第4話 レイモンド・チャンドラー『さよなら、愛しい人』
☆ 前おき
恐らく、チャンドラー作品の中で2番目に世間的に評価の高い作品である。
『ムース・マロイ』(旧訳では「へら鹿マロイ」)は、
チャンドラー作品の中でも、ひょっとすると最も印象的なキャラクターかもしれない。
しかし、8年間、ヴェルマという元カノを想い続けながら最後にはそのヴェルマに殺されてしまうマロイの姿以外、何一つ筋を思い出せない。
そんな作品でもある(チャンドラー作品はそんなのばっかだが)
今回、再読したがここでメモを取っておかないと、確実に2年後には同じ感想しか浮かんでこないだろう。
最初と最後は印象的で、後はスカスカ。
それは事実(だと思う)なのだが、それで済ませて中身を忘れてしまうのもなんなので、備忘録として今回もあらすじを載せておくことにする。
ただし、今回まとめてみると割合とスッキリしている。
一つひとつのシーンが長い事もあるが、「大いなる眠り」のような無駄なエピソードはあまりないし、「リトルシスター」ほど複雑でもない。
ただ、こちら(DOI)はマロイとヴェルマの話が読みたいのに、二人が全く出てこず、関係のないマリオットの話を延々読まされるのがダルいだけである。
☆ オープニング(起)
ある日、マーロウは『ムース・マロイ』と呼ばれる大男と出会った。
マロイは8年間刑務所に入っていて、やっと出所したばかりだったが、街の様子は8年前とはすっかり変わっていた。
マロイの婚約者、ヴェルマが歌っていたバーは、今では黒人専用のバーになってしまっていて、ヴェルマは当然どこにもいなかった。
マロイは『白人お断り』と言われているにも拘らず、暴れて用心棒を投げ飛ばして殺し、強引にマーロウと一杯やることになる(なぜww)。
マーロウは、片思いのマロイを不憫に思い、ヴェルマの捜索にとりかかった。
バーの婆さん(ミセス・フロリアン)は、「ヴェルマは死んだ」と言うが、どうにも信じられない。
警察からは、マーロウの直後に、マロイがバーの婆さんのところに行ったと聞かされた。
☆ あらすじ(承)
マーロウの元に、マリオットという男から電話がかかってきた。
マリオットの商談の護衛として、マーロウに一緒についてきてほしいというのだ。
快諾したマーロウはマリオットに同行するが、車を降りるやいなや、いきなり殴られる。
(ここで、マロイの話はどうしたんだよ……と思ってしまうのは僕だけではあるまい。
マリオットとかマジでどうでもいいし、おまけに長い)
目覚めた時にはマリオットは死に、謎の女性アン・リオーダンがマーロウを介抱してくれた。
車の後部から殴られた事を考えると、マリオットがマーロウを殴り、その後、殺されたようだ。
状況を考えると、アン・リオーダンにマリオットが殺されたようにしか思えない。
(偶然、アンが真夜中に人気のないところを立ち寄るとも思えないからだ。が、どうも本当に偶然だったようだww)
(先に真相を明かしておくと、これはヴェルマが、マリオットを騙して殺すために仕組んだ罠。
マーロウを殺すため、とマリオットを騙してマーロウを同行させ、マーロウを殺すと見せかけてマリオットを殺した)
マリオットのポケットには麻薬のシガレットケースが入っていた。
そしてそのシガレットケースと一緒に、心霊相談アムサーの名刺が入っていた。
(??? これはマジで謎)
翌日、アンがマーロウの元にやってきて、秘書に収まってしまった。
(つくづく女に好かれるマーロウである)
マーロウは再びミス・フロリアンに会いに行く。なんやかやとやり取りがあるが、あまり進展はない。
警察からは「この事件から手を引け」という忠告が届くが、マーロウは意に介さない。
マーロウはグレイル夫人から連絡を受け、会いに行く。
色々やり取りがあったあと、グレイル夫人からキスをされる</b>。
年の差婚で老いたグレイル氏はそれを目撃し、哀しみながら部屋を出て行った。グレイル夫人は、グレイル氏の財産を目当てに結婚したのであって、普段は若い愛人たちと遊び歩いているのだ。
帰ってきたマーロウを出迎えたのは、アン・リオーダンのやきもちだった。
☆ あらすじ 転(ここ、マジでつまらないぞ)
心霊相談アムサーの元から、怪しいインディアンがやってきてマーロウを強引に招待する。
アムサーとのやり取りの後、マーロウは襲われる。
麻薬漬けにされ、殴られ、フラフラになりながらなんとかアンの家に帰る事が出来た。
(逃げる途中にマロイが病室にかくまわれているところを見つける)
そして、アンと一緒にいるとアンにも危険が及ぶと感じ、マーロウはアンに送られて自宅に帰るのだった。
バーの婆さん、ミセス・フロリアンが殺された。どうも素手で殺されたようだった(犯人はマロイ?)
カジノ船を経営するギャングに庇護されているらしいマロイ。
彼に接触するため、マーロウはカジノ船に乗り込み、マロイに伝言を伝える。
(この辺、マジでつまらない)
☆ あらすじ (結)
グレイル夫人がマーロウの事務所にやってくる。
マーロウの事務所にマロイもやってきた。
グレイル夫人=ヴェルマを見て、大喜びするマロイだが、自分を警察に売った人間がヴェルマである事を彼は察知する。
同時にヴェルマはマロイを射殺した。
その後、警察はナイトクラブで歌手に戻っていたヴェルマを見つけた。
ヴェルマは警察を射殺した後、自殺した。
ヴェルマはひょっとしたら、夫のグレイルに配慮して自殺したのではなかろうか。
裁判になれば、グレイルが金を出す事になる。グレイルが心身共に疲弊する事になる。
それを考えてヴェルマは自殺したのではないか……
そんなバカな、とマーロウは自分で言いながら思うのだった。
☆ 感想
本作で印象深いのは、やはりムース・マロイであり、その片思い相手
悪女(これで4作連続悪女、というよりチャンドラー作品はほぼ必ず悪女が出る)のヴェルマである。
マロイは黒人専用酒場で、来店を断った黒人を殺した後も平気で
「黒んぼ風情が……」みたいな態度をとっているし、
他にも体臭が臭いインディアンの登場など、今の基準で見るとチャンドラーの差別意識を感じてしまうシーンが多い。
また、心霊相談アムサーだのギャング船への搭乗だの、謎の大立ち回りが面白さに繋がっておらず、
「そんなことはいいから、マロイとヴェルマはマダー????」という
荒涼とした気持ちにさせられる。
ただし、最初と最後のシーンに関してはやはり印象に残るシーンではある。
そのためだけに、真ん中のどうでもいいマリオットの話やら、アムサーの話を読む価値があるかと聞かれると首をかしげてしまうが。
次回はチャンドラーの中で2番目に好きな、『高い窓』(11/12 19:00)です。
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