「女の私」が嫌いでした

雑草

どんな「女の子」だったか

 小さいころから、あんまり異性を意識したことがないというか、自分を「女の子」だと思うことがなかった気がする。

 物心ついたころからショートカットで、小学校6年間はほぼ1度もスカートをはかず男友達と遊びまわっていたし、中学校では制服のスカートをいやいや履いていたけど、クラスメイトたちの恋バナにもピンとこず弟と交代で毎週ジャンプを買って読んでいた。高校では髪を伸ばしたりたまにスカートを履いたりもしたけど、元女子高ゆえ生徒の8割が女子という学校で友達とアニメか漫画の話しかしていなかったし。彼氏が欲しいとか恋したいとかかわいくなりたいとか、そういう年頃の女の子にありがちな願望は自分には無関係だと思っていた。


 大学に入ってからは変化があった。伸ばしていた髪はショートに戻してメイクもほぼしないままでいたけど、サークルの同期や先輩が気になったり、友達とどの男子がタイプかって話をしたり、ちょっとは恋愛にも興味が湧くように。しかしそれと同時にやってきたのは、「性自認の揺らぎ」だった。


 きっかけは、当時入っていたソフトテニスサークルの2つ上の先輩(男性)が気になり始めたこと。かっこいい、という感じではなかったけど、話している感じとか雰囲気とか、なんとなく好きかもしんないな、推せるな、と思うようになっていた。が、ある時その人に対して「抱きたい」という感情が湧き、私は一気に混乱した。私は彼のことを考えるとき「自分が男であると想定している」?それはヘテロなのゲイなのバイなの?私は私のことを男だと思っている?女だと思っている? いろんな?が浮かび、ネットでセクシャルマイノリティについてめちゃくちゃ調べまくった。結局それらの疑問に対して答えが出ることはなく、その人に彼女ができたことやサークルから足が遠のいたことで、その人への気持ちはだんだん冷めていった。


 次の衝撃は、大学1年の夏、自動車免許合宿に行ったときのこと。地元の自動車学校に通い、近くの旅館(というより合宿所)に2週間泊まった。その旅館でたまたま遭遇した1つ上の男の人に、生まれて初めて恋をした。LINEを交換して何とか会話をつなげようと頑張ったり、友達に泣きながら電話して相談したり、とにかく初めての経験に四苦八苦した思い出。それに加えて、前の人と違って自分は女として相手を男性として見ていたから、やっぱり自分女なのか?!という悩みも生まれ、とにかくこの頃はしんどかったなという記憶しかない。合宿が終わって帰って来てからもやりとりはしていたけど、最終的にLINEで告白してフラれた。


 それ以降、サークルの友達と同じ人が気になってもやもやしたり、大学2年で研究室に配属されて気になった先輩が嫌いな同期と付き合い始めて絶望したり、その間も自分の性自認と性的志向に悩んだり、そこまで激しい出来事はなかったもののなんとなく安定しない感じが続いた。

 

 20歳の夏の処女喪失が一番ショッキングだったと思う。(余談だけどなんで処女は失くすもんなのかね。童貞は卒業って言うのに)相手はバイト先の同期で、二人で宅飲みしてたら流れで、っていうありがちな話。けど私は別に相手のことが好きだったわけでもなく(同じゲームが好きだったからそのつながりで友達として仲良くはしていた)、たぶん向こうも私のことが好きだったわけでもなく、たまたまなんとなく「友達」だったのが急に「異性」として見えてしまった、って感じだったんだろうな。ともかく、私に対して「女」を求めた彼と、それを許容した自分のことが気持ち悪すぎて、ただただショックだった。自分が思っている自分と実際の自分が全然違っていて、今までの葛藤はなんだったのか…とひたすら落ち込んだ。その彼には事後「付き合おうか」って言われたけど、はいともいいえと言わず、友達以上恋人未満のような関係を何か月か続け、最終的に私が向こうに対しての気持ち悪さに耐えきれなくなり、一方的に連絡を絶つ形で疎遠に。


 そんな形で処女を捨てた私だったが、セックスへの興味というか憧れというか、言ってしまえば性欲はありあまるほどにあった。女として見られたくないけど男の人に抱かれたい、そんな矛盾を抱えつつ悶々とすること1年。大学4年でとりあえず内定はもらったけど、このまま社会人になれるのか?ていうか卒論無理すぎるんだが卒業できるのか?モラトリアムが終わってしまうことへの不安や恐怖、そして夏休み中に行った教育実習でさらにメンタルが荒んでしまい、結果奇行に走った。マッチングアプリ、女性向け風俗、出会い系サイトで、知り合った男性に抱かれた。最初は自分への嫌悪感が激しくてクソ重賢者タイムにやられていたけど、回数を重ねるにつれ割り切ることを学んでいった。彼らは私の肉体にしか興味がないし私の内面がどんなんであろうと関係ない、そのドライさがある意味楽だったのかもしれない。今になって思うと、女性としての自分を粗末に扱うことで自分の女性性を否定したかった?というのが一応腑に落ちる考え方かなと。


 社会人になってからはそれも全部辞めて、自分は一人で生きてゆくのだという諦めみたいなものを得て過ごしていたわけです。

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