雲心月性
maria159357
第1話 狂い咲く花
雲心月性
狂い咲く花
登場人物
新ヶ尸 誠人 あらがしまこと
タカヒサ
野崎 すみれ のさきすみれ
ザンギ
ミツクニ
イオール
ジェシカ
ミドル
ラウラ
光陰は矢のごとく、取り返すすべもなく、風にさらわれるように去ってしまう。
ヴィヨン
第一話 【狂い咲く花】
「すみれちゃーん。いい加減に機嫌直して頂戴よ」
「何よ。さっきあの女のこと見てたじゃない。別に良いのよ?そんなにあの女の方が良いなら、声でもかけてくれば?」
「そんなことないって。すみれちゃんが一番だって言ってるでしょ。可愛い顔が台無しだから笑って笑って」
「誰にでも一番だって言ってる男が良く言うわよ。その性格直さないと、一生結婚なんて無理ね」
「え、何すみれちゃん。それって俺に対する逆プロポーズ!?嬉しすぎてハグしたくなっちゃう」
「止めて、近づかないで」
「そんな冷たいすみれちゃんも俺は大好きだよ」
「お前等邪魔だ。出て行け」
とある古びたアパートの一室。
その部屋の中には今、3人の男女がいる。
「新ヶ尸、お前何しにここに来たんだ」
まず1人目は新ヶ尸誠人、黒髪に黒服を着た男で、若そうには見えるが実際は何歳か分からない。
先程の会話でも分かる通り、女の子が大好きな男だ。
2人目はその新ヶ尸誠人を掌で転がしている女、野崎すみれだ。
黒髪は肩ほどの長さで、身体のラインが程良く出る白いワンピースを着ている。
ちなみに、胸はEカップとのことだ。
そして3人目、この部屋の住人でもあり、前2人を他所に銃の手入れをしている男は、タカヒサという。
茶色の髪で鼻には絆創膏、首には赤いターバンを巻いている。
この男はトレジャーハンターとかいう、え?嘘でしょ?という仕事を生業としているようだが、儲かっているのかどうなのかは不明だ。
カーキ色の長袖を肩から羽織り、黒の半袖の隙間から見える腕は逞しいものだ。
銃の手入れ以外にも、ナイフを磨いたり、ロープやランタンの準備、それから命を繋ぐのに大切な水の確保もある。
その準備真っ最中だというのに、邪魔な2人がタカヒサの右と左から、どうでも良い喧嘩をしている。
ちなみに、誠人とすみれは付き合っているわけではない。
「タカヒサ、銃ばっかりいじってないで、俺のことも構ってくれよ」
「五月蠅い」
「酷い!すみれちゃん、どう思う?こういう冷たい男より、俺みたいな可愛げのある男の方が良いでしょ?」
「あんたのは可愛げっていうか、面倒臭いのよ。それに私、タカヒサの身体つきは結構タイプよ」
「・・・何をおおおおおおお!!!おいタカヒサ!俺と腕相撲で勝負しろ!!」
「すみれ、お前も黙れ」
「あら、本心よ?」
暑い暑いといいながら、すみれは自分の部屋であるかのように、勝手に冷蔵庫を開けると、そこに入っている麦茶を取り出し、自分の分だけコップに注いだ。
この麦茶はタカヒサが用意しておいたものではなく、ちょくちょく来るすみれが勝手に入れておいたものだ。
あまり使われていない台所の引き出しには、お菓子なども入っている。
エアコンがあるのに使わないタカヒサを見て、誠人は「変温動物だ」と言っていた。
「で?私もそろそろ聞きたいわ」
「わかったわかった。タカヒサ、とりあえず手を止めて俺の話を聞く気はあるか」
「ない。てか、このままでも聞こえてる」
「男ってのはな、同じことを同時に2つは出来ねえ生き物なんだよ」
だから手を止めろ、と言いたかった誠人だが、タカヒサがあまりに真剣な顔つきで手入れをしているものだから、それ以上は言わなかった。
ふう、と一息ついたあと、誠人は胡坐をかいて笑みを浮かべる。
「クソな野郎がいるって情報が入ったんだ。で、そいつをなんとかしてほしいって」
「クソな野郎って、もしかして誠人のことかしら」
「すみれちゃん酷い。俺、これでもまともな方だと思うよ?」
すみれはキッチンで麦茶を手に持って立ったままの状態で話を聞いていた。
一方、誠人はヘラヘラと笑いながらも、冗談交じりに話しているときとはまた違った目つきで話を続ける。
「一応調べてきたんだけど、多分、すみれも嫌いなタイプの男だと思うよ」
「・・・・・・」
どこから情報を仕入れてきたのかは聞かないとして、誠人の口から出てきた内容は、女のすみれからしても、男のタカヒサからしても、実に胸糞悪くなるものだった。
「女を騙して監禁。あげくにしたいだけしたら殺す。使い物にならなくしてやろうかしら」
「相手は男だ。すみれが囮になるしかないんだけど、どうする?嫌なら俺が女装して・・・」
「「吐き気がする」」
「はい」
すみれとタカヒサに同時に酷い言葉を言われ、誠人は若干項垂れた。
「すみれちゃん、聞こえる?」
《ええ》
「聞こえてたら、俺に向かって投げキッスして」
《タカヒサ、誠人の脳天狙って》
「弾がもったいない」
「お前、俺の脳天をなんだと思ってるんだよ」
《来たわ》
すみれの言葉に、誠人は目だけをちらっと動かして、ターゲットを捕える。
すみれは気付かないふりをして、男から声をかけられると、誠人たちには見せないであろう恥じらう乙女のような笑みを見せる。
男はすみれの向かい側に座ると、アイスコーヒーを注文した。
金髪の髪は綺麗に靡き、一見、爽やかな印象を受ける。
「えっと、名前、聞いていいですか?」
「すみれです」
「すみれさん。見た目どおり、可愛らしい名前なんですね」
「ふふ、お上手ですね」
「本当に思ったんですよ」
男の名は、ミツクニというようだ。
あははうふふと楽しそうに話をしているすみれとミツクニ。
趣味はなんだとか、好きな食べ物嫌いな食べ物はなんだとか、兄弟はいるのかとかいないのかとか、そんな他愛もないことを話していた。
しまいには、ミツクニは自分の家にすみれを招待していた。
「ぐぬぬぬ・・・。俺でさえまだすみれちゃんを誘ってないってのに・・・!!」
「お前は所在不明だろ」
「すみれちゃんもすみれちゃんだよ。あんな男のどこがいいんだか」
「どうみても演技だろ。あいつがあんなおしとやかな笑顔を浮かべられると思ってんのか。ちゃんちゃらおかしくて臍で茶が沸かせるよ」
「勝手に沸かしとけ」
「撃ち殺す」
「ごめんなさい」
最初は断っていたすみれだが、ミツクニはすみれの手を握ると、お会計をしてそのまま何処かへ向かって歩き出してしまった。
誠人とタカヒサもその後を追うが、公園を散歩したり、すみれが好きそうな洋服を見たり、カフェに寄ったり。
まるで恋人同士のようなことをしていた。
あっという間に夕暮れになる頃、すみれとミツクニはまだ楽しげに話をしていた。
すみれからしてみれば、一方的に楽しそうに話しかけてくるミツクニに相槌を打っているだけなのかもしれないが、傍から見れば2人とも楽しそうに見える。
そんなことを言ったらすみれに白い目で見られるだろう。
「すみれさん、良かったら家に来ませんか?」
「え?」
「ゆっくりお茶でもと思ったんですけど・・・。すみれさんといると、とても楽しいですし。ダメですか?」
「・・・・・・」
この時、どうしてすみれは即答でNOと言わなかったのかと言うと、耳に装着してある小型のイヤホンから聞こえる、五月蠅いほどに何か喋っている誠人の声が聞こえていたからだ。
だからと言って、ミツクニの言葉が聞こえていなかったわけではないのだが、それよりも先に、誠人に一言言ってやりたい気持ちの方が大きかっただけだ。
「すみれさん?」
「え?ああ、すみません。えっと、私は構いませんよ?」
「本当ですか!?嬉しいなぁ!!!」
ミツクニはすみれの手を握り、そのまま自宅へと向かって歩いて行く。
それを見ていた誠人は、2人が見える場所で水を飲んでいたのだが、掴んでいたガラス製のコップをガシャン、と握りつぶしてしまった。
欠伸をしながら誠人を眺めていたタカヒサは、これは弁償すべきものなのかどうかと少し考えた後、誠人を引きずってその場から立ち去るのだった。
「わあ、綺麗なお家ですね」
「そうですか?さあ、どうぞ」
手を引かれて辿りついた場所は、住宅街ではなく、住宅街から結構離れた場所にぽつんと建っている家だった。
豪邸とまではいかないが、それでも通常の会社員では建てるのが困難であろう敷地と建物、そして車。
外車なのだろが、すみれは車のことなど分からず、免許は持っているがペーパーなため、何と言う車かは知らない。
独り暮らしには不必要と思われる車は、車庫に規則正しく大人しく、3台並んでいた。
そもそもこのミツクニという男、何の仕事をしているかさえまだ聞いていないが、聞かない方が良さそうだ。
家の中へと案内されると、中もとても綺麗で広々としていた。
ハウスキーパーでも雇っているのかと思うほど綺麗になっているため尋ねてみたが、そう言う人は雇っていないということだった。
それならば自分で掃除をしているということなのだろうが、この広い家の中を1人で掃除なんて面倒で普通はやらない。
客室だろうか、その部屋へと案内されたすみれは、最早安いのか高いのかさえ分からないその椅子に腰を下ろす。
「今お茶持ってきますね。紅茶が良いですか?それともコーヒー?」
「紅茶でお願い出来ます?」
「ええ、もちろん」
にこりと微笑んで部屋から去って行くミツクニを見届けたあと、すみれは首をぐるっと動かし、部屋の中を見渡した。
「(無駄に広い家ね)」
イヤホンに手を軽く添えると、向こう側にいる誠人に話しかける。
「潜入したわ。ちゃんと着いて来てるんでしょうね?」
《・・・・・・》
「ちょっと、誠人?タカヒサ?」
《・・・・・・》
聞こえていないのか、それとも電波が届いていないのか。
誠人たちからの返答がないため、すみれは若干の不安を抱く。
しかし、逃げることも出来ないまま待機していると、ミツクニが紅茶を持って入ってきた。
「お待たせしました」
「いえ、ありがとうございます」
お洒落なアンティークがテーブルの上に置かれ、すみれの前に用意されたカップの中に紅茶が注がれる。
それをただじっと見ていたすみれに、ミツクニは飲むように勧める。
「いただきます」
「お口に合えば良いんですが」
ゆっくりとカップの端を口に近づける。
ミツクニは自分のカップにも紅茶を注ぎながらも、視線はすみれに向けていた。
半分ほど飲んだところで、すみれはふう、と一息つき、ミツクニに目線を向ける。
「美味しいです」
「それは良かった。こちらもどうぞ」
そう言ってミツクニが用意したのは、紅茶には合うであろうクッキーだった。
それも1つ掴み、口に入れる。
「ん、美味しい」
口にまだクッキーが残っているまま、すみれは残っている紅茶を口の中へと入れる。
ミツクニは頬杖をつき、そんなすみれのことをただただ微笑みながら眺めているだけ。
「あの、ミツクニさん」
「なんです?」
「折角淹れた紅茶、飲まれないんですか?」
「ああ、これですか?あまり好きじゃないんですよね、アールグレイって」
「味が苦手なんですか?」
「味が苦手というより・・・。今の俺になってしまった原因が、グレイっていう女性だったので」
「それってどういう・・・」
眩暈が襲ってきたかと思うと、続いて強烈な眠気に誘われる。
身体に力が入らないまま、すみれはテーブルに伏して意識を手放した。
「・・・・・・」
目を覚ましてから少しの間、何があったのを思い出していた。
それから感じたのは、自分の身体が自分の身体ではないような重たさと嫌悪感、倦怠感、苛立ちやらが混ざっていること。
背中にあたっているものが柔らかいことから、きっとここはベッドの上なのだろうという予測は着いたが、こういう状況になってしまった自分の甘さを恨みたいところだ。
そんな思考を巡らせていたすみれの横の方から、聞き覚えのある男の声がした。
「起きたか?」
「・・・・・・」
まだ半開きであろう目だけをそちらに向けると、男は至極楽しげにすみれに近づく。
すみれが寝ているベッドに腰かけ、片足を曲げてベッドの上に置くと、すみれの頬に自分の指を滑らせる。
今すぐにでも噛みついてやりたい感情だが、思う様に動かない身体を動かすことなど出来ず、すみれは心の中で男を睨みつける。
「今まで誘った女の中じゃあ、結構歳いってる方だけど、君は可愛いしスタイルも良いから全然OKだよ」
「・・・で」
「ん?なに?」
「な、んで」
「なんでこんなことって?教えてあげようか?さっき言ったろ?グレイって女がいたってこと。その女のこと、本当に愛していたんだ。心の底から。なのに、グレイは俺の愛が重たいっていったんだ。いつしか俺のことを避けるようにもなって。だから、俺はグレイを俺だけのものにするために、閉じ込めることにしたんだ」
そう言うと、ミツクニはごそごそとポケットから何かを取り出した。
そしてすみれに見せるようにちらつかせる。
「これはね、ある人からもらったものなんだ。グレイをここに閉じ込めておくときに逃げられちゃ困ると思って。ただの指輪と首輪に見えるだろ?けど、これには面白い力が秘められているんだ」
これから君にも着けてあげるね、と言いながら、ミツクニはすみれの唇に自分のそれを近づける。
ワンピースだったすみれの身体を舐めるように見ると、腰あたりから手を這わせ、太ももを直に触るとゆっくり手を上半身に向けて動かして行く。
徐々に捲られていく衣服に、すみれは目線だけを追って抵抗を試みるも、ミツクニはそんなすみれの唇を奪う。
初めてではないにしろ、すみれからしてみれば拒絶したいものだ。
「俺のものになってよ。そうすれば、幸せにしてあげるよ」
「・・・ごめん、だわ」
「残念だな。俺ほど君を愛せる男はいないのに」
ミツクニは持っていた首輪をすみれの首に装着しようとする。
「綺麗だよ、すみれ」
「ぶち殺してやろうか」
「は?」
すみれの首にはめようとしていた手を止めると、鍵をかけたはずの部屋の扉は開いており、そこには1人の男が立ってこちらを見ていた。
茶色の髪に鼻に絆創膏をあしらえた男はこちらを見て、顎でくいっとすみれの方を示しながらこう続けた。
「その女の心の声を代弁してやった」
「何だ、お前は?そんなこと、すみれが思うはずないだろ?もう俺のものなんだから」
「その女はそんな清楚な女じゃねえぞ。辞めておけ。お勧めもしねぇな。なんたって、口は悪いし性格も悪いし、化けの皮って言葉がこれほど似合う女もそうそういねぇ」
「何を言って・・・」
「すみれちゃーーーーーーーん!!!」
そこにさらに、黒髪の男がやってきた。
どこをどう走ってきたのか知らないが、やたらと汗をかいた男は鬼のような形相をミツクニに向けたかと思うと、ゼーゼー言いながらうつ伏せに倒れた。
「遅ぇ」
「体力馬鹿のお前と比べるな・・・!だいたい、すみれちゃんとの連絡が途絶えたときになんでお前はすみれちゃんの居場所を突き止められたんだよ!!まさか発信機でもつけたんじゃないだろうな!!」
「悪いか」
「そうなのか!?なんてことするんだタカヒサ!俺のすみれちゃんに!!」
ゆっくりと身体を起こしながらも男、タカヒサに文句を言い続ける男、誠人。
まだ息があがっている誠人を他所に、タカヒサはミツクニが手に持っているものを見る。
目を細めてそれを見ていると、誠人が復活したらしく、ミツクニの方に向かって歩いていった。
「何か?」
「お前に言っておくが、すみれちゃんはお前のものじゃねぇ。俺の女だから。まじで。そんなもので縛りつけようなんざ、男の風上にもおけねぇ野郎だな」
「わざわざ叱咤しにいらしたんで?」
「いや。お前さんがこれまでに散々してきた悪事は、警察には言わねえ」
「悪事?」
誠人が話を続けようとしたとき、重々しく身体を起こしたすみれが、額を押さえながら口を開く。
「あなたは、女性を誘って監禁していた。まあそのルックスだもの。引っかけようと思えば簡単にひっかけられたでしょうね。そしてあなたは女性たちに自らの欲望をぶつけるだけぶつけ、最後には殺して隠した」
「一体、さっきから何の話しを?」
「惚けるのね。きっと遺体の隠し場所はこの広い敷地内のどこか。それも、出来るだけ私生活をする上で目の届く範囲。家の中は怪しまれるから、ガレージの中かしら?地下室でもあるなら別だけど」
すみれはミツクニに近づくと、ふらつく足を踏ん張らせ、ミツクニに微笑んだ。
「目には目を。歯には歯を、ってね」
まるで天使のような笑顔を浮かべたあと、すみれは片足を思い切り振りあげ、ミツクニの大事なところを蹴飛ばした。
それを見ていた誠人とタカヒサも、思わず身震いをするほどの蹴りに、ミツクニは顔を引き攣らせながら悲痛にも身を縮込ませた。
バタン、とミツクニの車を一台拝借すると、タカヒサが運転する車はエンジンをかけて敷地内を出る。
「こいつどうすんだ?」
「どうするって、生かしておいても女の子たちの為にはならないっしょ。それにしてもすみれちゃん、見事な蹴りだったね」
「あんたたちも同じ目に遭わせてやろうかと思ったわ。この私の身に何かあったらどうするのよ」
「何もなくて何よりじゃない。俺だってすみれちゃんに何かあったら怒り狂っちゃうところだよ」
「で、タカヒサはなんであんな指輪やら首輪やらを持ってきたのよ。あんたそういう趣味でもあるの?」
「馬鹿か」
「何ですって」
「まあまあすみれちゃん」
ミツクニが持っていた指輪と首輪を、常備しているリュックへと入れていたタカヒサは、アクセルを踏み続けながらため息を吐く。
「トレジャーハンターとしての宿命」
「「・・・はあ?」」
誠人とすみれ、同時に滑稽な声と顔で怪訝そうな表情を向けられたが、タカヒサはそれでもアクセルを踏む。
そのうち、人が通らないような場所に辿りつき、タカヒサはエンジンを切る。
「じゃ、すみれちゃんはここでちょっとお留守番しててね」
「また?」
タカヒサは眠っているのか意識を失っているのか、とにかく動くこともないミツクニを下ろして担ぐと、無言のまま歩いて行く。
誠人はすみれに向かってウインクをすると、こう言った。
「この先は女の子は見ちゃダメだよ」
「・・・何よそれ」
それからミツクニがどうなったのか、事件にもなっていないところを見ると、誰も彼の存在がなくなったことに気付いていないのだろう。
それでもまた、明日は来るのだから。
「・・・・・・」
「なんだよタカヒサ。お前まだそれ眺めてるのか。なんか値打ちでもあるのか?」
「値打ちはない」
「ならなんで持ってきたんだ?ゴミになるだけだぞ?」
「・・・・・・」
「あーあ。また自分の世界に入っちゃったよ。すみれちゃん、どう思う?こういう男。絶対に女の子の話を聞いてやれない奴だよねー」
「安心して。私も誠人の話なんてほとんど聞いてないから」
「え、すみれちゃん、それって俺の顔がイケメンすぎて話しなんて耳に入って来ないってこと?照れちゃうよ」
「クソポジティブね」
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