第19話

通行人や車に乗っている人たちが不思議そうな視線をこちらへ向けて、通り過ぎていく。



溝の中に手を突っ込んで調べ物をしていたら、偶然出てきた近所の人に声をかけられた。



「どうかしたんですか?」



50代前半と見られる白いエプロンをつけた女性は、右手に買い物バッグを下げている。



これから買い物へ出かけるところだったんだろう。



「いえ、ちょっと……」



佳奈は慌てて立ち上がって服の汚れを払った。



変なことをしていると思われただろうかと心配していると、慎也が近づいてきた。



「あの、ちょっと聞きたいことがあるんです」



いつもよりも丁寧な口調で女性に話しかける。



深夜の態度に好感を抱いたのか女性は笑顔で「なに?」と、聞き返した。



「あそこにある首無し地蔵のことです」



深夜は歩道の先に見えている地蔵を指差して言った。



「あの地蔵、どういうものなんですか? 管理がされていないみたいだし、気になるんです」



その言葉に女性の顔からサッと笑みが消えていった。



次第に顔色が悪くなり、6人を化け物でも見るかのようにマジマジと見つめる。



「し、知らないわ。なんのことを言っているの?」



「知らないわけないだろ? あそこの地蔵のことだよ」



大輔が一歩前に出て更に問いただす。



女性は後ずさりをして左右に首を振った。



さっきまで人好きそうな雰囲気がしていたのに、地蔵の話を出した途端に逃げ出しそうな雰囲気になっている。



なにかあるんだ。



直感的に沿う感じた。



しかし佳奈が女性に質問するより先に、女性は駆け出していたのだ。



「あ、ちょっと!」



慌てて後ろから呼び止めても女性は振り向かない。



加害者から必死に逃げる被害者のように、あっという間にその姿は見えなくなってしまったのだった。


☆☆☆


首無し地蔵へ行っても大した情報は得ることができなかった。



6人は再びファミレスに戻ってきていた。



「なんだろうな、あれ」



さっきから明宏は腕組みをして考え込んでいる。



女性の態度がずっと気にかかっているみたいだ。



それは他の5人からしてもそうだった。



途中までは普通に会話をしていたのに、突然逃げ出していったのだ。



自分たちが女性にとってタブーな話をしてしまったのには間違いがない。



「もう1度行って話を聞いてみるか」



慎也が言う。



だけどその意見には全員が反対だった。



あれだけ真っ青になって逃げ出したのだ。



今さら家に行っても教えてくれることはなにもないだろう。



下手をすれば警察に通報されてしまうかもしれない。



警察がすべてを信じてくれればいいけれど、そういうわけにはいかないことも、もうわかっていた。



あまり目立った行動を続けていると、本当に捕まってしまうかもしれない。



「あの地蔵について調べてみようか」



明宏が思いつたようにスマホを取り出した。



「ホラースポットや都市伝説になると、ネット上でも情報収取ができるはずだから」



そう言ってなれた様子で検索をかける。



するといくつかのサイトが出てきた。



慎也はスマホをテーブルの真ん中に置き、みんなが見えるようにした。



サイトの1つをタップすると、この街の名前とこの街にまつわる都市伝説のページが表示された。



「すごい。こんなに沢山あるんだ」



美樹が街の都市伝説の多さに目を丸くしている。



佳奈もこれには驚いていた。



ザッと見ただけでも3桁くらいは楽にありそうだ。



それほど大きくないこの街で、都市伝説はこんなにも存在しているのだ。



その中で地蔵に関するものをピックアップして調べていく。



・O中学校の敷地にある地蔵に手を合わせると、その晩幽霊につれていかれる。



・夜中の2時に柳通りに立つと、あるはずのない地蔵が見える。



その地蔵にお供え物をすると、夢に出てきて将来の結婚相手を教えてくれる。



・山の麓にある3体の地蔵の周りを時計回りに3回まわる。すると好きな人と両思いになれる。



それはどれもこれも子供だましの都市伝説ばかりだ。



それでも執念深く記事を読んでいると、あの首無し地蔵について書かれいるのを見つけた。



全員の目がスマホに釘付けになる。



・5体の首無し地蔵がある。



ホラースポットになっているが、その場に行く人によっては『地蔵がなかった』『地蔵はあった』と意見が別れる不思議な場所になっている。



「地蔵がないってどういうことだろう?」



佳奈はネットの記事に首をかしげた。



地蔵は確かにあそこにあった。



佳奈たち6人はもう2度もそれを確認している。



「『見える人と見えない人にはなにか違いがあるが、普通は見えないらしい』か……」

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