ある宇宙人の同調圧力

グカルチ

第1話

 よくあるタイプのグレイ型宇宙人、彼らはそれぞれに個性や特性を持っていた。故に地球で生きるのが苦しい。地域にもよるが、特別個性ある人間を地球人は受け入れづらいのだ。


 あるバーで、その中の一人小さなグレイ型宇宙人が落ち込んでいる。この後おこりうる未来を予期していた。それが彼の能力、その後の事を考えていたのだ。とても憂鬱だった。


 そこへ別の背の高い、地球では平均的な身長のグレイがやってくる。彼の友人であり、メンターだった。


「また喧嘩したんだって?」

「やっぱり俺はだめかもしれない」

「まあいい、飲めよ」

「はい」


「それで、何があったんだ」

「仕事先でいわれたんですよ"もっと他人に合わせろ、もっと人間に寄せろ"って」

 小さなグレイは人間にせるための努力をしていた。人間に見えるコンタクト、化粧、カツラまでかぶっている。

「おまえは努力しているじゃないか」

「それでもだめだっていうんですよ、お前の努力が足りないって、それでよく同僚にちょっかいだされて、宇宙人にうまれたのだから、宇宙人の骨格や体型があって、それをごまかすのは大変なのに」

「暴力振るわれたか」

「ええ、あまりにひどいので自己防衛のために暴力、念力をつかったら奴の方がひどいけがをして死にかけましたが……」

「まあ、我々の方が力があるからな……」

 しばしの沈黙。

「人間の同調圧力は強いものだ、そしてそれらにはいくつもの嘘が混じっている、誰もが自分に都合のいい他人を連想し、一定の評価基準をつくり、他人にそれを要求するものだ、評価基準に合わない他人は排除する事さえあるのに”我々の基準”に適応せよという……、男はこうあれ、女はこうあれ、宇宙人はこうあれ、この年齢であれをしろ……同調圧力に合わないものは、差別されることもある、だがお前はよくやっている、もっと"演じ偽る"事をしてもいいぞ」

「というと?」

「言葉の中で、影で努力をしているという臭いを醸し出すんだ、実際の同調より効果がでる」


 やがて周囲の視線が気になりだす背の高いグレイ。彼らの心の声が聞こえてくる。

「俺たちが受け入れただけでも器の広さに感謝しろ」

「20年前、突如お前たちが飛来してから、戦争も起こさずに”差別”もせず受け入れたのに」

「小さな差別くらい我慢しろ」

 

 好きなもの飲み終えると二人は会計に進む、背の高いグレイが背の低いグレイにいった。

「ところで、お前、結婚はまだか?もうすこしいい仕事についたらどうだ?介護が必要だからって親と一緒に暮らすな、なめられるぞ、”仲間”に排除されたくなかったら、一定のコミットメントはすべきだ」

 小型のグレイは沈黙し、落ち込んだ。ここまで予想していたのだった。

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ある宇宙人の同調圧力 グカルチ @yumieimaru

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