不安

 嫌だ要らない手放したいって君は言うけど、本音では僕が必要なんでしょ?


 僕が君を離さないのは、君が僕を呼んでいるから。


 不安でいないのが不安だから。






 僕は君を守っているよ。


 傷付く言葉、冷たい視線、体調不良、事故に災害。目隠しで見る未来の闇。


 いつも最悪を予測して、備えろと君を急き立てる。


 僕の予言が外れても、君は良かったと喜ぶだろう。


 僕の予言が当たっても、君は充分な受け身が取れる。


 僕のいない君は無防備だ。


 不意に振り下ろされる刃に致命傷を負うだろう。






 君はもう気付いているよね。


 僕と身を寄せ合う季節は去った。


 僕が見せる幻ほどに悲惨なことはもう起こらない。


 君の鎧だった僕は、君の拘束衣に成り果てた。


 脱ぎ捨てるのはまだ怖いだろうから、もう少しだけ隣にいよう。


 小指の先だけ絡めて歩こう。

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