第2話隆のメディア論

隆は朝日、読売、毎日、産経、日経、スポーツ新聞と、できるだけ幅広いメディアに目を通す習慣を持っていた。

「最近は朝日もひどいけど、新聞記者の日本語が本当にひどい。文法、語法の間違いもさることながら、何を言いたいのか分からない文章が多い」

「主語や目的語がはっきりしない。そもそも何について書いてるのかすら分からない」

「これは、官僚答弁など。官僚が話をごまかしたいとき、わざと持ってまわった分かりにくい答弁をする。それをぶら下がり取材した新聞記者がそのまま書くから、こういうことになる」

「書いてるてめえ自身がてめえの文章を読んで意味が分かるのかという話だ。恐らく分かっていない。官僚の先生がこう言ったからそのまま書いたんです、と」


隆は大のメディア嫌いで、テレビには若い頃に一度、出演しただけだった。新聞社の取材にも滅多に応じず、新聞記者が訪ねてきてもたいてい追い返していた。奇人変人頑固者で知られるゆえんである。


ただ、隆の中では確固とした哲学があったようだ。嬉々としてメディアに露出し、くだらない金儲けや売名行為に精を出す学者や法曹を心底うれいていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る