第16話 戦い終わって
戦いが終わり、ショウ、レン、神宮司、玄樹と龍樹は妖鬼神社に戻ってきた。
妖鬼神社では桜子と、姑獲鳥の生徒たちが待っていた。
「桜子ママー。みんな帰ってきたよーー。」「きゅわきゅわーー」
真っ先に見つけた家鳴や、トイレの花子たちが我先にと桜子たちに報告に行く。
「みんな。無事でよかった。おかえりなさい。」
桜子が泣きそうな顔で出迎えた。
「カイト君、傷はいいの?」
桜子が心配そうな顔でいった。
「ユウタさんも、相当な傷を負っていたはずなのに。大丈夫なの?」
「烏天狗秘伝の塗り薬がよく効いてます。あれを塗れば、あれくらいの傷、すぐ治るんです。みんなも、後で手当てしてやる。」
ユウタが言うと、
「みんな、ユウタの塗り薬も飲み薬もとってもよく効くよ。ただ、僕はもう飲みたくないし、塗っても欲しくない。」
最後のほうは神宮司にしか聞こえないような小さな声で、カイトが言った。
「あら、カイト君?あなたまだ飲み薬残ってたわよ。最後まで飲まなきゃ、治らないわよ。」と桜子が椀を持ってきた。
「桜子さん、ちょっと、もういいですって。僕もうぴんぴんしてますって。」
と逃げ出した。
「もう、その薬、めっちゃ苦いし、塗ったらめっちゃしみるし。もう。勘弁してーーー。」
「あれだけの傷を負ったカイトがこんな短時間で走れるほどになるって、すごい薬だな。」
「だろ?烏天狗秘伝の薬だからな。」とユウタが自慢げに胸を張った。
「いや、ほんとにまじで沁みるんだからね!!この世のものとは思えない味だし!!あんなの、もう死んだって飲みたくないよ!!」
カイトが逃げ回りながら叫ぶのをみんなが笑いながら眺めている。
「あ、龍樹さん。あなたも話がありますからね。逃げちゃだめですよ。」
桜子は思い出したように、龍樹にくぎを刺すように言った。
「あ、まずい。勇太、匿ってくれ。」
「父さん、僕は知らないよ。母さんとしっかり話をしてね。」
「おい、冷たいじゃないか」
神宮司は父と母のやり取りを眺めて、微笑ましいと子供ながらに思った。
「これで、本当に終わったんだな。」
ショウが、よかったよかったと、頷いている。
妖鬼神社に集まったみんなが、ワイワイと勝利を喜んでいるなか、一人、玄樹がなぜか浮かない顔をしていた。
「玄樹、どないしてん?」
レンが気になったのか声をかけた。
「うん、・・・俺、京都に帰るわ。」
「えっ?なんで?やっとみんな揃ったやん。」
「うん、でも、俺、四神獣の一人だから。京都の鬼門を守る役割があるんだよね。青龍と喧嘩して飛び出してきちゃったけど。
許してくれるかわからないけど、帰って仲直りしたくなった。
みんなには色々迷惑かけたし、助けてもらったりして、良くしてもらって、嬉しかった。俺、本当はみんなよりだいぶ長く生きてるんだよね。まだ、京都が都だったころから、四神獣として京都にいたんだ。
今はあんまり四神獣としての役割もなくなった感じだけど、でもみんなを見ていたら、戻って自分の役割を全うしないとな、というのと、仲間に会いたくなった。
みんな、本当に今までありがとね。・・・俺、京都に戻るわ。」
「そっか、玄樹には玄樹の居場所があってんなぁ。ちょっと寂しなるけど、このままずっとお別れってわけちゃうしな。」
「そうだな、またこっちにも遊びに来てくれよ。」
「あ、俺ねぇ、京都行きたいなぁ。お祖母ちゃん生きてた時に連れて行ってもらったことあるんだ。いいところだよねぇ。今度みんなで行こうよ。」
「この一行だと目立って仕方ないぞ。」
「じゃぁ、みんなおしゃれな洋服とかで行く?それとも和装で?レンとショウは尻尾をどうやって隠すか考えなきゃね。うわぁ、めっちゃ楽しみだぁ。」
「みんな、ありがとう。」
「ん。こちらこそありがとう。俺たちの絆は散らないよ。」
「そうだな、玄樹、京都帰っても元気でな。」
「あぁ、みんなも元気で。じゃぁ、そろそろ行くよ。また、・・・な。」
そう言って玄樹は裏吉野を後にした。
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