『創世神界 カ・クヨム』 そして、私は傍観者をヤめた

ジョン@スミス

第1話 終わりと始まり そして、私は当事者にナる

 此処は『創世神界 カ・クヨム』


 常に新たな物語が産まれ消えていく神々の世界

 其処には沢山の色彩豊かな物語が在る。

 その一つ一つがそれぞれの世界である。


 各々の世界を管理する神々が紡ぐ物語を眺めるのが私は好きだ。

 神々によって世界の物語は千差万別で一つとして同じ物はなく、同じ様でいて…やはり違った世界が構築されていたりする。

 

過去 現在 未来


過去の異世界で冒険者が剣を奮い魔法が飛び交い

現実世界で高校生による恋の鞘当てやら甘い恋愛模様が描かれる

未来ではアンドロイドやら機動兵器がレーザーや粒子砲などの熱光学兵器を撃ち合い宇宙空間で殺し合う


 私も仮初めの名を得た時に己が世界の管理する権利と能力を身に付けはしたが、上手く行かずに幾つもの世界を壊しては創りを繰り返していた。

 参考にするために他の神々の世界を覗き観るうちに…自らの世界の管理などどうでも良くなっていた。


 お気に入りの世界の物語を繰り返して眺める。

「あぁ…なんと素晴らしき世界か」

「なんと愛しき者達か」

「何故に試練を?」

「何故に滅びと別れを!?」

「あぁ…やはり美しき物語」


 素晴らしい。


 この神々の世界にもルールは有る。

 基本的に他の神の世界には直接的に触れてはならない。

 他の神の世界を勝手に改変してはならない。

 他の神々の世界を眺めるのは自由に出来るが悪意をもって干渉してはならない。

 

 そんなルールが在るハズなのに、神に干渉して世界を歪めようとする者が現れたようだ。

 その物語を好き過ぎて嫌いにでもなったのだろうか?

「気に入らないなら見るのを止めれば良いのに…」

「二度と干渉出来ないように上位神に相談してみれば?」

 様々な声が聞こえる。


 お気に入りの世界の創世神は…

 他からの干渉をとても嫌う神だったようで…

 お気に入りの世界をどうするか葛藤しているようだ。

 もう凍結しようかと悩んでいるようだ…凍結された世界は当然の様に時が止まり、物語はある意味で終わってしまう。

 もしかしたら…無理やりにでも辻褄を合わせ物語を終わらせてしまうのかもしれない。


 そんな終わりは観たくない。

 私はハッピーエンドが観たいのだ。


 私は自分の世界ですら管理放棄したような存在なのに…

 彼ないし彼女にかける言葉が無いことに気が付いてしまった。

 

 傍観者は ただ眺めるダケ


 あぁ…なんと悲しきかな。

 自分の中にも自分だけの世界があったハズなのに。

 

 美しき世界

 

 素晴らしい景色

 

 輝かしき栄光と憐れな衰退

 

 筋肉と暴力で描かれる地獄の様な混沌

 

 出会いと別れ

 

 甘い恋愛模様と胸がすくザマァ


 自分には創れないから他に求めて止まないのだろうか?

 他の神々の世界に干渉してまでも求めてしまうのだろうか…

 いつか私もあのようになってしまうのだろうか?


 あぁ…私が愛でる様々な世界に幸いよ在れ

 幸せの途中に障害が在っても良いではないか?

 障害があるから燃える恋も愛も在るだろう。

 

 あぁ…そうか…

 私も創りたいのか

 私にも創れるだろうか?


 『私は創りたい…私だけの物語を』


 心の何処かで…消えてしまったハズの残り火が…

 消したハズの世界は消えてはいなかった。


「嗚呼…君達は終わっていなかったんだな。」

「嗚呼…なんて事だ…始まってすら居なかったのか」


 燻る残り火が難燃性の想いに引火してゆく。


 産まれる時を胎内で待つ赤子の様に


 産まれるのを待つ世界が自分にも残されていたのか


 数多の世界を傍観し、数多の終わりを観る事しかしなかった自分にも

 数多の世界が遺した物語の欠片が存在した

 その物語はやはり何処かで観たようなモノに成るかもしれない

 他の神々から貶されダメ出しされる様な稚拙なモノに成るかもしれない


 ただ…自らの世界から産まれ様とする物語を…表現したくなった。

 憧れの神々と近い位置に…


 私は今

 傍観者を止める。


 私は

 自らの世界を創る当事者になる。


 自らの世界に干渉しよう

 燻った世界に居る住人に神の視点からの試練を与えよう

 どの様な試練を与えよう?

 死後の異世界転生かな?

 いやいや、死後とミスリードさせてからの異世界転移&若返りで強くてNewゲームも良いなぁ?

 最初から俺ツエーは飽きてきたから俺ヨエーからの成り上がりも良いよね?


「嗚呼、楽しくなって来たぞ。」

「私の為に楽しんで欲しい。」

「コレは君の物語」

「私の為に苦しんで欲しい」

「沢山の試練を与えよう」

「その代わりに沢山の得難いモノを与えよう」

「君は何を望む?君は何を行いたい?」

「望むモノを与えよう」

「まぁ…私の望むモノにナルだろうが楽しんで欲しい」


『楽しくなって来た』


世界を紡ぐのが…世界を描くのが…世界を創るのがこんなに楽しいなんて知らなかった。


「あぁ…君よ…好きに生きて好きに死になさい」

「たまに理不尽が在るかも知れないが諦めて欲しい」

「諦めきれずに踠いて欲しい」


 おぉ?主人公予定の命が死んでしまった

 「????」よ死んでしまうとは情けない


 好都合ダ。ソノ命ヲ甦ラセテヤロウ。


 私の中の中学二年生が疼き出す


 私の中の邪神が全裸待機している

 しかも行儀良く正座している


 さぁ物語を始めよう!


『一命様御案内デス!!』


 神は賽子を振らないと言うが

 君の物語が輝ける様に希望を用意しよう

 君の物語が順風満帆にならぬ様に絶望を用意しよう

 君の物語がエロくなれる様に運命の相手を用意しよう

 君の物語が燻らない様に数多の敵を用意しよう

 君の世界が澱まない様に試練を用意しよう


 さぁ!冒険者よ!英雄よ!敗北者よ!


「君達の物語を始めよう!」

「君達の世界を創るが良い!!」


主人公が

ヒロインが

宿敵が


 終わったハズの世界の片隅で静かに動き出す


 そこに栄光があるでしょう

 そこに愛憎があるでしょう

 そこに滅びがあるでしょう


 未だ、その世界の物語を誰も知らない


 私の物語だけど、私も知らない物語


 創って壊そう

 壊して創ろう


 出来るかな?

 ヤるんだよ!


 大きな風呂敷を拡げよう

 閉じれなくなり怯えよう


 永遠に囚われない様に書き連ねよう

 世界が凍らない様に暖めよう

 燃え上がらない程度に自重しよう


 いつか貴方の目に止まれば幸いなり


 世界に幸い在れ




 でもね?


 やっぱり神々の世界を眺めるは止められないなぁ!

 

 リスペクトをもって参考にするから怒らないでね?


 冒険者は冒険の準備を始めよう


 恋愛ゾンビは止まるんじゃねぇぞ?


 世界の破壊者は自重しようか?


 

 この素晴らしい世界を


 この憎らしい世界を


 いつか


 いつの日か貴方に


 

 

 


 

 

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