21 薬草摘み
森に薬草摘みに来ている3人。一口に薬草と言っても色々ある。
魔力精神力回復薬、解毒薬、体力回復薬、傷回復薬(傷薬)、マヒ薬、物理耐性強化薬、毒薬、などなどを作るために使われる草を総称して薬草というが、毒薬の材料になる草だけでも何種類もあるのだ。
また草とは限らずキノコや木の実や根、果ては動物の臓器、昆虫まで薬の材料になるものは様々でそれらは全て買取の対象になる。薬草摘みと言ってもそれらの物全てが採集の対象と言えるのだ。当然レア度によって買取価格も様々だ。
採集技術はその知識の量に影響される。目にしているものが買取素材だと知らなければ目の前にあっても採集しないからだ。また買取素材だと思って取っていったものが間違いということもよくある話である。
生活魔法の鑑別は採集の時に役立つ魔法で初級から上級まで知られているがその階級が上なほど鑑別できる物の種類が多い。これを持っていると間違わずに採集できるのだが無くても覚えれば問題なく薬草摘みはできるのだ。鑑別を覚えるスキルスクロールもあるが高い金を払ってまで買う者はいないのはそういうことだ。
キルは1年経験を積んでいるので初級レベルの鑑別能力は有ると思われる。森での採集作業のノウハウをケーナとクリスに教えながら森の中をうろつく。勿論魔獣が居れば狩るわけだが気にしているポイントが違うので先に魔物に逃げられる率が高くなる。それでも昼飯用のコッコキー2羽は確保した。
「この草が回復草だ。これがあったら根ごとつんどいてくれ。」
「これっすか先輩。」
「そうそれそれ。」
「これが魔力草だぞ。覚えてくれ。」
「はーーーい。」
「これがトリカブラ、毒薬の素だ。」
「これがハンミュラという虫で毒薬の素になる。」
「このキノコが痺れ茸。見つけたら取っといてくれ。食うなよ。」
「はーーーい。」
今日は2人にレクチャーをしながらの採集作業になった。春はまだ木に実がなっていないので木の実は摘めない。
森にも魔物はいるので遭遇すれば戦いになる。ゴブリンとかとは会いたくないと思っているとあってしまう物で有る。ゴブリンは魔石以外役に立つところがなく500カーネルにしかならない安い獲物だ。どうせ狩るなら金になる魔物を借りたい物で有る。
ゴブリンの奴、気が付かなければ良いものをこちらに気が付きしかも女性冒険者だとわかるとわしゃわしゃと集まって来た。その数15匹、1匹1匹は弱いがこう数が多いと脅威というものだ。接触する前に遠距離攻撃で極力数を減らす。ケーナは弓、クリスは魔法、キルはスクロールで近づく前に殺してゆく。接触する前にケーナが3、クリスが2、キルが6匹のゴブリンを殺したが、間に合わずに接敵した4匹のゴブリンはキルが両手剣を振り回して薙ぎ倒してゆく。なんとかなったから良かったが数がもっと多かったらやばかった。ゴブリンの魔石を15個手に入れたが売値は買値の半分なのでキルが買い取らせてもらった。
「倒した分だけで良いすよ。3匹分1500カーネルっす。」
「私は2匹分の1000カーネルで良いわ。」
「悪いな.お言葉に甘えてそうさせてもらうよ。スクロールの材料に使えるんでな。」
「キル先輩、スクロール使いまくりっすよね。大損じゃないっすか?」
「イヤ、俺は自作のスクロールを使ってるからそれほどでもないよ。」
「ストーンショットのスクロールって買ったら3000カーネルくらいするっすよ。」
「あらやだ、売った方が儲かってるんじゃないの」
「有っても売れないから使った方が有効利用というものさ。」恥ずかしそうにキルは言う。
「そうなんすかね。」不審そうにケーナが言った。
「薬草摘みを再開しましょうか?」とクリスが話題を変える。
それから夕方まで薬草摘みを行なってギルドに戻った。薬草をたくさん積んだつもりだったが大した額にはならなかった。1人あたり4000カーネル。清掃の方がよほど稼ぎが良いと言うものだ。
「今日はキルさんにたくさん教えていただいて感謝しますわ。」クリスの言葉遣いは庶民にしては上品だとキルは思う。
「そうっすね。授業料を払わなくっちゃいけないっすよ。キル先輩に。」
「イヤイヤ、先輩冒険者としては当たり前のことだし、君たちが働ける様になってくれないと分前が減るからなぁ。自分のためでも有るってことさ。」
「いつも面倒を見てもらって感謝の気持ちに今度ご飯を奢らせて下さいませんか?」
「そうっすね。奢らせて下さいっす、一緒に晩御飯を食べたいっす。」
「すまんが爺さんと一緒に晩飯は食ってるんでね。誘ってくれてありがとう。」
「そうっすか?だったら爺さんも一緒にどうっすか?」
「爺さんが驚くよ。」困った顔のキル。
「大丈夫ですよ。それでは晩御飯を買って行きましょう。」クリスに押し切られるキルであった。
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