38 盗賊討伐任務 2
翌朝ギルドを訪れると討伐隊出発は10時という事になったらしい。人数がまだ集まっていないのだとか。
それまでの間にスクロールの材料を買って工房に置いてくることが可能な時間的余裕がある。キルは蝋皮紙とライガーの魔石を買って工房に置いてくる。
蝋皮紙300枚で15000カーネル、ライガーの魔石6個で60000カーネルだ。
ギルドに戻ると討伐隊が相当数集まっている様だ。Cランク10名、Dランク19名、Eランク2名だ。Eランク2名はケーナとクリスだ。つまり募集はCランクとDランクにかけられたと言う事らしい。
盗賊は18名のはずだから31人で戦えば被害も少ないだろう。1人頭1万カーネルで31万カーネルを討伐任務にポンと出せるとはギルドも太っ腹だ。後で聞いたのだがこういう時はギルドには1人当たり15000カーネルの報奨金が領主から出されるそうだ。
軍を動かしたり常備兵を雇うより安上がりなのかもしれない。常備軍の人数は数十名と少ないそうで、事あるごとに傭兵としてこの様に雇うらしい。
冒険者ギルドの長は領主に雇われていて、冒険者ギルドは領主のものの様なものだ。商業ギルドと生産者ギルドの長も領主が任命している。権力のピラミッドがきちんとできているという事なのだろう。
新たに25人の冒険者が集まった訳だがAやBランクといった強いとされる冒険者はいない。CランクDランクは普通の強さでEやFらは駆け出しや弱いとされる冒険者にあたる。
銀の翼はCランクの中でもBランクに近いCランクなのかギルドの仕事によく駆り出されている。今回討伐の指揮を任されているのも銀の翼だ。
「盗賊討伐に参加するものは南門の前に移動してくれ。」コーナーが大声で指示を出した。
南門で幌馬車3台に分乗して現地に向かうという話だ。
討伐隊のメンバーには同士討ちを避けるために鮮やかな赤いスカーフが渡された。
目立つ様に身につけて仲間である事を知らせるのだ。
キル達もよく見える様に赤いスカーフを首に巻いた。背中からも大きく赤く目立っている。
コーナーはキルに近寄ると小声で声をかける。
「索敵で相手の情報を僕に教えて欲しいから、僕の側にいて欲しいんだが良いかな。」
「はい。大丈夫ですよ。」
コーナーは討伐隊全員にザックリとした作戦を伝えるために壇上に立って話を始めた。
「みんな聞いてくれて。第一の作戦は盗賊が襲って来た時のことだが、おそらく相手は幌馬車の中には荷があってこれ程の数の護衛がいるとは思っていない。せいぜい護衛は10人くらいを想定して押し寄せるだろう。その時は近づけてからいっきに打って出て敵を全滅させるぞ!」
「おーーー!」歓声が上がる。
「次!もし盗賊が襲って来なかったら、奴らのアジトを探してそこを襲う。その時はその都度作戦を立てるからよろしくな。」
「おーーー!」
みんなやる気充分の様だ。
「それでは、馬車に乗ったら出発だ!」
コーナーの声に従いみんなが馬車に乗りはじめた。
荷馬車隊は出発して魔物のゾーンを抜け盗賊の林に近づく、キルは索敵で盗賊の様子を確かめた。今日も林に潜んで荷馬車を襲うつもりらしい。
「昨日と同じで、18人盗賊が隠れていますね。」キルがコーナーに伝えるとコーナーはわかったと頷き戦闘に都合が良さそうなポジションで荷馬車隊を止め、Uターンするフリをはじめた。
馬車を林の手前でUターン、C字の様な形になり引き返すかの様に見せた。
荷馬車が止まるのを見た盗賊達は、林からすでに飛び出して来ている。
18人の盗賊が近づくのを待ち構えて幌から冒険者達が順次飛び出してくる。御者台には遠距離攻撃ができる弓使いや魔術師が陣取り攻撃を始めた。
ケーナの弓が盗賊を貫いて即死させた、強射の威力はただの矢とは比べ物にならない。
矢を潜り押し寄せようとする盗賊達、矢を受けてもなお突き進んでくるものもいる。
クリスのファイヤーボムが炸裂しまた盗賊が吹っ飛ばされて死亡した。ファイヤーボムの威力もこの中では最大火力の様だ。ファイヤーボール程度の魔法は見かけるがボムの威力に比べればただの火遊びにしか見えない。
盗賊達もビックリして足が止まる。
キルのストーンショットも一撃で命を奪える威力を持つ。いつもの様に2発同時に放たれ2人の盗賊が命を落とした。
もう冒険者の先頭が盗賊に接触し剣を振り下ろし槍を突き出している。
馬車から降りてくる冒険者が少ないうちは盗賊達は逃げることを考えもせずに押し寄せて来ていた。
だが次々と馬車から護衛達が出てくるのを見ておかしいと思い始める盗賊が出だした頃、彼らはもう剣を交えている為に背を向けて逃げるのは難しい状態になっていた。
どんどんと馬車から降りてくる冒険者、状況はどんどんと盗賊達に不利になって行く。
逃げ出した盗賊の背中からケーナの強射が突き抜ける。
混戦の中どんどん討たれていく盗賊達。ついに18人の盗賊は掃討された。
「作戦は大成功だったな!」コーナーが歓喜の声を上げた。
「おーーー!」冒険者達は意気高らかに帰還の途につくのだった。
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