第三十一話

 私は、元気よく手を上げた。

「はーい! 草間くさま先生! 私は、答えが分かりました!」


 すると草間先生は、笑顔で聞いてきた。

「はい、春花はるかさん! 答えは、何でしょうか?!」

「答えは、『じゅう』の文字です!」


 草間先生は、笑顔のままで再び聞いてきた。

「その理由は、何でしょうか?!」

「はい、えっとですねえ……」


 私は、説明を始めた。草間先生が持っているのは、世界地図せかいちずだ。でも私は、普通の地図だと考えた。すると、ひらめいた。地図には、『地図記号ちずきごう』があると。なので、スマホで調べてみた。保健所ほけんしょ病院びょういん警察署けいさつしょの『地図記号』を。そしたら保健所の『地図記号』は、丸の中に、『十』の文字があった。病院の『地図記号』は、五角形の中に『十』の文字があった。そして警察署『地図記号』には、丸の中に『十』の文字が、ななめにあった。なので保健所と病院と警察署の共通点は、『十』の文字だと。


 するとまわりの小学生たちは、どよめいた。

「おお~。なるほど~」


 私は、ちょっとうれしくなった。何だかんだでクイズにハマって、答えを出したからだ。草間先生は、笑顔でさけんだ。

「お見事みごとです! 正解せいかいです!」


 すると周りのみんな拍手はくしゅをしたので、私は少しれた。そして草間先生から、賞品しょうひんの世界地図をもらった。草間先生は、大きな声で言った。はい、皆さん! 『地図記号』は地図を見る時に、とても役に立ちます。なので冬休みに『地図記号』を調べてみるのも、いいかも知れません! と。


 私は、こんな時にまで子供に勉強させようとする草間先生に、ちょっと引いた。そして思った。この世界地図は、いらないな……。


 その日、ベットに入ると、サンタクロースの疑問ぎもんでなかなかつけなかった。


 その一。サンタクロースは子供がいる家に、どこから入ってくるのだろうか? むかしは、煙突えんとつから入っていたらしい。だからサンタクロースは勝手に他人の家に入る、住居不法侵入じゅうきょふほうしんにゅううったえられても文句もんくは言えない。しかし、確かに煙突から入れば家の人に見つからずにむだろう。


 だが、そこまでのリスクを背負せおうう必要があるにだろうか? 堂々どうどう玄関げんかんから入って『サンタクロースです。子供にプレゼントを持ってきました』と言えば、たいていの親はすんなり入れてくれるだろう。更に子供が寝ている部屋にまでも。しかし今でも玄関からサンタクロースが入ってくるという話は、聞いたことが無い。今では煙突がある家なんて、ほとんど無いのに。なぞふかまるばかりである。


 その二。サンタクロースは子供にあげるプレゼントを用意よういするためのお金を、どうやって手に入れてるのだろうか? サンタクロースが働いて給料きゅうりょうをもらっているという話は、聞いたことが無い。私は、考えた。親からお金をもらえばいいのだ。子供のプレゼントのためなら、親はよろこんでサンタクロースにお金をわたすだろう。しかしやはり、親がサンタクロースにお金を渡すという話は聞いたことが無い。


 結論けつろんとしてサンタクロースの正体しょうたいは、子供にプレゼントを渡すのが趣味しゅみ大金持おおがねもち、ということになった。せちがらい世の中ではあるが、世界にはこういう人もいるんだなあと思うと、世の中はてたもんじゃないなと思った。


 次の日。朝起あさおきて朝食を食べた後に早速さっそく、冬休みの宿題に取りかかった。冬休みの宿題は、国語、算数、理科、社会、英語のドリルだけだった。自由研究じゆうけんきゅうも無かった。夏休みの時はあれほど苦労くろうさせられた自由研究も無いとなると、冬休みの宿題は少し、いが無かった。それでも午前中はドリルをやり、午後になると市の図書館に行って読みたい本をりてきて、家で読んだ。

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