「だって私モテるんですもの」と言える女になりました。
@chobee
第1話 また男で失敗した
また、男で失敗した。
人生、そろそろ詰んだレベル。
仕事もそこまでやる気なし、男運なし、39歳、独身♀。
私っていつもこう・・・人生こんなはずじゃなかった。
子供の頃の私は、将来は20代で素敵な王子様と幸せな結婚をして、子供も生まれて順風満帆に行くはずだった。
ーどうしてそうなったんだろう・・・ ー
連絡すら来ない男を5時間もカフェで待ち続けて、ようやく気づくか、私。
長く付き合ってる彼女持ちの男とこの歳で3年も付き合って、待ち合わせすっぽかされてる。
もし身近にそんな友人がいたら、 さっさと別れなよバカじゃないの?って言うよね。 間違いなく絶対言うでしょ。
でも自分のこととなったらこのザマ。
もう自分が情けなくてしょうがない。
怒りと悔しさと情けなさの入り混じった気持ちが雪崩のように溢れ出す。
とにかくあと一歩で泣く寸前。
「人生こんなはずじゃなかった・・・?」
背後から声がした。
ーえ!?
驚いて振り返ると背中合わせに金髪のマダムと思しき女性の横顔があった。
「心の声が洩れてたわよ、あなた」
「・・・!?」
「あなた、ずいぶんブスになったわね。顔というより雰囲気が。」
「え?」とっさの驚きに言葉が出ない。
「わ、わたし、お会いしたことありましたか?」
彼女は口角を片方あげてニヤリと笑った。
「あなたは私をわからないかもしれないけど、私はあなたをよく知ってるわ、結衣ちゃん。 でもそんなことはどうでも良いの。
それよりあなたは自分を大切にする意味をそろそろちゃんと理解するタイミングじゃないかしら」
そう言われた瞬間、さっきからぎりぎりだった涙腺のダムが崩壊した。
ハンカチを握り締めて、ひとしきり泣いた。
そんな私の手をマダムは優しく握り、なにも言わず座っていた。
「私もそう思うんですけど・・・ でもどうしていいかわからないの・・・もうこの歳で私なんて無理・・・」
「そう。もうこの歳で無理・・・ね。」
マダムの顔そ見てハッとした。
「いや、そんな意味じゃなくて・・・」
マダムはゆっくり一呼吸入れてから、諭すように言った。
「いい?ゆいちゃん。
自分の可能性を自分が無理って否定したらもうおしまいなのよ。
自分の可能性を閉じるも開くも自分。
人は環境や周りの人のせいにしたがるけど、本当に自分次第でどうにでもなる。
とはいえこんなこと言ったところで、今のあなたに取っては頭が理解するだけの綺麗事ね。
そんなことより今は思いきり悔しさを感じなさい。怒りなさい。絶望しなさい。」
マダムは最後しっかりとした口調で言った。
「え?怒っていいの?絶望・・・もっとしていいんですか・・・?」
マダムの言葉に、また涙腺が緩む。
ーこんなはずじゃない人生にした私、ほんとバカ!ー
再度ひとしきり泣いたあと、だんだんと我にかえってきた。
ずっと握ってもらってた手に今さら気づく。
「ありがとうございます。」
小声で言うと、うつむいていた頭をさらに下げた。
「今居てくださって、本当にありがとうございます。おかげで少し落ち着きました。」
「それはよかった。」
「ねえあなた・・・
人生をひっくり返す復讐の方法知りたい?」
「え?」
もういろいろと頭が追いついて来ない。
マダムはニコッとしながら黙って一枚のカードを私の手に握らせた。
「もう遅いから、帰ってゆっくり寝た方がいいわね。」
そう言ってマダムはCHANELの黒いバッグを肩にかけ、片手を軽く上げるとそのまま帰っていった。
「すみません、お会計を・・」
ひとしきり泣いた後の、化粧が落ちてボロボロの顔を見られるのが恥ずかしい。
顔を伏せてカウンターで店員の男性に言うと、
「もうお会計は済んでますよ。大丈夫です。」
爽やかな笑顔で返ってきた。
「え??」
今日はもう本当にいろいろと頭が追いついて来ない夜だった。
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