第2話

 ある日曜の昼過ぎ、今日も小鳥ちゃんは私の部屋に来てゲームをやっていた。


「ねぇ、私はゲームするの楽しいからいいけど、いいの、小鳥ちゃんは?」

「え、何が?」

「せっかくの日曜にうちに来て私とゲームするだけで、お兄ちゃんと遊ばなくていいのかってこと。」

「でも陸くん今バイト中だからどっちにしろ遊べないよ。」


 小鳥ちゃんの片想い相手である私の兄(陸)は今バイトに行っており家に不在である。


「高校の友達とは遊ばないの?」

「そうだね。今週は特にそういう話はなかったからね。」

「なんか小鳥ちゃんが高校の友達と遊んだって話、あんま聞いたことない気がする。」

「そうかな。でもそれは私もだよ。」


 そう言って小鳥ちゃんはクスっと笑った。確かに私の交友関係は狭く、放課後や休日に学校のこと会うことはほぼない。だから小鳥ちゃんに学校のこと遊んだ話をしたことはない。とはいえ、小鳥ちゃんに限って学校の友達がいないことはないだろう。あまり積極的なタイプではないが、交友関係はしっかり作るタイプだから。


「そうだけどさぁ…。」

「そうだけど?」

「昨日も私と遊んだし、なんなら今週これでもう4回目だよ。」


 そう小鳥ちゃんと遊ぶのは今日を含め4日目である。なんなら先週の土日も遊んだし先々週もなので3週連続土日遊んでいる。ちなみに兄が一緒に遊んだ日は1日もない。流石に挨拶程度の会話はしているみたいだが1日ぐらい私じゃなくて兄と遊んだらどうだろうか思う。


「お兄ちゃんは誘わないの?」

「陸くん部活もあるし、先月からバイトを始めたし、あと友達も増えてその子達とも遊ぶから都合があまり合わないんだよね。」

「その友達の中に新しいヒロイン候補がいるんじゃない?もしくはなるんじゃない。そして追い抜かれると。」

「いや、大丈夫だから!学校では割と話してる方だし、彼あんなだし、王道の幼馴染ヒロインだし、それに空ちゃんと遊んでるのも彼の中では意外とポイント高くて良いアピールポイントになってるはずだしそれによって話すチャンスも増えてるからむしろプラスになっているしだから学校の子達より全然私の方がリードできてるから簡単に追いつかれないし大丈夫だから!」


 そう語る小鳥ちゃんは何かに言い訳をしているというか自分に言い聞かせているように見えた。


「小鳥ちゃん、最近の流れ的に負けヒロインだよ、幼馴染ヒロインは。」

「そんなことないよ!全然勝ちヒロインだよ。最強だよ。」

「ていうか、子達ってことはもう何人かいるんだね。」

「あぁ、うん。クラスメイト1人に部活の先輩1人。」

「もう良い加減誰かに先に越されるんじゃない、そろそろ進展しないと。いつまでもお兄ちゃんの鈍感さを当てにして付き合うことは無いと思ってるかもだけど、これからもそうだとは限らないでしょ。」


 というか、その鈍感のせいで小鳥ちゃんが苦労しているんでしょ、3割ぐらい。


「そうだけどね。まぁここ最近は本当にタイミングが合わなくって。」


 そう言って残念そうに笑う小鳥ちゃん。まぁ確かに予定が立てられなくても私と遊んでいれば兄に会える確率は上がるし妹と仲が良いとアピールできるか。とはいえ3週連続土日遊ぶか?そんなにヒロインレースが厳しいのだろうか?


「はぁ…。」

「?」


 徐に立ち上がり、外出用の服に着替え始める。


「空ちゃん出かけるの?」

「もう3時になるからね、おやつの時間だよ。」

 カバンに財布とスマホを入れながら答える。

「スーパーにお菓子買いに行くの?あっコンビニの方かな。」

 小鳥ちゃんも出かける準備をしながら聞いてくる。

「違うよ。食べてくるの。」

「そうなの。どこに行くの?」

「お兄ちゃんのバイト先。」


 そう言うと小鳥ちゃんは驚いたような喜んだような表情をした。正直この時間から言って兄と喋る時間があるかはわからないし、何があるかも知らないが。喫茶店と言っていたはずだから、ケーキぐらいはあるだろう。何もなかった時は小鳥ちゃんと一緒に兄に文句でもつけてやればいいや。


燦々と降り注ぐ陽光を煩わしげ手で遮り、兄に片想いする友人と目的に向け焼けたアスファルトの道を歩いていく。






――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

私(空):

 喫茶店ではチーズケーキを食べた。美味しかった。

3週間小鳥とは狩りゲーで一緒に遊んでいた。いつもソロなので結構楽しんでいた。兄とはやらない。


小鳥:

 喫茶店ではショートケーキを食べた。少しではあるが陸と喋ることができた。

陸と予定が合わず空と遊んでいた。予定が合いそうな日もあったが空と遊ぶため断った日もある。空に勧められて始めた狩りゲーに意外とハマり土日だけでなく平日にも空と遊んでいたりする。


陸:

 喫茶店でバイトを始めた。空から喫茶店の場所を聞かれておりいつかくるのではないかと思っていた。マスターの計らいで休憩時間をもらって空や小鳥と話せた。

陸も狩りゲーをやっているが空から誘われることはないし誘ってもやってくれない。小鳥がいる時なら誘われるのではないかと考えているが、残念ながらバイトや遊びに出掛けておりいまだに誘われていない。空と小鳥が一緒に遊んでいることが多いのはいつものことだが小鳥だけ空と狩りゲーをやっていることに若干嫉妬している。

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