第九章

 兄さんとつないだ手の先から、熱が伝わってくる。隣に立つ兄さんを見ると、それに気づいたのか、悪戯っぽく笑われた。

「さて、これからどうするか」

 初めて見た光はあまりにも眩しくて、目が焼き切れそうだ。

「どうするも何も。一択しかないのに?」

 兄さんは笑って、そうだな、と言った。わたし達はそのまま、遥かなる外へ、第一歩を踏み出した。目の前にも、後ろにも、皆が居る。何が起きても怖くはない。兄さんが、皆が、一緒に居るのならば。

 焼け付いた空に、溜息をこぼす。汚くて、いびつで、それでもなお、美しい色だ。後ろを振り返ることはしなかった。ついてきてくれていると、本能が感じたから。

 種を、まきに行こう。この色が神秘性を失って、共存できるように。植えることができなくても、この意思、この行為に、意味があると願って。

「行こう」

「うん」

 そのために、わたしは、わたし達は、この一歩を、確かに踏み出した。

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