異世界行路 〜仲間たちとの学園生活〜
松皇 光
第1話 謎の光に包まれた中学生15人
青くサファイアのように輝く閑静とした洞窟から極太く低い重低音の声が響き渡る。
その振動で天井、壁からポロポロと岩や石が崩れ落ちていく。
その声が止むと同時に青の洞窟は一瞬にして白金色に染まった…
◇
「「「かんぱーい!!」」」
男女入れ混じった声は、最近外装を塗装し直した小さな焼肉店中に聞こえた。
現在、佐藤祐希さとうゆうきのクラスは中学校の卒業祝いとして打ち上げを行っている。
祐希たちのクラスは他のクラスに比べ仲が良く、イベントの後はいつも決まってこの地元にある小さな焼肉店で打ち
上げを行う。
中学三年生になったばかりの『これからよろしく会』、体育祭後の『お疲れ様会』、修学旅行後の『修学旅行振り返り会』、文化祭後の『お疲れ様会』、そして現在。
計五回の打ち上げをこの焼肉店で行っている。
焼肉店側からしたら良い迷惑だ。
そんな迷惑だと思う気持ちは祐希たちにはとっくに薄れ、店中には思い出話が広がっている。
お店の人も漏れている会話を聞いて懐かしさに浸っていた。
今日の店の雰囲気はいつもに比べ和やかな雰囲気であり、どこか切ないような雰囲気だった。
そして、盛り上がっていた打ち上げもそろそろ終盤に至った。
ここで、毎度お馴染みのマッシュヘアーのサッカー部キャプテン兼委員長・大山元おおやまはじめの締めの挨拶が始まった。
打ち上げの終わり方はいつも委員長の締めの挨拶と一丁締めで終わる。
「みんな、今までありがとう!これから俺らは違う道を進むが、またこうやって会おう!俺はこのクラスが大好きだ!最高だった!それでは皆様御手を拝借、いよぅーーー!!!」
「「「パン!!!」」」
一丁締めをして打ち上げは終了。
クラスのみんなはお金の勘定と使用した配膳皿の整理やコップの整理をして片付けの準備をしている。
そんな中、祐希と同じで特徴のある容姿はしていないが、頭の良さはクラスで4位の親友の中野拓なかのたくが祐希にヒソヒソと耳元でこの後の予定を教えていた。
「一応店を出た後、近くの神社でもう少し話さないかってことになっているんだけど?」
「結局何人くらい人集まるの?」
「俺も把握しているわけじゃないけど、10人〜20人くらい?」
「いや、アバウトすぎだろ!」
祐希には中学二年生から好きな人がいて、その好きな人と付き合えるように手助けをしているのが拓である。
お互い高校は違い会う機会もなくなってしまうと危惧し、祐希は今日告白するつもりである。
今日の祐希は一段とそわそわしており、勘の良い友達はそのことに気づいている。
店を出た祐希たちは帰宅組と残る組で別れた。
残る組は星がくっきり見える夜空の下を談笑とともに歩いた。
店を出て十分くらいすると、「神虎神社はこの上」と書かれた苔で覆われた古びた看板がある。双方から草木が生茂る蹴上の高い石の階段を登った先には錆びれた鳥居が建っている。
鳥居を潜り、祐希たちは賽銭箱付近の小さな階段に腰を下ろし会話を始めた。
会話の盛り上がりが収まった頃、祐希は拓にアイコンタクトをとり、その輪から離脱した。
そんな祐希が好きな人が天音琴あまねこと。
160もない身長で髪型は長い髪を束ねたポニーテール、ほどよく白い肌で膝は少しピンクがかっている。部活はバトミントンをしている。
女子たちもそのアイコンタクトに気づき、琴をうまく誘導し二人だけの場所を設けた。
手水舎には今にも線が切れそうな電球が灯っており、少し不気味な雰囲気が漂っている。
場所選びをミスったのかもしれないと焦る祐希。
そんな祐希の焦りも当然気づかず、琴が祐希の顔を覗き込む。
「どうしたの?」
「いや、その〜…今日の空綺麗だね!」
緊張のあまり、どうでもない言葉を発してしまった。
琴はムスッとした表情で祐希に詰めかかる。
「それを言うためにわざわざ呼んだの?」
「…。嘘、嘘、冗談!」
「じゃー何?」
祐希は腹をくくった。目には力が篭っており、手汗はダーダーだ。
「俺、中学二年生のときから…」
祐希が琴に思いを伝えようとした瞬間、決意の告白を遮るかのように神社一帯が白金の光に包まれた。
突然の事態にクラスのみんなは軽いパニック状態だ。
甘酸っぱい青春の雰囲気は一瞬にして砕け散り、祐希たちの声は不信感と恐怖で溢れていた。
白金の光は徐々に収まり、膨れ上がった光の包装は次第に小さくなり、そこにいた中学三年生15人が行方不明となった…。
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