第6話 おまけ①「男だもの」

雲心月性

おまけ①「男だもの」



 おまけ①【男だもの】




























 「珍しいわね、タカヒサと喧嘩でもしたの?」


 「すみれちゃん!よく聞いてくれたね!!」


 「さっきから、話し聞いてくれオーラが出てたわよ」


 面倒臭いと思いながらも、すみれは誠人の話を聞いてみることにした。


 しかし、これが失敗だった。


 「・・・これは何?」


 「男のバイブル!!つまり、エr」


 言い切る前に、すみれに見事なアッパーを喰らった誠人だが、それにめげずに話しを続ける。


 「すみれちゃん!これは男として当然持ってなくちゃいけないものだよ!!それなのにこいつときたら、一冊も持って無いなんて言うから!!俺が折角買って来てやったってのに、ゴミ箱に捨てるどころかコンロで燃やしやがったんだ!!!」


 「・・・あんたの脳みそを燃やしてやりたいわ」


 「すみれちゃんからも何か言ってやって!男としてどうかと思うって!!」


 「健全な男がみんなそういう本を持ってるかなんて私は知らないけど、無理に押し付けるのもどうかと思うわ」


 「すみれちゃん、タカヒサの味方!?」


 「味方とかじゃなくて。そもそも、タカヒサの女の趣味知ってるの?」


 「知らない」


 「でしょ?」


 「でも、スタイル良い女を見て反応しない男はいないんじゃない?いや、俺はすみれちゃんにしか反応し・・・」


 「まったく。私はか弱いんだから、何度も殴らせないでよね」


 「すみません」


 「でも、私もタカヒサの女の趣味には興味あるわ」


 「すみれちゃん、堂々と浮気!?」


 「浮気って・・・。私と誠人の間に何の繋がりもないでしょ」


 「すみれちゃんてば、俺と心以上の繋がりが欲しいの?照れないで言ってよ」


 「で、タカヒサ、どうなの?」


 「・・・・・・」


 これまでずっと黙っていたタカヒサは、何かを作っているようだった。


 今度のトレジャーハンターで使うものかは知らないが、手先が器用なタカヒサは、使いやすいように自分で手を加える。


 もともと無口なタカヒサだが、こうして何かに没頭しているときは更に口を聞かなくなる。


 それを見ていたすみれは、呆れたようにため息を吐いてこう言った。


 「この調子じゃ、彼女が出来たところで愛想つかれるのが落ちね」


 「そうでしょそうでしょ?こんな男、つまらないじゃん?やっぱり俺みたいな男の方がいいでしょ?」


 「あんたはあんたで問題大ありだけどね。まあ、タカヒサみたいなクールっていうか、冷たい男が好きな子もいるかもしれないしね。タカヒサがこういう子がタイプ、って言ってるイメージもないけど」


 「タカヒサは可愛い系?美人系?それともスタイルで決めるタイプ?性格?背は高い人?低い人?俺は女の子みんな好きだけどね。いや、すみれちゃんがダントツで一番だけどさ!!」


 「だから、あんたの趣味はもういいのよ」


 誠人とすみれで勝手に話しを進めていると、ふとタカヒサが手を止めた。


 ずっと下を向いていたからか、首を回したり肩をぐるぐると回したかと思うと、リュックを持って立ちあがった。


 「どっか行くのか?」


 「部品で足りないのあった」


 「お前、本当にタイプないの?なんなら、今度色んなタイプの女の子、紹介してやるよ?」


 冗談交じりに言い放ったこの言葉に、タカヒサは眠そうに目を細めたままこう言った。


 「タイプはない。本能的に好きになった女がタイプだろ」


 それだけを言って部屋を出て行ったタカヒサだが、残された誠人とすみれはぽかん、と口を開けていた。


 そして先に口を開いたのはすみれだった。


 「やば、惚れそうになったわ」


 「すみれちゃん!?」


 それから30分ほどでタカヒサが帰ってきたとき、なぜかすみれは手料理を作っており、誠人は部屋の隅でいじけていたとか。



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