56 ゴブリン騒動4
ギルドは今日もワサワサとしている。キングゴブリンの噂話が拡散しているのだ。
20人の冒険者が向かったが帰れたのは半分だったらしい。10人が死んだと言うことか。
キングゴブリンの出る森は狩りを禁止されている。
その森の警戒任務が掲示板に貼られているが逃げ足に自信のあるものというのが条件だ。キルが思うにこの前の変異種のような奴に追いかけられたら逃げ切ることは不可能では無いだろうか。この任務はうけないほうがいい。
ここのところライガーをたくさん狩ってきたのでライガーが減りすぎてしまうのも良くないかもしれない。
いつもの草原でライガー以外で見る魔物は、牛型の魔物ヌーヌー、狼型のリカオウ、鹿型のレイヨンなどが簡単に見つかり数も多いのだがどれも大きな群れで行動している。
狼型のリカオウは普通は20〜25匹の群れで行動していて、数の暴力でライガーの取った獲物を横取りしたりしている。その時ライガーはスゴスゴと引き下がる。つまり単体ではライガー、群れではリカオウの方が強いということだ。
ヌーヌー、レイヨンは100を超える群れを作って行動している。ただ狩が始まれば逃げ出してしまうので1匹狩っては次の獲物までかなりの移動を要求される事になる。つまりは狩りに時間がかかることになる。
さてどれを獲物に選ぶべきか?やはりライガーが1番やり易い。荷馬車に乗りながら考え込むキル。悩んだ結果、索敵の具合によって臨機応変に狩りをすることにする。
まずはライガーを探すことで良いだろう。大変そうなら別の魔物を狩れば良い。
草原に着くとまずライガーを狩る。5匹の群れ楽に狩り、次はどうするかだ。近くにヌーヌーの群れがあるので近づいて一斉攻撃。ケーナ1クリス1キル2(両手)の攻撃で4頭のヌーヌーを倒した。近くのヌーヌーとレイヨンの群れが遠ざかる。
残されたのはリカオウの群れ21匹。倒したヌーヌーを餌にしようと寄ってきた。
3人で寄ってきたリカオウに遠距離攻撃を始める。近づく前にたくさん倒しておかないと不利になる。
ケーナもクリスもアーツのおかげで連続して攻撃する間隔は早くなっている。
キルも昨日身につけた詠唱省略を試しに使いファイヤーボムを連続で打ち始めた。
ファイヤーボムの爆発でリカオウが怖気付いて逃げ腰になってくれればありがたい。
ケーナが3、クリスとキルが4匹倒したところで、ケーナの側までリカオウが近づいてきている。やはり爆発の心理的効果なのかケーナの方にリカオウが集中しているようだ。
キルはヘイトテイカーを発動してケーナに向かったリカオウを自分の方に向かわせた。
ケーナは下がってリカオウとの距離を取ろうとする。
乱戦にはケーナとクリスは巻き込ませない。
キルが剣を抜き10匹のリカオウを相手にする。鎌鼬を放ちながら間合いに入る前に3匹を倒し、リカオウの攻撃を躱しながらカウンターで斬り殺す。
器用さの数値がべらぼうに高いキルに攻撃を当てることは、リカオウには難しいようだ。器用さは攻撃の当たり外れに大きく関わるステータスである。
身軽にリカオウの攻撃を一寸の見切りでかわしていく。そして攻撃を加える。
リカオウは徐々に数を減らし、最後は鎌鼬で斬り殺された。
荷馬車にライガー5、ヌーヌー4、リカオウ21を積もうとする。リカオウは狼型でライガーやヌーヌーと比べれば小さくたくさん積むことができる。なんとか全部積み終わりギルドに運ぶことができた。
だいたいライガーが4万、ヌーヌーが3万、リカオウが2万で買い取ってもらえたので76万カーネルの値がついた。ライガーの魔石5は別でである。
取って返す荷馬車の中でケーナがキルに聞く。
「キル先輩、ファイヤーボムも覚えてたっすね。」
「ああ、作ったスクロールを試す時に覚えるからな。」キルが答える。
「詠唱省略もできますのね。」
「まあなあ。」
「スクロール職人って何気にすごいっすね。」
「そうでもないさ。HPとか伸び悪いしな。」
「それは魔法職系も一緒ですわ。」
「まあそうだな。魔術師とは通じる所があるかもな。ただスクロールを作るために魔力を使うから戦闘では使いたくないのが難なんだけどな。いざとなったら魔法も使うってとこかな。」
「それで、剣で狩りをしてるんすね。」
「まあなあ。そう言うことさ。」
「ところで自分に向かってきたリカオウが急にキル先輩の方に行ったのは何かしたんすか?」
「ああ、あれか。あれはヘイトテイカーというスキルを使ったんだ。敵の攻撃を俺に集める盾職のアーツだな。」
「そんな事もできるんすか!て事はそういうスクロールが作れる……てこと…………」
「作れるぞ。売れないがな。」キルは苦笑いをする。実際スクロールは在庫の山なのだ。
そうこうするうちに狩場に到着。ライガーを探す。また同じ事の繰り返しだ。
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