第17話 予期せぬ反応

彼らの向こう隣にいた女子生徒二人連れは些かでもましだった、少なくとも俺の名前を知っていたから。「村田建三郎だって…凄い名前。よくここに出てるけど、どんな子だっけ?」「知らない。村田健次君と間違えたんじゃない?」「違うわよ。だいいち健坊なんてボンクラじゃない」「あ、そうか。じゃあたぶんドワンゴ(通学・通信とも可能な私立校)タイプの子よ。普段は家に居て通学してないのよ」「おめーな、ここは県立だっちゅうの」…俺は透明人間か!?と抗議したいが出来る俺ではない。この予期しない反応に少なからず面食らっていると今度は見知った顔の生徒がやって来た。つまり同クラスの男子生徒だったが立ち止まることなく名簿を見上げながら「村田か、フン」と一言評を云って立ち去ってくれた。休み時間を利用して次々と見にやって来る生徒たちは、同クラスも異クラスの奴らもその反応は殆ど同じだった。模造紙に背を向けて廊下の窓から表を見るふりをしながらその実こいつらのリアクションを探っていた俺の肩は完全に落ちた。もういい、もうたくさんだ。これ以上ここにいると自分の存在を皆に気づかれて笑われかねない。やおら窓から離れて歩き出した刹那廊下の端を曲がってこちらにやって来る生徒の姿が目に入った。それはいつも取り巻きを2,3人従えている花田という名の生徒で、俺と同クラスで学級委員だったが二年になり次第次期生徒会長間違いなしとも目されていた。実際中学でも会長をやっていたそうでその名の通り華のある、文武両道の人気者である。普段は影のような俺からすれば眩しいこと限りない、異次元のような存在で、彼に憧れることハンパではなかったのだが、話しかけることなどもちろん出来ず、互いに勉強が出来るのを幸いに何とか彼の方から話しかけてくれないものかと、女のようにうじうじしてもいたのだった。

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