84 強盗

工房に戻って来たキル。流石に金板が重すぎる。それに何か生産者ギルドからついて来ている影を感じて索敵でチェックしていると何やら見張られているように思われた。


危険を感じる状況なので外出は控えることにしようと思うキル、大金を手にしたことを見られて尾行されたかもしれない。ゼペックさんを1人にするのは不安を感じる。


そこで今日は昼間からスクロール作りをすることにした。特に⭐︎3のジョブスクロールにチャレンジしたい。


今までの経験上討伐経験値の桁が変わると上のランクが解放されると想像できた。つまり今ならキルは剣士と盾使いは上級に進化して、槍使いと魔術師はまだ進化しないと予想できた。


紋様は剣士だけ特上までわかっていた。盾使い、槍使い、魔術師は上級まで、その他は中級までので紋様を目にしたことがある。


今日は上級のわかっている4つの上級ジョブスクロールを作ってみたい。魔石は50万カーネルしたグリフォンの魔石を使ってみる。


上級の紋様を思い浮かべたスクロールを刻む。強い光が当たりを包みスクロールに吸収されていく。そして剣士⭐︎3ジョブスクロールが出来上がった。


早速自分で使って試す。キルの体が強化されて力が溢れ出すようだ。これは成功だと身体でわかった。


続いて盾使い。同じように作って自分に試す。今度は身体が強化された感覚が無い。


もしかしたら討伐経験値の桁数が変わっていなかったのかもしれない。自分を鑑定すると盾使いは中級のままだが⭐︎3にはなっていた。スクロールはちゃんとできていたようだ。


続いて槍使い、魔術師も作って自分で試す。⭐︎3には慣れていたのでこれらも成功だ。


もう一つずつ4つの⭐︎3ジョブスクロールを作ってまだ魔力は余っているが周りの様子が索敵で5人に見張られている様な感じ。


なので魔力を使い切らないほうが良いのでは無いかと思いまさかと思いながら強盗に備えた。


ゼペック爺さんはその気配には全然気付かず呑気でいつも通りにボケっとしている。


「キルさんは今度は⭐︎3ジョブスクロールをつくれたのかえ?もうわしは足元にも及ばんのう。さすがは⭐︎7のギフトをもらっているだけのことはあるのう」ほっこりニコニコしているゼペック爺さん。


キルは危険が迫っているかもしれないと思うと気が気では無い。


「金板もこんなに有ると何かの材料のようじゃのう。有り難みがないわい」

そう言いながらホッペですりすりし始めるゼペック爺さんだった。


その時外の怪しい気配は5人から10人に増えていた。そして工房を目指して進んできたのだ。キルは強盗がやって来たと悟った。


「ゼペックさん、強盗がきます。安全なところに隠れて下さい!俺が戦います」


あっけに取られるゼペック爺さんを安全な場所に押しやるキル。


間髪を入れず盗賊達が押し入って来た。


キルは強化のアーツを全種類使う。臨戦体制は整っている。


盗賊がキルを見るなり子供と思って舐めてかかった。


「へへへへ、、、カワイイボウズよ。痛い思いをしたくなかったら金出しな。お前、大金を持って来たそうじゃないか?」


「そうです。兄貴、こいつが金板をどっさり受け取るのをみやしたぜ!」


「さっさとぶ殺して家探ししやしょうぜ!兄貴」


ゾロゾロと中には行ってくる強盗達。

どうやら強盗殺人の常習グループの様だ。キルは中級魔法の重力追加を強盗達にかけた。10人の強盗達が重力の重さに耐えかねて床に押し付けられた。


「うわあ! なんだこりゃあ」

「う、動けね!」

「テメエ!何かしやがったな!」

「こいつ、魔術師か?」


強盗達が口々に叫んだ。


キルは盗賊達を殴って気絶させロープで縛って拘束した。


身につけていた武器は取りあげる。


「キルさんや、コイツらは………強盗達は全部縛り上げたのかえ?」


「はい。俺が見はってますのでゼペックさんは役人を呼んできてもらえませんか?」


「わかったぞい。今呼んでくる」そういうと、ゼペックは飛び出して行った。


暫くして目を覚ました強盗が騒ぐたびに殴って気絶させる。そんなことをしているうちにゼペック爺さんが武装した役人達を連れて来た。


「コイツらが、強盗団か?ア、コイツは指名手配中の強盗団じゃないか。よくやってくれた。コイツらには賞金かかけられていてな………うん……うん……全部で5万カーネルだな。後で取りに来い」そういうと役人は強盗団をしょっぴいて行った。


「後でゼペックさんが賞金を貰って下さい。迷惑料です。俺がギルドからつけられてこんなことになって御免なさい」とキル。


「わかったぞい。でも気にすることはない。ああいう奴は金の匂いに敏感じゃから最近金回りが良くなったので目を付けとったんじゃろう。いずれは襲われとったに違いない。しかし、キルさんは強いんじゃのう。伊達に冒険者をやっとらんなあ」


「それほどでもないですよ」照れるキルであった。

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