彼女の笑顔。

 翌日。

 俺は今日も彼女のもとに来ていた。

 学校は春休み中なので、しばらくは毎日病院に通うことになるだろう。


「さてと、じゃあ行きますか」


 俺が病室に入ったとたんに彼女が立ち上がる。


「行くって、どこに?」


 そういうと彼女はにんまりとした笑顔でこう言う。


「――遊びに」


 結論から言うと、彼女は病院にお願いして本当に許可を貰ってきてしまったようだ。

 どうしてそうなったのかは知らないが、彼女はすごく上機嫌なご様子。


「いいか、ちょっとでも辛くなったら言えよ。無理はするなよ」


「もう、わかってるってば。そんなに何回も言われなくても大丈夫だから」


 そう言って口先をとがらせて拗ねる彼女。


「それに言ったでしょ。桜にお願いしたら治ったって。まだしばらくは平気よ」


「そんなおとぎ話みたいなこと言われても信じられるかって」


 それに、もしそれが事実なら、桜が枯れたら彼女はどうなってしまうのだろう。

 そんなこと、考えたくもなかった。


「あのなぁ、これでも俺はお前のこと心配してるんだ。頼むからあんま無茶しないでくれよ」


「え……、ああ、うん。ごめん。でも、平気だから」


 不意に顔を背けて小声になる。


「ん、どうした?」 


「何でもない……。ほら、行こうっ」


「お、おう」 


 いつものように笑みを浮かべて手を差し出す彼女。

 俺は若干の気恥ずかしさを抱きながらその手をとった。


「あれ、照れてる?」


「……うるせ」


 そんな彼女の小悪魔じみた笑顔に、俺は今日も鼓動を高鳴らせていく。

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