白と黒の柱の間に立ち、少女は黄昏の天を仰ぐ。


 ——神よ、我等を導きたまえ。


 ——偉大なる創造主、至高の聖なる魂よ。


 ——従順なる僕に御業を示したまえ。


 少女の肩がわななき、唇から神秘の言葉が流れ出る。男の神官たちが、大神官である少女の告げる神の言葉を筆記する。


 神官が民に告げ知らせた神託の通り、国は戦で勝利した。力尽きて倒れた少女が絹のベッドで寝ている間に。


 彼女だけが知らない、彼女が語った言葉の解釈を。


 彼女だけが知らない、「神託」は初めから決められていたことを。


 彼女だけが知らない、誰も神など信じていないことを。


 彼女だけが知っている神に、耳を傾ける者はない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る