第13話 自分の中の他者

背が高く髪の毛が自然な茶色で、色白だったが男らしいやつだった。俺のみならず誰に対しても自然体で、相手への理解を先とするような浜田。彼に習いながらこれを良き友とすべきだったのだが豈図らんや後の祭りというやつである。高木などは俺の力量をすぐに見限って、幾許もなくけんもほろろになってしまったし、学期が代わって席順なども変わるにつれて俺の孤独の影は徐々に深まって行った。またぞろすっかり忘れていた小学校時分の悪夢が再燃しそうな雰囲気となって来た。ずるずると蟻地獄に落ち込むような塩梅なのだがさてこの頃のこと、前章で綴った守護霊とは真逆の存在が、むくむくと俺の心の中でそのテリトリーを広げようとしていた。そこでも記したようにこれをそうと認識するのではなく、自分の思念そのもののようにただぼんやりと意識するだけなのだが、ただここで問題なのはそれが守護霊どころか何と称すべきか、一種黒い霧とでも説明する他はない、モヤモヤとした鬱積の塊りのような塩梅でもって、しかし確実に俺の心の一画をそれが占めるようになっていたことなのだ。そのゾーンの特徴を云えばやたら自嘲的でしかしそれと同時進行形で他人にもやたら侮蔑的なのだった。小学校時分と違って自意識の度合も進み、語彙も豊富になっていたぶん俺に対するそいつの決めつけ方も当を得た、俺からすればきついものとなっていた。ただそれは飽くまでも一人称の相互思念として意識されるのだ。こんな具合いにである。「ちぇっ、俺ってやつはまったく意気地なしで、面白味のないやつだなあ。皆から弾かれて当然だよ」「ふん、そうそう、その通り」「女みたいに相手から話しかけられるのを待ってるだけで、てんで自分から口を利くことも出来やしねえ」

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