第7話 メガネ、建国する

 やあやあ、どうしたんだい?

 コンタクトデビューしたけれどフレームが視界に無くて落ち着かない、みたいな顔をして。

 私だよ私、メガネだよ!


 さて、この間はアンちゃん(正体バレないようにあだ名で呼ぶことにした)に「僕と協力して神になってよ!」みたいなことを言われてしまったけれど、それから特に進展はないよ!あくまで選択肢として考えておいてねってことなんだろうね。

 私の意思としては勿論嫌。だって面倒そうじゃない。そもそもそんな器じゃないしね。

 とりあえずは原作とは違う展開になっているし、警戒はしつつ様子見ってことになったよ。

 通路じゃなくて橋から来るにしても私が目を光らせてるし、問題はないよね!

 ふう。安心して飲めるみそ汁が美味しい。


「……あのさ、メガネ」


 人の姿でお椀を傾ける私の横にいたアンちゃんが口を開く。


「どうしたのアンちゃん」

「ここはゲームの世界なんだよな」

「うん。そうだよ」

「俺、ゲームの世界ってのは洋食が主流だと思ってたわ」


 アンちゃんの言葉に目の前に置かれたテーブルに並ぶ料理を眺める。

 そういえばファタリテートの世界では洋食だった気がする。服も建物も洋風だった。

 でもこの島は食事も服装も和風だ。建物はこのナハティガル君が住んでいた場所以外は和風に近い気がする。

 食事も白米ではないけれど玄米だし、みそ汁と焼き魚とお漬物。まさに日本の朝ごはん。


「大国とは違い、ここは水が豊富なので米作りに適してるんです。大陸では牛や豚のお肉が主流ですが、ここでは広い大地があるわけではないので育てる場所がありませんし、魚を獲るほうが楽なんですよね」

「水って、ほとんど海水じゃないのか?」

「この島は海の上というよりは川の上にあるので農業で使えるんです」

「マジか」


 地理的な話はゲームをプレイしててもわからないから、ナハティガル君の説明は有り難い。

 農業も畜産業もよくわからないけれど、でも醤油とか味噌は作るのが大変なのは知っている。テレビで見た!


「味噌とかはここで作ってるのか?」

「そうですね。元々はその作っている家でしか消費されなかったんですが、最近島の全住民が使うようになりました」

「最近なんだ」


 こんな落ち着く料理がなかったなんて。それまでの食事はどんなものだったんだろう。味気ない食事だったと思うと恐ろしい。


「前世では和食派だったからすごく嬉しいや。やっぱおみそ汁は最高だよね」

「俺は洋食派だったけどしばらく飲まないと恋しくなるよな」

「そういえば、大国の方の食事はどんな感じなの?」


 少し気になったので興味本位で聞いただけだったけれど、しばらく返答がないので二人を見ればとても沈んだような表情をしていた。


「え、聞いたらいけなかった?」

「いけないわけではないんだけど、なぁナティ」

「えぇ。知らない方が幸せだと思います。むしろ避けれるなら避けた方がよいかと」


 そんなにマズいのだろうか。

 体験はしたくないけれど怖いもの見たさがある。気になるので二人にお願いして詳しく教えてもらった。


「俺はノヴィルに住んでたわけだけど、ほとんど素材の味。せめて塩胡椒よこせー!って思った。お菓子類はあるんだけれど、そっちはものすごく甘い。お茶と一緒に流さないと食えない。上の奴らはお酒で流してたな」

「プレニルに用事があって言った事があるんですが、全てが味が濃いんです。そして量が多すぎて……。お茶や水がなくて、甘いジュースしかないんです。ただでさえ味が濃いのに、プレニル国民の皆さんはさらに味を足していて……。思い出しただけでも辛いです」

「あ、それは嫌だわ」


 なんですかその極振り。二国に行きたくない。

 私が想像だけで震えているとナハティガル君は安心させるように笑顔を向けてくれた。


「大丈夫ですよ。一番酷いのは都心で、他の小さな村とかだと少しマシだったりします」

「あ、そう言えばノヴィル軍で食事に対していい噂があったんだよ」


 食べ終わった様子のアンちゃんを見れば少し嬉しそうに顔を綻ばせていた。


「ノヴィル軍の隊長が凄くいい人で、ノヴィルでは味わえない飯を作ってくれる人だったらしいんだよ」

「へぇ。アンちゃんは食べたの?その人の料理」

「……楽しみにしてたけど俺が自由に動ける時にはその料理人がいなくなってた」


 かなり楽しみにしていたのだろう。アンちゃんは肩を落として当時を思い出しているのかどこか遠くを見ている。まぁ、ノヴィルの食事情を聞く限りはご飯を楽しみにする気持ちはわかる。

 ごちそう様と手を合わせ、アンちゃんの肩を叩いてから空いた食器を持ち上げる。

 一応ナハティガル君が住む屋敷には家政婦さんはいるけれど、一人しかいないのでできるお手伝いはしておかないと。


「ノヴィルの軍隊長で、料理上手ですか。心当たりが一人いますね」


 のんびりとしたナハティガル君の声に私とアンちゃんがナハティガル君に目を向ける。ナハティガル君はゆっくり噛んで食べるのでまだお皿やお椀には料理が残っている。じっくり味わうナハティガル君も可愛くていい!

 口の中の物をしっかりと飲み込んでからナハティガル君は笑顔を見せた。


「橋のほうに行ってみてください。今日は確か当番なのでそこで守衛をしていますよ」



 ○  ○


 真っ先に橋に向かって行ったアンちゃんを見送り、私はナハティガル君が食べ終わるのを待ってから二人で橋へ向かう。道中で会った人たちは皆こちらに向かって手を合わせてくる。すごく、変な感じがする。


「なんか、これが崇められているって感じかな?」

「そうですね。皆さんにとってもメガネ様は神のような存在です」

「とはいっても、私はまだそんな神様的な事してないのに。なんで神様だって思われてるんだろ」

「それは……」


 ナハティガル君はそこまで言って口を噤んだ。ナハティガル君より先に歩いていた私は足を止めて振り返ると、ナハティガル君は困ったような笑顔で首を振った。


「いえ。きっとメガネ様からにじみ出るパワーのおかげでしょう」


 ナハティガル君の尊いパワーには負けますよ。そう口にしたかったけれど流石に抑えた。

 まぁ、もしかしたらそんなナハティガル君の傍にいるから皆が崇めてくるってこともあるかもしれない。なにせナハティガル君が崇める対象になるだろうしね。その所有物だもの、思いっきり崇めなさい。


 そんなことを話している内に橋までついた。そう言えばこの姿でここに来るのは初めてだ。レンガの塀は私の身長では難攻不落の壁に見える。私には見えないが人がいたようでナハティガル君が声を掛けた。


「領主様。まだ仕事は無いですよ」

「仕事できたわけではないですよ。アンが先に来ていると思いましたが」

「あぁ、アンならあそこでみそ汁を堪能してる」


 なんですと!?とレンガ塀が途切れている人二人ぶんぐらいの出入り口から向こう側に出ると、道路に置いてあるベンチの一つにアンちゃんが座ってお椀を傾けていた。


「アンちゃん酷い!私も飲みたいのに!私の方が和食派なのに!!」

「来るのが遅いメガネが悪い。かなりうまいぞこのみそ汁」

「私も飲む!そのみそ汁を作った人は!?シェフを呼べぇい!」


 素敵なみそ汁を探して素早く眼球を動かしていると、笑いを堪えながらお椀を持っている人がいた。その人は見覚えがある。この間一人で散歩している時に出会った声が素敵な人だ。


「お嬢ちゃん、そんなにみそ汁飲みたかったか?」


 そう言って差し出してきたお椀には湯気を発たせるおみそ汁があった。飢えに飢えて久しぶりのまともな食事だというような気分で、神の溢し飯のような気持ちでそのお椀を受け取る。少し息を吹きかけてから少し喉に流し込むとその味に脳内が良い意味でお花畑に変わった。

 ナハティガル君の家でのおみそ汁は言うなればインスタントのおみそ汁だった。でもこのおみそ汁はご家庭の味、否、料亭の味だ。料亭で飲んだことないけど。だしの味がはっきりわかる。エビの殻を使ったのかな?エビの味が口に広がる。久しぶりのエビ味だ。エビ味は前世から大好きだったな。エビ味噌ラーメンが少し恋しい。でも味噌も美味しい。エビと味噌の味が調和されていて最高。具材はシンプルなワカメと豆腐。シンプルはベスト。最高。


「美味しいかい?」


 黙ってみそ汁の味を味わっている私に彼は感想を聞いてきた。私は何度も縦に首を振ってその素晴らしさを行動で示せば、彼は目を細めて私の頭を撫でてくれる。ちょっと乱暴な手つきで髪がぐしゃぐしゃになりそうだけれど嫌な気分ではない。


「フォルモ、そんな撫で方は失礼ですよ」

「あぁ、悪いな領主様」


 フォルモと呼ばれた彼は出入り口から出てきたナハティガル君に近づいていく。

 何か既視感を覚え首を傾げて二人を眺め、そして思い出した。

 慌ててアンちゃんに近づいた。


「アンちゃん!あの人、フォルモさんとはいつ会った!?」

「急になんだよ。初めてここに来た時に初めて会って、それからちょいちょい顔見る事が多いぐらいだったけど」

「本当に?フォルモさんと旅してたりしない?」

「ないけど……、まさか」


 アンちゃんが私の言いたい事を理解してくれたらしいので説明しよう。

 オレンジ色の髪を後ろに流し、森を思い起こす瞳の色をした無精髭を生やした男性。左頬に目立ちはしないが傷が残る彼はフォルモ。ノヴィルの元軍隊長であり、原作ではアンブラと共に行動していたメインパーティの一人だ。

 アンブラとは歳も離れていて、気前のいいおっちゃんという第一印象。イケメン!というよりはお父さんに近い彼はファタリテートのファンの一部から人気があった。その理由がその声である。担当声優さんがベテランの方で、その低音ボイスに落とされた女が私の友人にいた程だ。友人曰く「声だけで孕まされる」。こいつは何を言っているのだろうと理解はできなかった。

 フォルモさんはアンブラ達のパーティに入ったのはアンブラ達を心配してだった。フォルモさんは軍隊長を辞め一人ふらふらと旅をしていたところアンブラ達に出会った。アンブラに興味を持ったフォルモさんは「目的も無いしついていく」と言ってパーティに入った。だが本当はアンブラの事をノヴィルにいた頃に噂で聞いていたのだ。暗殺技術を学び、復讐を目指す。そして同じ歳の少年たちに比べればかなり冷たい目をしているアンブラにフォルモさんは手助けをしたかったのだ。旅の間は稽古をつけて暗殺以外の戦闘を教えたり、頻繁に会話をしてアンブラを少しでも人間らしくしたかったのだ。

 ナハティガル君のイベントの後、アンブラはフォルモさんに心を許し、二人で連携した戦闘もできるようになった。それこそまるで、親子の様に。

 私の説明を聞いたアンちゃんは少し考えてから口を開いた。


「そんな設定ならフォルモはここにはいないんじゃないのか?それともここにいてしばらくしてから一人で放浪するのか?」

「いや、原作ではナハティガル君とは初対面だったみたいだからここに来てるはずがないんだよ」

「つまり、原作と違うってことか?」

「そう、なるね」


 アンちゃんが転生者だったのといい原作と違う点が多い。原作とは違う動きが出来るという事はフォルモさんも転生者という事だろうか。

 うんうんと唸っているとフォルモさんとナハティガル君が近づいてきた。


「メガネ様、どうかされましたか?」

「なんでもないよ。えっと、フォルモさん、美味しいおみそ汁をありがとうございます」

「お嬢ちゃんの口に会ったみたいでよかったぜ」


 あぁ。原作のメインメンバーだとわかると気を付けたいと思う反面、その笑顔がすごく癒される。

 ゲームプレイ中は思わなかったけれど、こうして実際に会ってみればお父さんみたいな安心感があるな。島のお年寄り達は皆私に敬語を使っていたけれど、気さくな感じが安心しちゃう。


「フォルモさん、このおみそ汁って昔から作っていたんですか?」


 正体がばれないようにアンちゃんが裏声を使いつつ女性らしい言葉を選ぶ。フォルモは特に違和感を覚えなかったらしく快く答えてくれた。


「俺の実家で味噌や醤油ってのを作っていてな。子供のころから食べてたんだ。俺は一度実家から出てノヴィルに行ってて、みそ汁が恋しくなったから自分なりに作って、実家に戻った時に島の奴らに勧めてみた」

「フォルモはノヴィルで軍隊長をしていたんです。フォルモのみそ汁の味はなかなか再現できないんですよ」

「部下に食わせて研究してできたものだからな。他にやることなかったし」

「軍隊長ならばほかにやることあったんじゃないの?」


 その疑問にはフォルモは答えてくれなかった。職務怠慢だろうか。

 でもそれより気になる事を聞いてみる方がいいかもしれない。彼が転生者かどうか、それがわかれば新たな味方としてナハティガル君を守れるかも知れない。


「フォルモさんはノヴィルの軍に入っていたのになんで辞めちゃったの?」

「ん?俺が辞めたのは今から9年前だったか。ノヴィルの教皇様が狂っちまった時だった」

「狂った?」

「そう。皇后様が亡くなったのが原因か、突然姫を監禁して皇子を城から追い出そうとしたりな。考えも変わったのもあって嫌になったんだよ」


 ノヴィル教皇の変化。そんなのは原作では聞いた事がなかった。アンちゃんの顔色を窺うもアンちゃんも知らないようだ。


「辞めるのを決めたら人探しを依頼されてな。だからしばらく放浪して人探ししたんだが見つからなくて、プレニルに行くのは避けたかったからここで仕事させてもらってるんだ」

「人探しですか?」

「あぁ。ここなら色んな奴らが来るから見つけられると思ったんだが」

「どんな人ですか?」

「茶髪の青い垂れ目。身長は小さめのアンブラっていう男らしい。今なら15歳ぐらいだって言ってたな」


 視線が動きそうになるのを必死に抑えた。恐らくナハティガル君も同じだろう。まさにその探し人がここにいるのだから。


「……なんでその人を探してるの?」

「理由と依頼主は言えないんだ。ごめんな」

「いえ、それなら仕方ないです」


 理由は不明。可能性としてはアンブラの復讐に手を貸してやれってとこだろうか。だとすればアンちゃんと会わせるのは危ないだろうか。依頼が誰かわからないけれどもしノヴィルの偉い人からだとすれば、復讐する気が無いアンちゃんを報告されたらアンちゃんが危ない。一番守りたいのはナハティガル君だけど同じ転生者のよしみでアンちゃんに危害があるのは良い気がしない。

 黙ってやるかと思ってまたおみそ汁を堪能しようとした。


「……これ、この橋で販売ってできないのかな?」


 アンちゃんの言葉に皆の視線がアンちゃんに向く。フォルモさんにばれないように大人しくするつもりはないようだ。


「おみそ汁と、あと米握ったものとか、移動しながら食べれるものを販売したらこの味噌と醤油が広く伝わるとおもうんだけど」

「確かに伝わるだろうが、別に広めなくてもいいんじゃないか?ノヴィルの奴らはともかく、プレニルの人間は興味ないだろうし」

「そうだろうけど、私はこういうものも沢山の人に広めたいんです」


 フォルモさんは続けろというように頷いた。アンちゃんは出来る限り言葉を選びながら続ける。


「私は少しノヴィルに住んでましたが、不平等だと思う事は多くて、プレニルが羨ましいと思った事は少しあります。でも平等ばかりというのは食も衣服も全てが同じと聞いてます。それではどちらの国も不自由に思えるんです。でもここはプレニル程の平等の押し付けは無く、ノヴィル程の不平等を感じません。部外者が言うのも違うとは思うんですが、この島を平等も不平等も無く、このおみそ汁のように生活に少しの楽しみがある場所にしてほしいと思うんです」


 そう言ってアンちゃんはナハティガル君を見る。ナハティガル君は少し考えてから口を開いた。


「確かに、この島にいる方には二国の宗教に基づいた法が嫌でここに来たという方も少なからずいます。アンの言うようにこの場所ならではの物を広めるのは賛成したいところがありますが、二国から何か言われたら弱い立場でもあります」

「二国に何か言われれば、例えば住民を差し出したり、この場所から離れさせられたりされる可能性があるってことか」

「そうですね。そうなります」

「それなら」


 フォルモさんの大きな手が私の肩を叩いた。何か嫌な予感を感じる。


「こっちにも神様みたいな存在がいるんだから、ここを国にして強い立場にするのもいいんじゃないか?」

「フォルモさんも私を神様にさせるんですか!?」

「え、神様みたいなもんだろ?」

「神様程万能じゃないです!私に神様の役を押し付けないでください!」

「え、だってなぁ?」


 フォルモさんの賛同を求める声にアンちゃんとナハティガル君が頷く。


「私を守ってくださいましたし」

「お前が眼鏡からその姿になるスキルってツクモガミって言うんだろ?神入ってるじゃん」

「なら神様でいいだろうな」


 何故私を置いて皆の意見が固まってしまうのか。私の意見を聞いて欲しい。私に神は無理に決まってます。私は何の能力も無い眼鏡なんだよ。人のスキルが見えるぐらいなんだよ。そんな奴を神に置いて後悔しかしないぞ!

 そう言いたい事はたくさんあるのに、アンちゃんが私の腕を掴んでナハティガル君とフォルモさんから離れて声を潜める。


「嫌っていう気持ちはわかってる」

「わかってるならなんで!?」

「ここを国にすれば、橋から島に入る奴を今より制限かけられるだろ?そうすると俺が嬉しいし、島に住んでる住民達も連れ戻されるとか考えずにすむ」

「でもそれだと二国に敵視されるじゃん。そうなったらナハティガル君が危ないよ!」

「ナティの安全は大丈夫だ。ナティを教皇に据えればいい」


 ナハティガル君が教皇。その言葉に私の思考が固まる。アンちゃんは言い聞かせるように続ける。


「ナティが教皇になれば優先的に守られる。神となったお前がナティを優先的に守っても誰も疑問に思わない。今のままだとお前はナティとずっとくっついていなければならないから自由が無いだろ?その辺も解決できるかもしれない」

「……神になれば自由?」

「おう」

「神になれば何でもし放題?」

「お、おう?」

「神になればナハティガル君にあんなことやこんなことを」

「落ち着けメガネ」


 思考がおかしくなった私の頭を力を加減したアンちゃんの手が叩く。後でナハティガル君に起こられても知らないんだから。

 さて、痛む後頭部をさすりながら落ち着いてみる。私が神になってこの島を国にする。二国からの反感はあるだろうけれど、教皇となるナハティガル君を安全な場所に籠らせれる。私が動けなくても「教皇を守れ!」と命令すれば皆優先してくれるかもしれない。神の力が足りないのなら、私が力をつければいい。無理だと決めつけずにやってみればいいのかもしれない。


「……わかった。その代わり、提案したアンちゃんには色々面倒事押し付けるからね」

「俺が好きな事できるなら構わない」

「よし、乗った」


 国を作って見せようじゃないか。私が神となって。好きな事を楽しめるような国にしてやる。

 アンちゃんから離れてナハティガル君とフォルモさんの顔を順番に見る。二人とも不安そうな気配はない。きっと期待されているのだ。私にならできると思ってくれているのだ。それならば、私なりの国づくりをしてみよう。


「ナハティガル君を教皇として国を作ります!皆が平等で不平等でいられる、好きな事ができる国を! 名前は、メガニア!」


 メガネという国名は嫌だったから、前世の世界の国名に似せてもらった。この日からメガニア建国が始まったのだ。


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