第36話 金の聖石
ハルキが目を開けると、そこにはミヤモトミヤがいた。
「ハルキさん、大丈夫ですか?」
「お、おう。なんともないな」
「良かった……」
「って、おい! 俺のことなんかいいんだよ。いや、よくないな、どうなったんだ、これ?」
「ハルキさん、無事っすかあ!」
ニッタの声が聞こえる。
ホッとしたハルキが声の方を見ると、魔獣が消えていて代わりに薄ぼんやりとした一人の男が立っていた。
男は白髪交じりの黒髪をオールバックにし、髭を蓄え、グレーのスーツを着て、左胸には金色の石が光っている。
「え?」
ミヤモトミヤが呟き、男に近づく。
「お祖父さま?」
「久しぶりだね、サナエ。ずいぶんと大きくなったね」
「え? ええ? どういうことっすかあ!?」
ニッタが近づき尋ねると、ミヤモトミヤの祖父は話し始めた。
「私は、教会本部で本物の聖石についての調査をしていたんだ。聖石(箱)とは、簡単に言えば、聖櫃から出てくる魔物を封じ込めておくための封印箱であり、その石に聖櫃の鍵となる聖石(箱)を差し込むと、聖櫃の蓋が開き、そこから魔物が出てくる。そして、その魔物を倒すと、聖石(箱)の効力はなくなり、ただの石になる。という仕組みなんだ」
「ちょっと待ってくれよ、そりゃあまあそうなんだろうけどよ。んじゃあ聖石(箱)を聖櫃の窪みに差し込んでまで開けなきゃいけない事態ってなんなんだ? ってかわけわかんねえからもうそっちのは石箱とかでいいんじゃねえか? いやいや、そんな事よりなんで俺は無事なんだよ?!」
「君は…… そうか、君たちがサナエを連れてきてくれたんだね、礼を言うよ。あの魔物はね、本物の聖石を守るためのトラップなんだ」
「お、おう? わかんねえよ。じいさん、わかるように話してくんねえか?」
「うむ、そうしたいのだがもうあまり時間がないようだ」
そういうと男はサナエに向き直り
「サナエ、ここからはお前に託す事にするよ。さあ、これを受け取ってくれ」
と言って、胸に光る金色の石をミヤモトミヤに手渡した。
「これは何なのです? お祖父様? 教えてください!」
「ああ、簡単にこれを『聖石』だ、などとは思わないでおくれ。お前に預けた研究資料と、私が昔使っていた道具をしっかりと調べてごらん。お前ならきっと使いこなせるはずだよ。これは私からの課題だよ、サナエ」
そういうとミヤモトミヤの祖父はウインクして見せる。
「そうだ、もう少しだけヒントを与えておこう。この世界には全部で十四個の聖石があるんだ。サナエに渡したのは『角金の聖石』という物で、彼らは『青炎の聖石』を持っているようだね。それではそろそろ時間のようだ」
ハルキとニッタの方を指さし言うと、体が徐々に薄れていく。
ミヤモトミヤは渡されたものを大事そうに抱え、涙を浮かべながら、「お祖父さま、ありがとうございます」と言った。
そして、老人はハルキたちに向き直ると「君たち、本当にありがとう」と言い、徐々に光の粒となって消えていった。
「おい」
「はい、なんすか? はい」
「結局あのじいさん、なんで俺が無事だったのか言わずに消えちまったじゃねえか。なんだよトラップって」
「あー、そうっすねえ。わかんないっす」
二人がミヤモトミヤの祖父の消えた場所を見つめていると、ミヤモトミヤが二人のところにやってきて、話しかけてきた。
二人はミヤモトミヤの顔を見て驚く。
その顔には満面の笑みが浮かんでいたからだ。
「ハルキさん、ニッタさん。本当にありがとうございました。私、これからおじいさまの課題に取り組んでいこうと思います」
ハルキとニッタは顔を見合わせ、肩をすくめると笑顔で応えた。
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