第2話 始まりの話

ある古い家に、年老いた女が住んでいた。

「あいつらのせいで、息子は囚われの身だ。私の息子を返せ。」

その家からは毎晩、夜になると恨めしい声が聞こえてくる。

近所の者たちは、気味悪げに遠巻きにしていた。


ある日、その老婆が自分以外誰もいないはずの部屋で、声を聞いた。。

「あなたの恨みを晴らしましょう。」

声は、部屋の隅から聞こえる。黒い影のようなものがゆらゆらと揺れている。よく見ると赤い目をした小さな鼠の体から影が揺れている。

その鼠が、

「あなたの息子さんの無念、あなたの恨み、私が晴らしてあげましょう。」

そういうと、黒い煙のような息を吐いた。

女は、一瞬意識を失ったかのようになったが、すぐに起き上がった。不思議なことに曲がっていた腰が、シャキッと伸びている。そして、目の色が黒から燃えるような赤に変わった。

「そう、私と一緒にいらっしゃい。これから奴らに目にものを見せてやりましょう。」

女は影に導かれるように、ふらふらとその鼠について行った。


山の中腹に大きな白い石があった。

その石にはしめ縄がかけられ、封印の札が貼られている。

その札には、『封 妖』と書かれている。

黒い影を纏った老女が、その石の前に目をぎらつかせて立っている。

「女、その札を剥がすがよい。」

影の中から声が聞こえ、老女は札に手を伸ばした。

老女がその札に手を触れると、焼けるような痛みが襲い、力いっぱい剥がそうとするが、札はなかなか離れない。

「ぎゃーーーー。」

老女は悲鳴を上げるが、札を放そうとはしなかった。とうとう、その札がはがれ、しめ縄も外されると、その大きな石は真っ二つに割れ、中から大きな鬼が一人の男を引きずりながら出てきた。

「わしを目覚めさせたのは、お前か。」

その大きな鬼は、その老女を見下ろし言った。

すると、老女の纏っていた影が、ゆらゆらと動き、人のような形になって、

「魔塊鬼様。過去の遺恨晴らす時が参りました。私共と共に、この世界を闇に落としてやりましょう。」


鬼は、ニヤリと笑い、そこにいた4人は、空に浮き、どこかへと言ってしまった。


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