帰り道、何かを拾いました。
@akinoirodori
第1話 邂逅
帰り道にナニカを拾った。
とてもきれいなナニカなだが、それと同時に非常に不気味でもある。
見つけた当初はあまりの気味の悪さに身震いしてしまったほどだ。
とても大きなタマゴのような見た目をしているそれは、動画でよく見たダチョウの卵のような大きさ。しかし、そうではないとはっきりと言える特徴がある。
透けているのだ、まるですりガラスのように。
そして中にはクリーム色のナニカが動いているのだ、生き物のように。
こんな片田舎の畑にこのようなものがあったら気づかないわけがないし、こんなにも未知の物体があったのならば気になってしまっても仕方がないはずだ。
ということでうちの畑に不法投棄?していて家が近かったのならば、持って帰ってしまうのもおかしなことではないだろう。
好奇心の化け物などと言われたこともある俺だったらなおさらだ。
しばらくののち、家に帰ってきた。
トラックの助手席にロープとブルーシートで固定して持ってきたが、何も異常はなかったと思う。
「しっかし、なんだろうかこれは」
よく夜中に畑に行くのにお世話になっている大光量のライトで照らしてみる。普通の卵でもある程度の光を通すものの、この卵は殻が厚いが透けているためによく光が通っているようだ。
奥に見えるクリーム色のナニカは血管がうっすらと見え、相も変わらずもぞもぞと動いている気がして背筋がひやりとする。
殻などもよく触ったりして確かめてみるが、正直に言えばダチョウの卵ってこれほどに固いのか?と思ってしまうほど固く、手触りも普通の卵とあまり変わらない気がするが、何故か暖かくも感じる。
そして重さはなんと驚異の2.6キロにもなった。ダチョウの卵は1.5キロか1.6キロほどらしいためあまりにも重い。
大きさは20センチほど、ダチョウの卵の17センチとあまり変わりがないが、この程度の大きさの違いで一キロも違うのは密度が違うからだろうか。
卵というのは中身はほぼほぼが水分であってそこまで重量に違いが生まれるとは考えにくい。ということは約一キロほどの重さの違いの分は、殻の重さということになる。
一体どのような生態をしていたらこのような頑強で重たい卵を産む生物が出来上がるのであろうか、恐竜でもいない限り食べられることはないと思うのだが?
いや、そんなことは重要ではない。いや、重要だがそこではない。重要なことは他にいくつも存在している。
一つ、俺はここ日本にこんな大きな卵を産む野生生物が存在しているということを寡聞にしてご存じないこと。
二つ、俺はすりガラスのような見た目で中が見える大きなタマゴがあることをまるで聞いたことがないこと。
三つ、世界最大の卵はダチョウの卵であるはずなのに重さや大きさで上回ったうえに全く持って当てはまらない特徴を持っていること。
正直、これらを加味すればこれは人工物でない限り、新種の生物のものであること。しかし、ダチョウよりも大きな鳥類が日本で今まで発見されなかったなんてことは絶対にありえないこと。
よって新種のタマゴでもないことがコレについての、あまりにも大きく重要な事柄であることは疑いようがないのだ。
いろいろと調べてみもしたが、なかなかにわかることが少ない。ジャイアントモアという外国の絶滅した大型鳥類の卵かとも思ったがそれだったとしても大事だ。
俺はこれが人工物だとは不思議とあまり疑ってないが、これがまっとうな生物であるとも思ってはいない。これを研究所にもっていって鑑定してもらった後、オークションで出せば何億もの値が付くやもしれない。
様々な考えが浮かぶが、俺はこれの中身が羽化した後を知りたくてたまらないのだろう。
なんとなくであるがこの卵は孵化するのではないだろうか、このようなフラグ?を立てておきながら何も起きることないのは世界が許さないだろう。
いや、正直に言うと俺がすごく期待している、もし孵化しなかったら許さないのは俺のほうだ。
ほんとに楽しみにしている、株で大負けして心臓が破壊されかけた時と同じくらい心臓がどきどきしているのだ、ここ数年で一二を争うくらいの期待値と言えるだろう。
嬉しさや期待と少しの不安を抱えたまま、押し入れから亡くなった父親の使っていた布団や毛布を取り出して丸めた後、卵を中に入れて封印した。
やはり謎だが卵は自ら熱を発するらしく、人肌でもあったかく感じる程度に布団の中が保温されている。
この卵の中から何が生まれるのか、俺は楽しみで仕方がない。
でもあの子にはあまりばれたくはないなぁ....
多分ばれたら捨ててきなさいって言われるに決まっている。
多分生まれるまでは何とか隠しきれるはずだ、あの子がいくら感がいいからってものを隠してるくらいじゃばれはしないだろう。
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