真っ赤なホワイトチョコレート

@maru_a

真っ赤なホワイトチョコレート

「あぁー、さっみぃ。」

そう独り言をつぶやいた男の名は苅部創一。大学生で今は東京に住んでいる。深夜のバイトが終わって家に帰っているところだ。斜めに入る日の光が眩しく、足取りを遅くさせている。同じ大学の同級生とシェアハウスをしている彼は、ポストの中に何か手紙が入っていることに気がついた。家の中に入ってさっきの手紙を開けてみると


「チョコレートパーティにご招待!貴方様二人に二枚のチケットをプレゼント致します!参加者は全員で八名。東條グループのお屋敷で十二月二十四日にお待ちしております。是非来てください。」

東條グループ…?東條グループといえばゲーム界やファッション界、ホテルなどを経営してる大手企業じゃないか。なんでこんな大企業から…?

「あれ?帰ってたの?おかえり」

俺に呼びかけたのは共にシェアハウスをしている同級生の淀土筆だ。先ほどまで寝ていたらしい。

「ああ、そうだ土筆。ポストにこんな手紙が入ってたんだけどさ、中身見たらこれなんだよね。」

土筆は手紙の内容をみた。

「チョコレートパーティ?なんか知らないけど面白そうだから行ってみようぜ」

「しゃあーねーなー。」

あまり気が乗らなかったが、渋々承諾した。


この時はまだあんなことが起きるなんて誰も知らなかった……


十二月二十四日、俺たちは東條グループの屋敷に車で移動していた。

「チョコレートパーティって何するんだろうな?もしかして色んな種類のチョコレートが出されて試食するのかな。」

土筆が運転席で言いながら、ついに東條グループの屋敷に着いた。玄関先で待っていたのは東條グループの会長、東條会長の執事の斑目さんだ。

「苅部さんと淀さんですね。ようこそお越しくださいました。私は東條グループ会長の執事、斑目でございます。では、屋敷の中を案内させていただきます。」

そうして俺たちは斑目さんに案内された。

「あの〜、斑目さん。僕たちが招待されたのって、なんでですか?」

「さあ?私にもわかりませぬ。会長が急にやりたいと申されて、今回のパーティーが開かれましたもので。ですが、状態した八人の方々は会長が以前お世話になった方たちだと聞かされております。」

お世話になった…?てことは前に会ったことがあるってことなのか?

「さあ着きましたよ。ここがパーティ会場でございます。まもなく会長がいらっしゃるのでそれまでお待ち下さい。」

そこには俺たち二人を除いた六人の招待者がいた。美容師の名田真紘。コンビニアルバイトの赤井久留。作家の斎藤真留。サラリーマンの三島成未。飲食店を経営している成宮颯太。アパレル店員の山鹿亜樹。ここにいる八人が今回招待されたメンバーのようだ。

「お待たせしました。私が東條グループの会長、東條昭平です。みなさん、こうこそいらっしゃいました。」

「あの、執事さんに聞いたんですけど以前会ったことがありましたか?」三島が聞いた。

「はい。ありますよ。色んなところであなたたちと会い、お世話になった感謝の気持を込めて招待させてもらいました。色んな種類のチョコレートを入手しましたので是非試食をしてほしいのです。楽しんでくださいね。」

そういって部屋に色んな種類のチョコが入ってきた。

「 チョコレートの紹介は私、斑目が紹介させていただきます。」

・一つ目

「こちらはビターチョコレートです。ミルクなどの乳製品が入らないカカオマスが四十〜六十のチョコです。他にもセミスイートチョコレートやチョコレートフォンダントとも呼ばれております。」

・二つ目

「こちらはミルクチョコレートです。ミルクの入ったチョコレートで、ミルクとしては全脂粉乳、脱脂粉乳、クリーム粉乳が使われております。クリームチョコレートとも呼ばれております」

・三つ目

「こちらは生チョコレートです。チョコレート生地に生クリームや洋酒などを練り込んだチョコレートです。」

・四つ目

「こちらはクーベルチュールチョコレートです。ココアバターの含有量の多いチョコレートで、ココアバターを三十一%以上含有することが基本のチョコレートです。」

・五つ目

「こちらはジャンドゥーヤチョコレートです。ローストして細かく砕いたヘーゼルナッツを加えたチョコレートでイタリアが本場のチョコレートです。ヘーゼルナッツにアーモンド、その他のナッツを加えたものもあります。」

・六つ目

「こちらはシェルチョコレートです。チョコレートを型に流し込み殻を作りこの中にクリーム、ジャム、ナッツ類、フルーツを入れさらにチョコレートで蓋をしたものです。」

・七つ目

「こちらはエンローバーチョコレートです。ウエハースの全体をチョコレートで覆ったものです。」

・八つ目

「こちらはボンボンです。中身にガナッシュ、プラリネ、マージパンを加えたものです。」

・九つ目

「こちらはロシェです。ロシェというのはフランス語で岩という意味でアーモンドなどで岩のゴツゴツ感を出したボンボンショコラです。」

・十つ目

「こちらはプラリネです。砂糖を熱してカラメル状にし、ローストしたアーモンドやヘーゼルナッツを混ぜ合わせすりつぶしてロースト状にしたものを溶かしたチョコレートに混ぜたものです。」

・十一つ目

「こちらはガナッシュです。溶かしたチョコレートにたっぷり生クリームを加えたものです。」

・十二つ目

「こちらはオランジェットです。細切りにしたオレンジピールを砂糖漬けにし、チョコレートをかけたり浸したりしたものです。」

・十三つ目

「こちらはドラジェです。アーモンドをチョコレートと砂糖でコーティングしたフランスのお菓子です。」

・十四つ目

「こちらはエクレアです。細長く焼いたシューの生地にチョコレート風味のクリームを入れ、表面にチョコレートフォンダントを塗ったものです。」

・十五つ目

「こちらはチョコレートタルトです。タルト生地の中にガナッシュチョコレートを詰めたものです。」

・十六つ目

「こちらはチョコレートマカロンです。粉末アーモンド、砂糖、卵白とココアを混ぜた生地の中にガナッシュチョコレートが詰まった口当たりの軽いフランス菓子です。」

「十七つ目はサプライズでご紹介したいと思いますのでこの十六種類のチョコレートをご堪能ください。」

そういうと斑目さんはどこかへ行ってしまった。

「よし。食べるか。俺、ミルクチョコレート好きなんだよね。」

土筆がチョコレートに手を伸ばすと、他の六人と会長もチョコレートに手を伸ばした。その後、各々がチョコレートを全種類食べ終えたとき、斑目さんが言った。

「皆様、十六種類のチョコレートは楽しめたでしょうか。それでは十七つ目のチョコレートを紹介いたします。十七つ目のチョコレートは、赤いホワイトチョコレートでございます。ただし、そのチョコレートはこの屋敷の何処かに全部で八つ隠されております。制限時間は一時間です。見つけ次第らこの屋敷から帰ってもらっても構いません。もう食べない方も帰ってもらって構いません。それでは、探してください。」

斑目さんがそういうと他の六人は探しに行った。

「なあ、土筆。どうする?もう食えないよな。」

「そうだね。俺ももういいかも。東條会長、招待してくれてありがとうございました。俺たちはもう帰ります。」

俺たちがそういうと、

「ああ、じゃあ気をつけて帰ってください。」

そして俺たちが部屋を出た時、

「なあ、斑目君。いつ赤いホワイトチョコレートなんて用意したんだ?」

「私の手作りでございます。会長も召し上がりますか?」

「うん、君の手作りチョコ、食べてみたいな。」

「承知いたしました。」

俺たちはこの会話を気にも留めずに、車に乗って家に帰った。



翌日起きると、土筆が新聞を片手に深刻そうな顔をしていた。

「土筆、どうしたんだ?そんな深刻そうな顔して。」

「おい、これ見てみろよ。やばいぞ。」

そういうと土筆は、新聞の記事を指差して見せてきた。

そこに書いていたものは…


東條グループ会長:東條昭平ら七人が毒殺

容疑者、東條グループ執事の斑目を逮捕。ホワイトチョコレートに猛毒のマムシグサの実。


先日、東條会長はチョコレートパーティーを開催。招待者八人でチョコレート十六種類を食べていた。その後斑目がサプライズと証して、赤いホワイトチョコレートを招待者六人と、会長に食べさせた。残り二人は既に帰宅しておりチョコレートを食べなかった模様。


被害者 東條昭平

名田真紘

赤井久留

三島成未

成宮颯太

斎藤真留

山鹿亜樹


容疑者 斑目誠治 逮捕したものの、毒を飲んでいて自殺。


という記事が新聞に載っていた。


「あのチョコレートをもし食べていたら俺らも死んでたってことか。」

「でもなんで斑目さんはこんなこと……?」

「真相は闇の中になったからな。」



……真っ赤なホワイトチョコレート事件の隣の記事


昨夜大通りにて死亡者二名の交通事故発生

トラック同士の衝突事故に巻き込まれて死亡


死亡者 苅部創一

淀土筆


「真っ赤なホワイトチョコレート事件」の関係者か


という記事が載っていたのはまた別の話……

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