36 護衛任務  4

「やったっすね!」ケーナが喜びながらキルに駆け寄った。


クリスはゆっくりと歩み寄る。


「凄いね君達!メスのライガーをあんなに易々と倒すとは。」コーナーが驚きながら褒め称えた。


「これ見てみろ。立ち往生してるぜ。矢がこんなにも深々と脳味噌まで届いてるな!これは。」ブランがケーナの矢を見ながら解説する。


「こっちも魔法1発で頭の半分が吹っ飛んでるよ。ライガーの頭を吹っ飛ばすとは恐れ入るね。」コーナーがクリスの魔法を絶賛する。


「ライガーはかなり高く買い取ってもらえると思うよ。荷馬車に積み込もう。」男たちがライガーを荷馬車に積み込んでリオンのギルドで買い取ってもらう事にした。


再び荷馬車に乗り込んでリオンを目指す。


「キル君のあれはスクロールかい?ライガーを2発で倒せるとはかなり強力だね。高いんだろう?あのスクロール。」コーナーが聞く。


「普通の値段は多分1つ3000カーネルくらいだと思います。でも僕は自分で作ってるのでそんなにはかかりませんよ。」コーナーの質問にしっかり答えるキルである。


「3000カーネルかあ、、、安くは無いよなあ。当たれば良いが外す時だってあるだろうし、あまり高いと勿体無くて使わなくなりそうだしな。うーーん。」唸るコーナー。


「そう言えば闘いを始める前に何かスキルを使ってたみたいですが、あれは何ですか?」キルが尋ねる。


「あれかい、 あれは攻撃力強化と、防御力強化のアーツだよ。剣士やその他多くの近接戦闘のジョブ持ちは経験と共に覚えることの多いアーツだね。僕たちはCランクでそれなりにアーツも覚えているわけさ。」コーナーが答える。


「他にも何かスキルやアーツを使えるんですか?」


「まあ他にも無いことはないけれどもね。」


「ケーナ君のアレもただ矢をいただけじゃあ無いんだろう?」コーナーが突っ込んだ事を聞く。


「あれは、強射 と言うアーツですね。矢の威力が強くなるんです。凄い威力でしょう。」キルが答える。


頷くコーナーとブラン。




ライガーの群れを倒したキル達の荷馬車はさらに先に進んだ。


「そろそろ盗賊の出易い場所が近づいて来るな。」コーナーが前方の景色を見て言った。


「あの森の中に20位の人が隠れていますね。」キルが索敵を使ってわかった事を伝えた。


「盗賊が待ち伏せをしているのか? 今日は大当たりの日だね。」コーナーが言う。


「索敵って、スゲ〜役に立つなあ。80000カーネルでできる様になるのか。高いけれど確かに高いだけの価値はあるかも知れね〜。」ブランが良いことを言う。買いに来てくれると有り難い。


「どうする?引き返すか?、、、20対6じゃあ勝ち目は無いよ。」コーナーが言った。


「そうだな、相手の強さもわからんのだからなあ。数だけで判断するならここは引き返すべきだろうなあ。」ブランがコーナーの意見に賛成する。


「そうですね。俺たちも対人戦の経験は有りませんし、ここは逃げるが勝ちですね。


命は大切にしましょう。」キルも賛成する。


「馬車を止めて、パリスに引き返すぞ。」コーナーが御者に命令を伝える。


先頭の荷馬車は急いで止まった。続いて後続の荷馬車も止まる。


「盗賊が待ち伏せをしている。パリスに引き返すよ。」コーナーが2台目の荷馬車の御者に伝えた。


森まではまだそこそこ距離が有る。Uターンしてパリスに戻る為2台目の荷馬車を前にして引き返し始めると森から盗賊達が現れてこちらに近づいて来た。ヤル気らしい。


キル達は急いで引き返す。追いつかれたら大変だ。幸い盗賊達に馬に乗っているものはせいぜい5人だ。追って来ても荷馬車さえ壊されなければ20人全員を相手にしなくても大丈夫ということ。


荷馬車は逃げるが馬に乗った盗賊が5人追いかけて来る。


盗賊は荷馬車の車輪を壊して荷馬車を止めようとするはずだ。十分に引き付けて矢で射殺すのが良いだろう。


「ケーナ、盗賊を射殺してくれ。クリスも魔法の準備。」キルが指示をする。

そしてキルもスクロールを両手に構えた。


射程の範囲はケーナの矢が1番長いので、ここはケーナの独壇場になった。


強射で射かければ盗賊の矢が届かない所から一方的に攻撃できるのだ。


1人、2人と射殺したところで盗賊は追いかけて来るのを諦めた。


キル達は盗賊から逃げおおせてパリスに引き返すのだった。


魔物の出現ゾーンでは今度は襲われることも無く通り抜けることができて、無事にパリスに帰り着く。今回は護衛任務は成功という事になるが荷を届ける事には失敗した。


先に盗賊の討伐を行ってから荷を送る事になりそうだ。


ちなみにライガーはギルドで買い取ってもらった。大小有るので6匹で24万カーネルになった。護衛任務の報酬と併せて1人70000カーネルずつに分ける事にした。


「ありがとうございました。」キルは銀の翼に挨拶をして別れるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る