桜の季節。
今年もこの季節がやって来た。
雪が溶け、草や花、木々たちが芽吹く。春、桜の季節だ。
そんな中、幼馴染の彼女に変化があった。
なぜか急に病気が治ったのだという。原因はわからない。
だが、そのんな疑問を抱いていたのも束の間だった。
すっかり元気になった彼女が、さらっとこう告げたのだ。
「なんかね、桜にお願いしたら、治っちゃったみたい」
何気ない笑顔で、そう言ったんだ――。
◆
徐々に桜が花を開き始める今日この頃。
突然元気になった彼女は、今までの時間を取り戻すかのような勢いではしゃいでいた。病室で。
「ねぇ、遊びに行きたい」
不意にそんなことを言い出した。
「……はい?」
言葉の意味は理解できるが、意図が全く分からない。
「だーかーらー、遊びに行きたいの。街に買い物に行ったり、遊園地に行ったりとか」
「いきなり何言ってんだよ」
そんなのは無理に決まっている。いくら病状が回復したからといっても、今のままでは外には連れ出せない。
「連れてって」
「いやいや、お前自分の今の状況わかってるのか。つい先週まで一人で歩くのだって辛かったくせに」
「そんなの今は関係ないでしょ。現にこうして何ともないんだし」
「そんなこと言われてもだな……」
実際、今は何ともないみたいだが、もし急に病状が悪化しても困る。
そんな状態で外に出せるわけがない。
「じゃあ、病院の先生にお願いして大丈夫だったら連れてってくれる?」
「え……、ああ、うん。まぁ、それなら」
さすがにそんな許可は下りるわけがない。ひとまずおとなしくしてもらおう。
「それじゃあ決まり。行きたいところは色々あるけど、あんたもどこに行くか少しは考えておいてよね」
期待に胸を躍らせる彼女を見てため息を一つ。
「もう行く気満々なのか……」
多少の不安を感じつつも、そんな彼女の様子に笑みをこぼさずにはいられなかった。
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