SS2 書籍発売記念
本日から発売日までSSを連続投稿いたします。
要望があった内容ですが、一回では書ききらないので数回の投稿にわけました。
全ての回がアルフレッドSideです。気を付けてお進みください。
【初めて婚約者の令嬢に会った】 アルフレッド 八歳
今日は僕の婚約者が来るって聞いている。
隣の領地のガラクシアース伯爵家の令嬢らしい。
仲良くできるといいなぁ。
一週間ほどネフリティス侯爵家に滞在すると聞いている。父上からも仲良くするようにと言われているし、お祖父様からも仲良くするように言われている。
「アルフレッド様。もうすぐ到着されるようですよ」
「わかった。ディルザ」
ディルザは僕の侍従だ。長く僕に仕えるように年が近い者が選ばれた。確か十三歳だったかな?
ディルザの後について玄関ホールに向かう。その後をついていきながら、ふと思った。
婚約者の令嬢はまだ三歳と聞いている。
三歳と仲良くってどうすればいいのだろう?
弟のファスシオンと同じ三歳。ファスシオンは小さな短剣を手にして剣術の訓練を始めているから、相手をしてあげているけど、令嬢にそんなことはしては駄目だよね。
だったら、本でも読んであげたらいいのかな? でも令嬢が好みそうな本ってなんだろう? 妖精の本かな? でもこれを持ち出すには父上の許可が必要だから無理だよね。
そんなことを考えながら、玄関ホールに降りていった。すると人の話し声が聞こえることに慌てて顔を上げた。
もしかして到着してからディルザが呼びにきたのか!
玄関ホールを見下ろすように視線を上げると、そこには大きな妖精と思えるような人たちがいた。
そこにいる人達は皆、白かった。髪も肌も普通の人より白く、妖精が大きくなったのかと思ったほどだった。だけど、背中には薄い羽がないから、妖精ではないのだろうなと思ったほど、キラキラしていた。
「アルフレッド。こちらに来なさい」
階段の途中で足を止めていると、父上から側に来るように言われ、慌てて玄関ホールに降りる。そして、父上にすれば珍しく、すごく嫌そうな表情をしていることが気になってしまった。もしかして、僕が遅れてしまったことを、怒っていらっしゃるのだろうか。
「うわぁ~! シュリヴァスにそっくりだね〜。昔を思い出すよ。あの頃は可愛かったよね〜」
僕のことを父上とそっくりだと言った人に視線を向ける。そこには男の人か女の人かわからない白い人がいた。着ている服も護衛の人たちのような動きやすそうな服を着ている。
護衛には男の人も女の人もいるから、この人がどっちかよくわからない。
「ガラクシアース伯爵だ」
父上が伯爵と紹介したのだから、男の人なのだろう。
「息子のアルフレッドだ。今年で八歳になる。それから、幼少の頃の私を可愛いとは言うな!」
いつもと違う感じの父上に驚きつつ、前日にディルザと練習したように自己紹介を言った。
「ネフリティス侯爵家の次男のアルフレッドです。いご……おみしりおきを」
ディルザが言うには相手は伯爵家だから、侯爵家の者として威厳をもって挨拶するようにと言われた。
……威厳……出てたかな?
「うんうん。シュリヴァスの子供の頃とそっくりだね。これなら大丈夫かな?」
ガラクシアース伯爵は隣の白い人を見てにこやかに話している。この人はドレスを着ているから女の人とわかる。
その女の人は言葉無く頷いた。たぶん、この方がガラクシアース伯爵夫人なのだろう。
僕から見れば、お二人の方が似ていると思う。髪も肌も白いし、目の色も金色だ。同じだよね。
「フェリシア。挨拶をがんばってみようか。アルフレッド君。僕の娘のフェリシアだよ」
ガラクシアース伯爵はそう言って、一歩横にズレて、足元の何かを押し出す。
そこには伯爵の足にくっついている女の子がいた。
その姿を見た瞬間。これは僕のだと思った。
可愛い! なんて可愛いんだろう!
ふわふわした妖精だ!
白い髪は前に出てきたからか、ふわっと舞っている。ぷっくりしたほっぺは美味しそう。僕を見ている金色の目は僕だけを見ている。
可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い……可愛いしかない。
「はじめまして、あるふえっとさま。ふぇりしぃあともうします」
え? 可愛い過ぎて僕を殺しにかかってきているのだろうか?
三歳だからだろうか。僕の名前が言いにくそうだ。
「アルでいいよ」
「あい。あるしゃま」
ニコリと笑った妖精に思わず駆け寄って、抱き上げる。ぐずる弟を抱っこするのと同じだ。
「ふぁ」
驚いている妖精も可愛い。……あれ? 金色の目の中が縦に伸びている。と思ったあとの記憶がない。
気がつけば血溜まりの中に顔を付けていた。そして僕の可愛い妖精が「ごめんなさいごめんなさい」と泣いている。
なぜ、泣いているんだろう? 泣くことなんてないのに?
「旦那様。これは大変なことが起きましたわ」
「そうだね。まさかアルフレッド君とフェリシアがねぇ」
ガラクシアース伯爵夫人と思われる声と、伯爵の声が聞こえてくるけど、僕はそんなことより、泣いている僕の妖精の方が気になって仕方がない。
泣かなくていいんだよ。って言いたいけど体が重いなぁ。
「どうしたのだ? アルフレッドが怪我をすることは想定内だっただろう?」
「シュリヴァス。違うんだ。竜人の僕たちには
「つがい……だと? それはリアンバール公爵様と夫人のことか?」
「そうだね。竜人の血が濃く現れたリアンバールは妖精女王だったアクアイエロを妻にした。有名な話だね。恐らくアルフレッド君も竜人の血が濃く現れたんじゃないのかな?」
「どういうことだ?」
「今のフェリシアに近づいたからだね」
「ああ、初めてのところで威嚇している小竜にってことか? それは子供だからわからなかったと言うことだろう?」
「そこの子供は階段から降りられないでいる。普通は僕たちの力に恐怖をするものなんだよ」
「ああ、アルフレッドの侍従か」
「アルフレッド君もそうだけど、アルフレッド君を見たフェリシアが興味を持ってくれたからね。さっきもアルフレッド君の頭を吹っ飛ばして、時間を巻き戻しをしたかのような魔術を無意識で使っていたのは驚いたね。恐らくあんな回復魔術を使うのは回復魔術の基礎を知らなかったからだね」
聞こえてくる言葉からどうやら、僕は僕の妖精を驚かせてしまったらしい。弟じゃないから、いきなり抱きかかえるのは駄目なのか。
「今日は顔合わせってだけにしておこうか。アルフレッド君の傷は……」
「旦那様。綺麗に治っています」
「エミリアがそう言っているから、問題なさそうだね。それじゃ、また別の日にするよ」
「これも想定内だ」
「そんなに睨まないで欲しいなぁ。挨拶で握手したら手を握りつぶしてしまったぐらいあるよね」
「無い!」
「はははは! また来るよ」
泣いている僕の妖精が伯爵に抱えられて帰ってしまう。
ああ、父上が言っていたことはこういうことだったんだ。
『油断すると動けなるから、気合を入れて会うように』
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