第30話 朝はゆっくり将来のことを考える
-side アクシア-
--ピヨピヨピヨ
「ふぁーー!よく寝たー」
朝は小鳥さんの鳴き声で目覚める。
今鳴いている小鳥さんは、辺境にいる特殊な魔物でピヨピヨ鳥というらしい。ちなみに俺はまだ鳥の姿を見たことがない。
というのも、どうやらこのピヨピヨ鳥さん、普段は森の奥深くにいるらしいのだ。森の遠くからでもここまで鳴き声が届くらしい。救急車のサイレンより響いている。
そんな、辺境の七不思議ともされるピヨピヨさんの鳴き声でスッキリ目覚めた俺はいつも通り朝ごはんを食べにいく。
今日は、フィル兄がスライムさんにかまいきりだったので、珍しく一人で寝たのだ。
青龍様もナビさんもいたから全然寂しくなかったよ!爆睡爆睡。
「おはよう、アクシア」「おはよー」
「おはようございます、パパ、ママ」
おはようだけでも、パパとママには丁寧な言葉遣いをしようという我が家の教育方針により、朝の挨拶は丁寧語だ。
みんなまだ眠そうに、のほほんとした空気が流れる。
--プニプニポヨンポヨン
フィル兄の頭の上に乗っているスライムさんは朝から元気そうに飛び跳ねている。
そういえば、昨日はスライムさんの体から、ビニール袋や便利なプラスチック食器が作れるとわかっただよね。
やりたい楽しそうなことも出てきたが、今日は今日でパパとママが言ったことをやらなければならないので一旦保留だ。
「アクシア、今日はフィルとテオと一緒にお勉強しなさい」
「うーーっ」
「アクシア」
「はーい」
お勉強かー。退屈なんだよなー。
算数と理科はともかく、この国の歴史や文学、音楽や芸術とかを勉強するけれど、珍紛漢紛だ。
兄様たちはこれに加え、貴族のマナー、政治、哲学、倫理、地理や天文学の勉強をしているらしい。大変だー。
フィル兄鑑定さんに凡人って書かれていたけれど、これだけのこと継続的に勉強しているだけで才能あると思うんだよね。
というか、ナビさんの人物鑑定の基準ってなんなのだろう?
「一応データはたくさん読み取っているけれど、俺の完全な主観なのだー」
「そっかー」
そんなもんだよねー。
世の中完全に客観的な評価基準はあまり存在しないからねー。ナビさんに凡人と評価されているフィル兄もそこに“努力”や“継続”の才能などは含まれていないのだろう。
「そーいうことなのだー。あくまで現在のステータスやスキルの判断なのだー」
「ふむー」
確か、神様が言ってたけど、スキルは後天的に身につけるんだったっけ?
「そうなのだー。どんな凡人でも努力していれば、スキル次第では非凡になれる世の中なのだー」
「ふむふむ」
このシステム誰でも努力しなさいという世界と読み取ってシビアな世界と評価するのか、努力すれば誰でも公正に成功できる確率が上がるから良い世界と評価するかは人それぞれだろう。
どうせなら、のんべんだらりな生活を送りたいと思っている俺にとっては、役に立ちそうな典型的なスキルを最短でゲットすることにこだわらず、自由にのびのび好きな事をしてスキルを獲得していきたいところだ。
そういう点で優秀でかつ努力をものすごくしてたくさんスキルを持っていそうな貴族社会はやっぱり大変そうだ。将来は平民になって、冒険者として気ままにいきながら、スローライフを送るのが性に合ってそう。
そんなことを考えながら、フィル兄とテオ兄と一緒に勉強部屋に向かうのだった。
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