第28話

どうして自分でそう感じたのかよくわからなかった。



だけど全身はまだ寒くて、この白いものを土から掘り出さなければならないと強く感じた。



「なにか見つけたのか?」



休憩を終えた慎也と明宏が近づいてくる。



「あぁ。見つけた。地蔵の頭部をな」



大輔は自分のものではないような声でそう言い、力強く土を掘り返したのだった。


☆☆☆


それから10分ほど男子3人で土を掘り起こし、出てきたのは確かに頭部だった。



しかしそれは地蔵の頭部ではない。



人間のガイコツだったのだ。



それがでてきた瞬間、明宏はその場にひっくり返ってしまった。



「地蔵の頭部って、まさか本物の人骨!?」



出てきたガイコツに佳奈が悲鳴のような声を上げる。



「夢の中の連中は首をバラバラに埋められてるってことかもな」



慎也は顔をしかめて呟いた。



なにそれ、どういうこと?



質問が喉の奥に張り付いて出てこない。



あの地蔵たちはもちろん生前は人間だった。



人間ならどこの部位だろうが同じ墓に入れられているのがたり前だ。



それが……頭部だけ別?



その異様さに佳奈の思考は真っ白になった。



自分たちは今まで地蔵の呪いに巻き込まれた被害者だと思っていた。



でも、それがヒックリ返る予感がする。



あの地蔵たちがどういう経緯で祀られることになったのか、少しも考えていなかった。



「やっぱり、あったな」



泥だらけになった大輔が満足そうに呟いたのだった。


☆☆☆


ガイコツをそのまま運ぶことはできないので、夜と同じように大輔の上着にくるんで地蔵まで運ぶことになった。



「本当に、警察に言わなくていいの?」



美樹が不安そうに聞く。



本来なら骨を見つけたら警察に届けるのが筋だ。



だけど自分たちはそうも言っていられない。



警察に行けば何時間も拘束されてしまうことになり、今日はもう頭部を探すことができなくなってしまうだろう。



それだけは避けたかった。



「ほら、持ってきたぞ」



地蔵に到着した大輔はくるんでいた上着を外して地蔵の前にガイコツを置いた。



それは転がることなく、地蔵の前にストンと腰を落ち着かせる。



まるでもともとここが自分の居場所だとでも言うようにしっくりきていることに6人は驚いた。



「きっと、これで正しいと思う」



地蔵とガイコツを交互に見て明宏が言う。



「よし! それなら後2つだな」



慎也が半袖を肩の上まで腕まくりをして気合を入れる。



明宏の頭部を見つけた場所と、佳奈の頭部を見つけた場所だ。



そこを探せばきっとガイコツが見つかる!



そしてそのガイコツを地蔵にかえすことができれば、きっとすべてが終わる!



期待に胸が膨らんで、6人の顔に自然と笑みが浮かんだ。



と、そのとき。



コツンッと佳奈の胸をノックする違和感があった。



それはとても小さな石ころで、気にしなければ気にならないものだった。



無視していればいい。



そう思うのに、小石はコツンッコツンッとなおも佳奈の胸をノックし続ける。




この違和感の正体をつかめないままにみんなに『なにか変だ』と伝えても良いんだろうか?



考えている間に慎也たちは動き出していた。



2つ目のガイコツを探す前に、スコップを用意するのだ。



「佳奈、行くぞ」



慎也に声をかけられて、佳奈は咄嗟に笑顔を浮かべた。



胸を刺激する違和感を押し込めて、みんなの元へと急ぐ。



まだなにもわからない、ただの違和感だ。



自分の勘違いかもしれないし、みんなを不安にさせるようなことは言わないでおこう。



佳奈はそう決めたのだった。

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