137 キル 見つめなおす。
翌日、クランのメンバーが心配になりフクラのダンジョンに行くことにした。
スクロール作りだけでは時間を持て余してしまうという事もわかった。
第一階層のミノタロスを蹴散らしながら、第二階層に到着レッドオーガを倒しながらクランメンバーを探した。メンバー達はいつもの場所に居たのでさほど苦労は無かった。
「キル先輩〜!」
キルをみつけてメンバー達が駆け寄った。
「怪我人はいない様だね。俺が居なくても立派にやっていけそうだな。」
「いつも二手に分かれてますからね。キル先輩がいない事はいつもとさほど変わりませんでしたよ。気持ちの問題だけですね。」
エリスが冷静に分析した答えを出す。
「うんうん。」ユリアが同意した。
「でもー近くにいないと思うとー少し心細いかなー。」とマリカ。
「少しの間皆んなの戦う様子を見させてもらうよ。皆んなの強さをこの目で確かめたいしね。」キルはそういうと最後衛にポジションをとった。
レッドオーガの気配を察知して全員が臨戦体制。
そして現れたレッドオーガ3匹に集中攻撃で倒した。
ケーナがささっと魔石を回収して戻ってきた。
「コッチのオーガを狩りに行きます。」
クリスが指差して移動を開始した。皆んな索敵でどのオーガを狙うか判っている。
そして3匹のレッドオーガと遭遇すると遠距離から攻撃開始。
一方的な遠距離攻撃で倒してしまう事が安全な戦い方である。
だが相手の種族や能力によっては遠距離攻撃をできるものもいる。
そういう奴は安全に戦うというわけにはいかないとも言える。
先制攻撃で反撃の隙を与えないというのが最善だろう。
その点索敵によって相手の様子が事前にわかっている事は必要不可欠な事である。
意表をつかれて突然猛攻を受ければ大打撃を受けてしまうのは避けられない。
これをやるのかやられるのかでは大きな差がある。
遭遇のその一瞬のありかたで勝ち負けがかなりの部分決まってしまう事もあるのだ。
勿論近接戦闘を軽視しているわけでは無い、むしろ最終的には近接戦闘になるのだしその強さが最終的に勝負の分かれ目になることも多いのが事実。
だが実際の戦闘においては正々堂々力を比べるわけではなく奇襲をかけたり後ろから攻めかかったり挟み撃ちにしたりと、いかに有利な状況で戦うかが大事でありそうする事によって時には10倍の敵を倒す事も有るのだ。
面と向かってガチガチにやり合う時に近接戦闘の個人の力が問われるので有る。
先制攻撃で倒しきれず近接戦闘になるとガチガチにやり合うことになるのだ。
クリスとケーナの指揮のもとメンバー達のレッドオーガ狩りが続いた。
それをキルは眺めていた。クリスもケーナも十分に強く、もう手放しで任せておいても良いと思った。
「さて、そろそろ俺は第3階層で狩りをしてくるよ。」
キルはそう言うとフロアボスを倒しに向かった。
ブラッドオーガを剣の近接戦闘で切り刻み難なく第3階層へ。
第3階層では水、風、土、の特級精霊を呼び出して戦ってもらった。
キルの援護射撃のもとシザードウルフとシザードウルフチーフを精霊達が倒してくれた。
火の精霊はダンジョン内では酸欠を考えて呼び出しにくい。心配し過ぎで何ら問題ないとは思うが念のためである。戦力が足りないと思ったらその時は呼び出せば良い。
いつもは1人で倒していた奴らだ。それを精霊達に倒してもらって楽をしているのである。つまり手抜きだ。
第3階層のフロアボスと戦う戦力として特級精霊4体とキルで戦えば倒せるのではないかと思うキルである。思えば召喚士と言うのも強力な戦闘職だ。
特級精霊の強さは特級冒険者と同じとも思えるが、同じ特級といってもかなり強い方の特級冒険者と同じかそれ以上の様に思える。
ブラッドオーガと互角というところだろう。
第3階層のフロアボスはおそらく聖級レベルの魔物に違いない。そうでなかった時は、つまりそこまで強くない魔物だった時は得られる魔石は⭐︎4ということになる。
⭐︎5の魔石が欲しいのに⭐︎4の魔石では骨折り損というものだ。
だが索敵で感じるフロアボスの強さは⭐︎5のそれである。
⭐︎5の魔物は強い。サイクロンサイクロプスと同ランクである。
魔法も使ってくるに違いない。
聖級レベルの攻撃をまともにもらったら特級精霊といえども瀕死の重症を負いかねない。
キルはフロアボスとの戦いに備えて特級精霊4体を呼び出し、自分にもできるだけのバフをかける。
ここでフロアボスと戦う必要が有るのかと内なる自分が問いかけてきた。
そう、戦う必要などないのだ。⭐︎5の魔石が絶対に必要なわけではないのだ。
冒険者としての強さを求めなければ。
キルは自分は慎重な人間だと思っている。
その自分がもう勝てると考えている。大丈夫、危険は少ない。
特級精霊4体と一緒に戦うのだ。
大丈夫・・・大丈夫だとキルは言い聞かせた。
やはりキルは自分は冒険者として強くなりたかったのだと気付くのだった。
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