第17匙 昭和六十三年四月、レヴェルは自分の〈辛力〉に合わせて:エチオピア(B06)
この論考の中でも既に取り上げた事のある、神田小川町三丁目に位置している〈神保町デルタゾーン〉の右辺を構成している〈明大通り〉の、三角形の頂点付近に在るカレー専門店が「エチオピア」である。
この「エチオピア」の創業は、ソウルオリンピックが行われたのと同じ年である一九八八年、すなわち、昭和六十三年、つまりは、昭和の最後なのだ。
そして、「エチオピア」を語る上で注意しておきたいのは、店のホームページにも書かれているように、「エチオピア」は、その開店当初は、カレーとコーヒーの店として出発しており、その店名は、エチオピア・コーヒーから取った事である。つまり、インド・カレーやタイ・カレーのように、アフリカのエチオピアがカレー料理で有名な分けではないのだ。ちなみに、店の出入り口に今なお掲げられている看板に、コーヒー・ショップ時代の痕跡が残されているので、神保町に行ってみたら、それを確認してみるのも〈いとをかし〉であろう。
さて、二〇二三年現在、「エチオピア」は、本店である神保町、秋葉原、御茶ノ水、そして高田馬場という、千代田区と新宿区において四店舗が展開されているのだが、実を言うと、書き手が最も頻繁に通っているのが高田馬場店で、それは、活動圏に在るのが、この店舗だからである。
そして、ただ単に近くに位置しているというだけではなく、ラスト・オーダーが二十二時半と、かくの如く、かなり深い時刻まで営業してくれている、という理由もあって、この高田馬場店は、書き手にとっては非常にありがたい存在なのだ。
だがしかし、世の中には、いわゆる〈本店至上主義的〉な考えもあって、それは、本店に比べて支店は味がやや劣る、という思い込みなのだが、こと「エチオピア」に関しては、その懸念は杞憂である。
かつて、「エチオピア」を扱った記事で目にした事があるのだが、この店は、本店も支店も、オーナー・シェフの「鈴木堅司」氏が全ての仕込みをしているからだ。
だから、どの店においても、本店と同じ味のカリーが楽しめるのだ。
もっとも、この夏・秋の時期に関しては、スタンプラリーに参加中という事情もあって、書き手は、いつもの高田馬場店ではなく、神保町デルタゾーンの本店を訪れた分けなのだが。
さてさて、「エチオピア」のカリーは、チキン、ポーク、ビーフ、エビ、野菜、豆などなど、様々な具材を扱ったカリーが用意されているのだが、この店のウリというか、魅力はなんといっても、辛さの調整が数値化されている点である。
これに関しては、「ボルツ」と同じ発想なのだが、「ボルツ」の辛さレヴェルが〈四〇〉でカウンター・ストップしてしまうのに対して、「エチオピア」では、辛さは、〈〇〉から〈七〇〉まであるのだ。
さらに言うと、最も辛くない〈〇〉でさえ、一般的なカレーの中辛相当なのである。
中辛とはどんな辛さか説明するのは割と難しいのだが、辛いのが苦手な人には辛く、得意な人にはやや物足りない、という辛さだと言えばよいであろうか?
世の中には、辛いものが得意なのをエライという〈辛さマウント〉なるものも存在し、煽られて、「エチオピア」でいきなりとんでもない数値のカレーを頼んで後悔した、という意見もしばしば見掛ける。
だから書き手は思うのだ。
そんな〈辛力〉でマウントをとってくる輩の意見など無視して、それぞれ自分のレヴェルに応じた辛さで注文すればよい、と。
〈訪問データ〉
カリーライス専門店 エチオピア:神保町・神保町デルタゾーン
B06
八月二十日・日・二十時
エビカレー・辛さ3:一〇八〇円(現金)
『北斗の拳』カード:No.08「リン&バット」〈三枚目〉
〈参考資料〉
「カリーライス専門店 エチオピア」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2023』、五十五ページ。
〈WEB〉
「会社概要」、『カリーライス専門店 エチオピア』、二〇二三年八月二十五日閲覧。
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