第4話 中学校入学で変身
とにかくそのような体験を経て俺は「人に嫌われないようにしよう」とする、人一倍自分に対する人の目というものに敏感な子供になっていた。しかし豈(あに)図らんやそのように弱弱しく、覇気のない性格の自分にあっては、他人から好かれることなど土台無理な話で、畢竟前記のごとく「貝のように固まっている」しかなかったわけである。それ加うるに俺の父親が軍隊帰りの気性の荒い人で、酒乱の気もあって、俺はいつも父から叱られないよう、彼の気に入られようと、ひたすらいい子ぶっていた。従って、結論的に云えば俺はいつも受動的でジャスト弱く、こちらから他人にどうこうしようなどとは思いもつかない、影のような子供だったのである。しかしその影であるということの苦しさと云ったら云うに云えないもので、そんな俺の小学校時代にいい思い出などはほとんどない。さて、先に記した「末成り」「がり勉」という異名出来の事由がここからとなる。すなわち中学時代からのことで、中学に入学して初登校の日のこと、編入されたクラスで一人一人が自己紹介をすることとなった。名前のアイウエオ順に次々と席から立っては自己紹介をして行く。自分の性格とか得意な科目とかを述べるようにと担任教師の指示のもと、それぞれが各自各様に自らを述べて行く。しかしこんな場合誰でも、またどこでもそうだろうが、誰もが出しゃばり過ぎないように、皆から浮き立たないようにと、いたってそつなく、簡略に自己紹介をして行くようだ。いよいよ俺の番となった。皆にならってほとんど名前だけを云うくらに止めようと思いながら口を開く。どうせまたみんなから嫌われること請け合いの、みっともないカギっ子の口上だ…などと自嘲しながら口を開いたのだが、しかし…。
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