第15匙 昭和六十年、つくばとあきば:ラホール(C05)
茨城県の筑波で、昭和六十年三月十七日から九月十六日までの一八四日間、国際科学技術博覧会(EXPO'85)が行われた。
これは「人間・居住・環境と科学技術」がテーマとなった科学万博で、書き手の少年時代に地元の茨城で催されたため、何度も〈つくば万博〉を訪れ、どのパビリオンに行くか、というのが、当時の小・中学生たちの話題の中心であった、と記憶している。
その科学万博が開催された筑波から約六〇キロ離れた秋葉原に、〈つくば万博〉が開幕する二週間前の〈一九八五年三月三日〉にオープンしたカレー専門店こそが「ラホール 外神田店」である。
店のサイトには、店名の由来は書かれてはいなかったのだが、おそらく、「ラホール」という店名は、パキスタン北部のパンジャーブ地方の都市〈ラホール〉から取ったのではないか、と書き手は推測している。
日本のカレー・ショップである「ラホール」の方は、令和五年現在、秋葉原界隈で、御徒町、秋葉原、外神田の三店舗を展開しており、この日、書き手が訪れたのは、中央通りと昌平橋通りに挟まれた〈外神田三丁目〉エリアにある〈外神田店〉であった。
現在、ラホールのメインのカレーは「日本風」「インド風」「ブラック」の三種類で、これに、何某かのトッピングを付けたり、辛さを追加するのが、注文の基本形である。
だが、来客の中には、おそらく、つくば万博でどこのパビリオンに行ったらよいのか迷ってしまった来場者と同じように、三つの中のどれを選んだらよいのか悩んでしまう者もいるにちがいない。
だからであろう、外神田のラホールの店の前には、それぞれのカレーについての手書きの説明が置かれている。ホームページを参照しながら、三種のカレーの特徴をまとめてみると、それぞれは次のようになる。
「日本風」は、「小麦粉のルーに時間と手間をかけ」ている、いわゆる、「日本の家庭的なとろみのあるカレー」で、辛さ★一つであるらしい。
「インド風」は、厳選しブレンドした「20種類以上のスパイス」をベースにした「『サラサラ』のインドカレー」で、「とろみのある(日本風)カレーに比べ低カロリー」で、辛さは★三つらしい。
「ブラック」は、「インド風をベースにガーリックなどを加え」た、ラホールのオリジナル・カレーで、辛さレヴェルは★三つ以上で、ここからさらに、五段階の辛さの調整が可能であるらしい。
いずれを選ぶかは、来店時の気分次第だが、この日の書き手は、店オリジナルの「ブラック」をビーフで注文する事にしたのであった。
さて、つくば万博が催されていた一九八五年当時、東京から筑波に行くのに、交通面のアクセスはあまりよくなかった。だが、つくば万博の二十年後の二〇〇五年、秋葉原駅とつくば駅を繋ぐ「つくばエクスプレス」(略称はTX)が開通し、今では、秋葉原と筑波方面へのアクセスは俄然容易になったのである。
だから、これは〈IF〉の話なのだが、もしも一九八五年につくばエクスプレスが存在していたのならば、春休みや夏休みに、つくば万博でパビリオンを巡った後に、TXでアキバまで行って、ラホールで、カレーを食べる〈過去〉だってあり得たかもしれない、と夢想をする書き手であった。
〈訪問データ〉
ラホール 外神田店:秋葉原・外神田三丁目エリア
C05
八月十六日・水・十二時
ブラックビーフカレー・辛さ2:一〇五〇円(QR)
『北斗の拳』カード:No.09「ユリア」
〈参考資料〉
「ラホール 外神田店」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2023』、四十ページ。
〈WEB〉
『【公式】老舗カレーショップ「ラホール」外神田店』、二〇二三年八月二十三日閲覧。
「カレーショップ ラホール」、『野川グループ』、二〇二三年八月二十三日閲覧。
「秋葉原カレー特集:激戦区で大手と互角『インドカレー ラホール外神田店』」(二〇〇八年四月七日付)、『日食外食レストラン新聞』、二〇二三年八月二十三日閲覧。
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