第31話 下級生の申し出

「でもどうしてだと思う、あんなに美人で有名な人なのに」

「なんで深なんかにやらしたのかってこと?」

「ね、もしかしてさ、怒ってる?」

 別に、怒ってなんかいないし。


「ほら怒ってるでしょ」

 後ろから抱きしめようとした深の腕を、萌は巧妙にかいくぐった。

「触んなよ、変態」

「何言ってんのさ、大体引っ張ってきたのは萌だろうが」

「そうだけどさ、まさか彼女が深を気にいるとは思ってなかったんだもん」


「だから、好きなのは萌だけだから」

「ほんとに、どんな美人と会っても、やっても」

「当たり前、萌とは運命だから」

「腐れ縁だと思っていない?」

「思ってないよ」

 やっと抱きしめてキスが許された。


「ストレスかなあ」

「だと思うよ、だから、見せたくなったら、いつでも俺が」

「殺すよ」

「なんていわない、美術部でモデルになればいいって言っといた」

「ああ、それでいいなら部としては」

「噂になって男子部員も入るかもな」

「それはいらない、深みたいな変態ばっかり入ったら風紀が乱れる」


「風紀? 不純異性交遊の塊がよくいうね」

「不純じゃないもん、フィアンセだもの」

「あー、終わったらめちゃくちゃやろっと」

「精のつくもの食べてね」

「お前らどんな話してんだまったく」

 萌がへへへと笑う。


「あのね、みんなに言われちゃった、あんなにでかいのよく入るなって」

「やりまくってるって言いふらしてるの?」

「まさか、それほどはしたなくありません。私は処女だって言い張っているから」

「そうなの、じゃ、俺も話し合わさなきゃ」

「あ、深は変態でやりまくってるから、近寄ると妊娠するって言ってある」

「名誉棄損だ」

「ふん」


 それぐらい萌が宣伝していたはずなのに、なぜか深は下級生に声をかけられた。

「服部先輩、私の写真撮ってくれませんか」

 空手部の部室の前で、彼女は待っていた。


「なあ、萌、真田真子って知ってるよな」

「うん、うちの一年生でしょ」

「ヌード撮ってくれって言われたぞ」

「なんで、また手を伸ばしたの」

「またってなんだよ、じゃなくてお前写真の話したか?」


「まさか、するわけないでしょそんな話、頭疑われちゃう」

 そうだと深も思う。

「深が言ったんじゃないの、写真撮らしてって? いう訳ないでしょ、萌にばれるような話すると思うか」


 となると、どうして?

「その子、見えるんじゃないのか。そしてとてつもない闇を抱えてる」

 じいちゃんの意見はなっとくさせるものがあった。

「どうする、乗るか」

「いいけど、深の好きにすれば」

「まさか、萌が一緒じゃないと俺はやらない」

「気にしなくていいよ」


「そうじゃなくて」

「自分一人じゃ気が重いって言ってるのさ、助けてやれよ」

「ほら涼子さんの時見たいのがあったら」

「深でもつらいかぁ」

「あの時だって、こころさんの闇を気が付いたの萌だったでしょ」

 そう、深は立ち直るまでに、それなりの時間がかかったのだ。


「え、部長も一緒にですか、部長の前で脱ぐのか」

「ヌード撮るときはおれだけでもいいけど、なんかあるんでしょ、話したいことが、大丈夫、萌はおしゃべりじゃないから」





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