はリザードマンがひしめいていそうだと思う。」


「間違いなくそうじゃろうな。」


「索敵でもそう感じています。」


「ダンジョンが狭いと5人が並べない場所もあるだろうな。剣が振れない場所もあるかもしれない。未知のダンジョンは本当に厄介だ。」

グラが地形的な不利について戦闘状況を想定してみているようである。


「やっぱり相手が多いとまとめて攻撃できる魔法の比重が高くないとキツくなるんでしょうね。」サキは魔力の消費を心配しているのだろう。


楽しいはずの食事の時間がこれからの戦闘を思うと暗いものになっていくようだ。


「俺が先頭で剣を持ちながら先制攻撃で魔法を撃ちますよ。サキさんは特級魔術師だからMPは1万以上有るんでしょうが、俺は100万有るのでサキさんはMPを節約して長丁場に備えて貰って良いですよ。」


「「「「100万!!!」」」」


全員がキルの魔力量に驚きの声を上げた。


「聖級スクロール職人ですから。」


キルの説明にグラが信じられない顔をする。

「それにしても普通10万だろう。」


「まあ、他の職業も持ってますから。」


「幾つの聖級ジョブを持っていると言うの?」サラも聞き返す。


「16のジョブを持ってます。ハイ。」

キルは唇に人差し指を当てて口外しないようにお願いした。


「信じられんのう。スクロールを使って身につけたと言うことなんじゃな。ムーーン。

そのどれもがもしや聖級と言うことじゃのう。」


「まあ、そんな所です。」


「「「エーーーーー!  」」」

冗談で言ったのに本当だった、、、と4人が思った。


「もしかして剣士のジョブも魔術師も聖級?」


「数日前にフクラダンジョンで進化経験値が条件に達した様で一気に進化したんです。」


天剣の4人の表情が固まっていた。


「それにしてもこれでサキのMP切れを心配しないでもよくなりそうだな。キル君は先頭でガンガンに魔法攻撃をしてくれ。サキは魔力を節約してもらって構わないだろう。」

切り替えが早いのかグラが作戦を口にする。


「そうは言っても私だって1万はあるわ。それなりにペースを考えて魔法を撃つわよ。」


普通の魔物が相手ならそれ程MP消費量の多い魔法を使わなくても良いのでMP1万ならMP切れの心配はないだろうが、今回リザードマンやそれより強い魔物が相手になるのでMPの使用量が多い魔法を撃つ事も多くなりそうなのでペース配分も必要だろうと言うことか?


キルはダンジョン内で役に立ちそうなスキルはないかと探してみた。

多数のリザードマンを一気に倒してしまえる魔法があれば良いのだけれど。


リザードマンともなると耐久力も高いので流石に一撃とはいかなさそうだ。

広い範囲に効果があり連射が効く攻撃力の高い魔法を探す。


サイクロンカッターも良いが特級電撃魔法マキシマサンダーなら攻撃後に行動不能にする効果がある様だ。


この2つのスキルスクロールを作って身につけるキル。

この2つの魔法を中心にダンジョン攻略を進めて行こうと思う。


マキシマサンダーで足止めした後にサイクロンカッターの連射でトドメをさすという作戦で行こう。マシンガン爆裂バレットでも良い。


まずは足止めができるのが良い効果だと思うキル。そうすることによって次からの魔法をたくさん連射する時間ができるのが有り難いのだ。


新しい魔法を身につけてニンマリしているキルを見てグラが声をかけた。

「何か良い作戦でも思いついたのか?」


「イエ、良さそうな魔法をスキルスクロールで身につけたところです。」

そう言いながらフライのスキルスクロールを4人にストレージから出して渡した。


「それ、フライのスキルスクロールです。代金は依頼完了後に精算という事でお願いします。」


4人はフライのスキルスクロールを受け取ると早速使ってフライを身につけた。


サラは試しに森の上まで飛び上がって飛行を楽しんでから戻って来た。

「これ素敵なスキルだわ。もっと早く欲しかったわよ。」


「スキルスクロールも有効に利用すると良いかものう。」

ロムが改めてスキルスクロールを見直した様である。


良いお客様ができたのかもしれないと思うキルである。


「ヒールやハイヒールのスキルをみんなが持っているととても安心ですよ。

レスキューハンズは全員持っています。今なら在庫が有りますよ。」


天剣の4人が顔を見合わせて

「「「「欲しい!」」」」


キルはヒールとハイヒールのスキルスクロールを4人に渡した。


4人はヒールとハイヒールを身につけるのだった。

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