86 ダンジョンアタック1

とうとうダンジョンアタック当日、ケイトさんから聞き出した情報によるとダンジョンにも現れる魔物の強さによってそのダンジョンのランクがついているという。


第1層のフロアボスの強さによりA、B、Cの3種類に分かれているという。当然ながら初めのフロアボスが強いということは初めから強い魔物が徘徊しているということでも有る。そしてそのランクがそのまま危険度を表している。


普通であれば簡単なレベルのダンジョンからアタックを開始して、ドンドン難易度を上げて行くのがセオリーと思われる。


しかし強い魔物の魔石がたくさん欲しいのだから第1層あるいは第2層の通常に出現する魔物の魔石狙いという考え方もできる。初めからフロアボスを倒すことを考えないで次の層に行くことを目指すいうことだ。


そもそもフロアボスは通常の魔物より極端に強いから多くの冒険者の命を奪うのはフロアボスかまたは多数の魔物に襲われた時で有る。


パリスの近くのダンジョンは駅馬車で1日以内のところに2つ有りAランクのフクラダンジョンとCランクのゴブタダンジョンで有る。フクラダンジョンは第一層でミノタロスが徘徊していて、ゴブタダンジョンはゴブリンが徘徊している。


普通はゴブタダンジョンに入ることから始めるのが当たり前と思われるが、よく考えるとゴブリンの魔石ではたいしたスクロールは作れないしフロアボス狙いでは取れる魔石の数が少ない。フロアボスは1日に4回6時間おきにしか復活しないとされているのだ。


ゴブタダンジョン第一層のフロアボスはゴブリンジェネラルで、フクラダンジョンの第一層のフロアボスはグレートミノタロスだ。そして第2層の通常魔物はレッドオーガなのだ。


だからフクラダンジョンの第2層をメインターゲットに置くことがキルとしては目的に合致するということで有る。


この場合の問題点はフロアボスのグレートミノタロスを倒せるかという事になる。


グレートミノタロスはAランク魔物なので上級職以上の冒険者数人のパーティーで挑むことがセオリーとされる強さの魔物だ。レッドオーガはBランク魔物で中級職以上の冒険者数人のパーティーで挑むレベル。つまりAランクのダンジョンはAランクパーティー。BランクダンジョンはBランクパーティーでないと第2層には行きずらいという事だ。


ただフロアボスを倒さずに次の階層に行く方法もある。他のパーティーがフロアボスを倒しその後の6時間はフロアボスが居ない状態なので次の階層に行けるのだ。


ただし、次の階層に行ったは良いが帰りに強いパーティーがフロアボスを倒してくれるまで自力でそこを通れなくなるため、閉じ込められて餓死してしまうことになりかねない。


上級職の全体に占める割合が1割というし、特級職冒険者は街に数えるくらいしかいないのでAランクパーティーとうまく居合わせることは少ないと言えた。


(緑の草原)は構成メンバー的にはBランクパーティーと言っても良いが(実際はまだ)駆け出しBランクパーティーという所だし、Aランクパーティーには程遠い。


実際、暫くは第一層でミノタロスを相手にレベルを上げる必要が有るだろう。


つまりは特級職スクロール職人のキルがグレートミノタロスに勝てれば問題解決なのだ。


Aランク冒険者は特級に相当している。勿論Aランクの魔物もそれと同等の強さだ。


いくつものジョブを持っているキルはステータス的には特級魔術師のそれをうわまわっているはず。ただ魔法の種類はというと中級魔法までしかレパートリーは無い。


グレートミノタロスとの戦いは回避力は高いキルだから魔法を当て続ければ最後は勝てるだろうと思うができれば戦わずに済ませたいところでは有る。


Aランクのフクラダンジョンに行くか、Cランクのゴブタダンジョンに行くか、どうするか考えた末にフクラダンジョンの第2層を目標に第一層でレベル上げをする事にした。


4人は駅馬車に乗りダンジョンに向かう。


「キル先輩、いきなりフクラダンジョンに行くって厳しく無いんすか?」


「私もそう思います。」「うん。うん。」


「でもゴブリン倒しててもたいした稼ぎも魔石も手に入らないし、奥まで潜るには時間がかかるから何泊もしないといけないしなあ。その点フクラダンジョンなら最悪ダンジョン内に泊まらなくても良いじゃないか。泊まりに慣れてないからまずはフクラで感じを掴もうかな、、、て思ったんだ。」


「そうっすか。ミノタロス相手で自分ら大丈夫ですかね?」


「ミノタロスまでなら心配ないんじゃ無いかな?みんな中級冒険者なんだしな。」


「そうっすか。ならいいんすけどね。」


少し不安を抱える3人だがキルは大丈夫だと思っていた。

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