132 Aランクパーティー 天剣のきらめき  2

銀行についた8人。


中に入ると銀行の支配人が寄って来た。

「これはこれはグラ様、ロム様、サラ様もホド様も皆様一緒にお越しいただきまして有難うございます。今日はお預けですか?」


グラ達は大口預金者と言っても良い冒険者で有る。

なにしろリオンでただ1人の特級剣士グラのパーティー4人組なのだ。

稼ぎもトップクラスであるはずだ。

通常なら預金に来ることが多いのだが今日に限っては違った。

ほぼ全額を引き出そうと言うので有る。

丁寧に接待されると気まずい。


「実はね。大きな買い物があって預金を引き出さなければいけないんだ。」

気まずそうに支配人に告げるグラ。


支配人は表情も変えず笑顔で答える。

「大丈夫でございます。

またきっと稼いでお預けに来ていただけるものと信じておりますので。

大金ということでしたら奥のお部屋をご用意致しましょう。

どうぞこちらへいらして来ださい。」


支配人はみんなを引き連れて奥の部屋へ向かった。

そこは綺麗に清掃された10人程が入れる部屋で、真ん中にテーブルと椅子が10人分設置されていた。


その椅子に片側にキル達、反対側にグラ達が座った。


支店長が聞く。

「で、おいくらほどお引き出しになるのですか?」


サラとロムとホドが顔を見合わせて代表してサラが発言した。

「全額よ。」


グラがサラの発言を捕捉する。

「3人が8000万カーネルの買い物をした。合わせて24000万カーネルだ。足りない分は俺が貸すことになっているから3人の不足分を俺から出せる様におろしたい。」


「1万カーネル単位で考えますか?1000万カーネル単位で考えますか?」

支店長が聞く。


グラは暫く考えてから「嗚呼、そういうことか。1000万単位で貸すことにするよ。」


支店長は頷くと部屋を出ていった。

そして程なく24000万カーネルを持って部屋に入って来た。

金塊2つと金板4つだ。


キル以外の7人がその大金に目を見張る。


ロムが思わず呟いた「金塊なんて初めて見たよ。」


支配人が口を開いた。

「サラ様6000万、ロム様7000万、ホド様7000万、そしてグラ様4000万のお引き出しでございます。残高の証明書はこのプレートにございますので前回のプレートと交換でございます。」


4人が自分のプレートを支配人に渡した。そして支店長から新しいプレートを受け取る。


そして支店長は金塊と金板をテーブルの中央にズイと押し出した。

「お受け取り下さい。」


グラが口を開く。

「キル君、これを受け取ってくれ。払いはこれで間違いないだろう。」


キルが金塊に手を伸ばしたその時支店長が声をかけた。

「ちょっとお待ちください。このかたから買い物をされたのですか?」


キルは手を止め、グラが頷く。


「もしよろしければ預金していただけないでしょうか?」

支配人がキルを懇願する様に見つめる。

キルにすればそんなに見つめられてもキモイだけで有る。


キルはよーく考えて特に預ける必要性を感じなかった。

ストレージにいれておけば重いということも盗まれる心配もない。

おろしに来なくてもその場でストレージから出せた方が利便性もある。


「すみませんが、持ち帰ります。」キルはそういうとストレージに金塊を収納する。


その行為を見て支配人が驚いた。「ストレージ持ちとは!」


「ストレージに入れておけば盗まれないし、その場で出し入れできますし、重くないので預けておく必要が無いのです。もうしわけない。」


キルは預けない訳を説明した。


支配人は仕方がないと納得したが、残念そうにしていた。

ハッキリ言って涙目である。


キルは逃げる様に席を立ち部屋を出ようとした。

「それではこれで失礼します。」


グラも席を立つ。他のメンバーも次々と席を立ち部屋を後にする。

銀行を出た8人は二手に分かれてそれぞれの方向に進み出していった。

「それではお元気で、またスクロールが欲しくなったらホームを訪ねてください。」


「それじゃあな!ワイバーン狩り、気をつけてたくさん狩ってきてくれ。」


そんな別れの言葉をかわしグラ達はリヨンに戻る方向に、キル達は空へと飛び立っていった。

キル達はワイバーンが住むドルケン山方向に飛行した。ドルケン山までは通常飛行で2時間程かかる。昼前頃には到着するだろう。


「戦闘前にチョット腹ごしらえしておくか?」

キルが皆んなに問いただす。


「まだそれほどお腹が空いてないんすけどね。」

とケーナが答えた。

クリスもユミカも頷いた。


「ワイバーンの群れ近くで飯を食うのも落ち着かないんじゃないか?」


「そうですね。」

「そうであるな。」

「少しだけ食べておくっすか?」


「その方がいいと思うぜ。」

キルが意見をまとめた。


ドルケン山の麓で戦闘前に軽く食事を取ることにした。

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