第15話 最終決戦

銀峯山寺ではショウとレンを筆頭に、悪鬼集団と戦っている。

闇の力に支配された悪鬼たちは、倒しても倒しても次から次から湧いてきて、なかなかけりがつかない。

「ちっ。ショウ、らちが明かへん。このままでは、こっちが消耗してまう。」

「レン、いったいこいつらは不死身なのか?倒しても倒しても起き上がってくるぞ。」

「あぁ、きりがない。」

その時、龍樹が叫んだ。

「ショウ、レン。あれを見ろ。」

三人が見た先には、数多のどす黒い瘴気がこちらに向かってくる様子だった。

その瘴気は銀峯山寺の上空に広がる黒い渦の中に吸い込まれていく。そしてその渦がどんどん大きくなっていく。

「あれは、なんだ?」

そこに、正気に戻った玄樹が合流してきた。

「あれは、闇だ。黒い瘴気を吸い取り、増大していく。もう、かなり大きくなっているな。まずいぞ。」

「玄樹、お前正気に戻ったのか?」と、ショウが聞いた。

「あぁ、みんな、すまなかった。操られていたとはいえ、申し訳ないことをした。」

「玄樹、あいつを止める方法はないんか?」レンが聞くと

「俺にもわからない。でも、このまま大きくなると手に負えなくなる。」

と玄樹が答えた。

「あの黒い瘴気はどこから?」

「たぶん、戦いで敗れて死んだ妖の瘴気だろう。それを吸い取って拡大しているんだ。」

「ところで、なんでこいつらいくら倒しても起き上がってくるんや?ゾンビか」

敵を切り倒しながら、レンが憎々しげに叫んだ。

「あぁ、闇の魔力ですべての兵士がゾンビ化している。こいつらは倒しても倒しても、起き上がってくる。闇を葬らないと終わらない。」

玄樹が答えると、

「厄介な奴らだな。どうすりゃいいんだよ。」

ショウが、でかい妖の頭を真っ二つに割りながら毒ついた。

すると、その倒れた妖は、煙のように消えていった。

「え?消えた。もしかして、こいつら、頭が急所か?とりあえず頭をねらえ。」

「頭だな。よし!!」

そして、目の前の鬼たちを次から次に倒していくが、それでもきりがない。しかも、闇がどんどん大きくなってくる。空が真っ黒な雲に覆われているようだが、その向こうは虚無の空間があるようだ。

「おい、闇がどんどん大きくなってきている。このままだと俺たちも飲まれてしまうんじゃないか?」

ショウが叫んだ。

その時、

「お前たちは、愚かだ。」

上のほうから低い声が聞こえた。

みんなが上空を見上げると、闇の真ん中に、一人の男が浮かんでいた。

「お前は誰だ。お前の目的はなんだ。」ショウが叫んだ。

「われの名はルシフェル。闇の王だ。この世界を闇の世界に変えてやる。」

「そんなことさせるか。」

「お前たちも、われの闇に飲み込まれろ。さすれば、この世のすべての力を手に入れられる。われと共に、闇にあらんことを。」

「ふざっけんな!」

そう、ショウが叫ぶと、ルシフェルめがけて駆け出した。

「ショウ、駄目だ!闇に吸い込まれてしまう!」

と、玄樹が止めたが、ショウは跳躍し、ルシフェルに太刀を振りかざした。

一太刀を与えたかと思われたが、そのままショウは闇に飲み込まれてしまった。

「ショーーーーーーーウ」

そこにいた全員が叫んだが、ショウの姿はもう見えなくなってしまった。


そこに、神宮司が合流してきた。

「カイトとユウタが負傷した。でも、魔塊鬼は倒した。倒したんだが、魔塊鬼の体から瘴気が抜けて、その魔塊鬼の瘴気を追ってきたんだ。あの黒い雲は?あいつはなんだ?ショウはどうした?」

「あいつは、闇や。どうやら、死んだ鬼や妖の魂や瘴気を吸い取って大きくなっているらしい。近づいたら吸い込まれるし、どうしたらいいかわからへん。ショウは、今その闇に吸い込まれた。」

レンが答えた。

「なに!ショウが?そんな!」

神宮司が悔しがる。その時、龍樹が神宮司に近づいてきた。

「勇太、お前、さっき変化してたな?」

「あぁ,父さん。自分があんな力があるなんて知らなかったけど、怒りに任せて力を出したら、変化したんだ。」

「そうか、お前は俺の子だからな。もう一度変化できるか?俺といっしょに変化するぞ。」

「わかった。」

二人が並んで、力をためると、

「うおおおおおおおおおお」

二人の体からゆらゆらと気が発してきた。

勇太の体からは青の、龍樹の体からは赤の気が煙のように出てきて、二人の体が二倍ほどの大きさになり、腕も胸も足も筋肉が盛り上がり、体表が勇太は青に、龍樹は赤になった。

「オン・バサラ・クシャ・アランジャ・ウン・ソワカ」

二人が真言を唱えると、二人の間に五鈷杵が現れ、強い光を放った。

その五鈷杵を二人でルシフェルに向かって投げつけた。


「ぐおおおおおお、光はやめろおおおおおお。目が・・・熱い。」

ルシフェルが目を押さえて苦しそうに悶えた。

でも、その間も闇はどんどん広がっている。

「闇はまだ広がっている。このまま広がり続けたら、全部飲み込まれてしまう。」

玄樹が言った。


「ルシフェル、お前の好きなようにはさせない!」

そう叫んだレンが、次々に弓を弾く。矢はルシフェルに向かって飛んで行く。

だが、矢はどんどん闇に吸い込まれてゆく。

「そんな、ちっぽけな矢で何ができるというのだ!!」

ルシフェルはそういうと、ドロドロとした溶岩を投げつけてきた。

その場が騒然とする。

「くそ、どうすりゃいいんだ!」

勇太と龍樹の二人は、太刀を振り、飛んでくる溶岩をぶった切っていく。

「光で、奴を弱体できるとはいえ、倒すことができない。闇はどんどん広がってくる。近づくのが難しいから、奴を倒すことができない。どうすれば・・・」


すると、

「ぐおおおおおおおおお。」

玄樹の体から真っ赤な炎が出て、どんどん大きくなっていく。

「ルシフェル。俺が相手だ。」

玄樹の体が、岩のように堅く重くなり、闇の吸い込む力ももろともしないようだった。

玄樹は刀を構え、ルシフェルに向かってゆく。

玄樹がルシフェルに一太刀を浴びせたとき、闇から少しの光が漏れ出てきた。


そこに、ユウタとカイトが駆けつけた。

「カイト、ユウタ、体は大丈夫なのか?」神宮司が二人に言った。

「うん、ユウタの苦ーい薬のおかげで、もうピンピンしてるよ。」

「ジン、これで全員揃ったな。」


「おい、見ろ。闇が破れかけている。もしかしたら、ショウが闇の中から、闇を切り裂いているんじゃないか?」

レンが叫んだ。

「玄樹、こちら側からも闇を切り裂くことはできるか!」

「あぁ、やってみる」

レンは再びルシフェルに向かって矢を次々に浴びせかける。

玄樹は闇に向かって太刀を振り下ろした。

龍樹と勇太も太刀を振り、闇を切り裂いた。

ユウタはカイトを背中に乗せ、風を起こし、カイトはユウタの背中から、ルシフェルめがけて爪を伸ばしてゆく。5人の体からまばゆい光が闇にまっすぐに向かってゆく。

レンは仁・神宮司は勇・ユウタは優・カイトは知、そして玄樹の強の光が、闇に開いた隙間に差し込んだ。そして、闇の中から光を放っていた堅の光が5人の光をまとめ、闇の裂け目を広げていく。

6人の光が一つになった時、闇は、切り裂かれ、その闇の中からは数々の瘴気と共に、白く光り輝くスサノオが現れた。

ショウが、闇の中でスサノオとなり。闇の内側から闇を切り裂き、また、外側からも玄樹たちが闇を切り裂いたので、闇が破れたのだ。


「くそっ。まさか、闇が破られるなんて。闇の者たちよ、今一度われに力を」

ルシフェルがそういうと、闇の中から解放された瘴気が、ルシフェルに吸い込まれていき、ルシフェルが大きくなってゆく。

「まずい、闇は打ち破ったが、ルシフェルが大きくなっている。瘴気を吸い込んでるのか。このままではルシフェルを止められない。」

神宮司がルシフェルに太刀を振り下ろした。だが、ルシフェルの周りにある瘴気で跳ね返されてしまった。

「ジン、俺に任せろ。」

スサノオとなったショウがルシフェルと向かい合った。

「ルシフェル。お前を叩き潰す。」

ショウは、大太刀を振った。

「はぁーーーーーーーーーーーーーっ」

ルシフェルに向かって覇気が投げつけられた。

ルシフェルの周りの瘴気が歪み、

「なにっ。この瘴気のバリアを破っただと?」

ルシフェルの頬に一筋の血がにじむ。

スサノオとなったショウは何度も何度もルシフェルに太刀を振り、ルシフェルのバリアを破ってゆく。

ルシフェルの瘴気はしまいになくなり、ルシフェルだけになった。

「もう、お前を守る瘴気はないぞ。さぁ、次はどうする?」

スサノオはルシフェルの正面から大太刀を振り下ろした。

ズザッツ。

大太刀はスサノオの肩から胸までを袈裟切りにし、ルシフェルはそのまま地面にたたきつけられた。

数多の瘴気は、闇から解放され、昇華されていった。

闇はなくなり、空は元の月夜に戻った。


ルシフェルは、銀峯山寺の境内にいた。

魔塊鬼陣の鬼たちはほとんど、倒され。ルシフェルの魔力が弱くなったせいで、逃げ出し、今は残っていない。

レンが、ルシフェルと対峙している。

「ルシフェル、まだ生きとったんかい。しぶといな。覚悟しい。」

レンが刀を構えた。

ルシフェルも刀を構え、二人の刀が交わる。

「お前も妖だろう。人間に支配され、排除されるこの世界が嫌にならないのか?」

ルシフェルはレンに向かってそう囁いた。

「ハハッ。嫌になること?俺にもあったな、そんなことも。遠い昔の話やけどな。

だがな。俺たちには、大事な仲間や、家族がいるんや。ただそれを守っただけや。」

レンはそう答えた。

すると、ルシフェルがレンから離れた。

「俺やお前たちだって、人間が勝手に作り出した幻想にすぎないんだ。勝手に作り出したくせに、排除されたり、迫害されたり、それが俺は許せないんだ。」

「だからと言って、お前のやり方は間違っているやろ。」

「そうかもしれないな。世の中を闇の中に落としてやれば、光のなかった夜の恐怖をもう一度人間たちに思い知らせてやれると思ったのに。」

ルシフェルが力なくうなだれ言った。

「確かに、人間は闇の恐怖を忘れとる。だが、それは仕方ないことや。だから、俺たちはここで暮らしているんや。」

刀を下したレンが言った。

「もう、戦う意味もないやろう。ただ、ここからは出て行け。自分の国に帰るんやな。」

レンはルシフェルに背を向けて言った。

すると、ニヤリと笑ったルシフェルが刀を上段に構え、

「だから、甘いって言ってるんだよ」

と、レンに切りかかった。

だが、レンは振り向きざまにルシフェルの胸に一突きをくらわし、ルシフェルはそのまま倒れた。

「誰が甘いって?お前なんかに騙されるレン様じゃねぇよ。」


「れん!大丈夫か?」

そこに、ショウ、神宮司、龍樹、玄樹の4人がやってきた。

「あぁ、ルシフェルは倒したわ。みんな無事か?」

「みんな無事だ。銀峯山寺は立替が必要かもな。」

「やめてくれ。今は、そのことは考えたくない。純粋に勝利を喜びたいよ。」

ユウタが頭を抱えた。

「妖鬼神社に戻ろう。みんなが待ってる。」




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