壱ノ五 世紀末開業伝

第18匙 平成二年、パスタとカレーのあいだ:デニーロ神田店(A07)

 八月最後の火曜日の昼、淡路町駅で下車した書き手は、そこから徒歩で、〈五十通り〉を境界とする〈小川町・錦町カレーエリア〉に向かった。

 この〈五十通り〉の周辺には、「スタンプラリー23」に参加しているカレー提供店が集中しているのだ。

 そうした店舗の中の一つに「デニーロ(De Niro)」がある。ここが、〈老舗の店を時代順に巡ってゆく〉というコンセプトに基づいて動いている、この日の書き手の目的の店であった。


 いつものカレー・ガイドブックには「開業22年」と書かれており、そして、店の卓上に置かれていたランチタイムのメニューには「創業33年 神田で23年」と記されていた。

 これらに基づいて考えてみると、カレーガイドブックに書かれていたのは、神田で開業してから「二十二年」という意味なのだろう。

 これによって、デニーロの神田での開業が、〈二〇〇〇年〉頃という事は分かったのだが、創業それ自体が〈三十三年〉という事は、デニーロのスタートそのものは〈一九九〇年〉、つまり、平成が始まったばかりの平成二年という事になろう。


 ところで、いつものガイドブックには、デニーロの料理長は「銀座サバティーニ」出身だと書かれていた。

 「サバティーニ」といえば、銀座の一等地にあった「銀座SONYビル」の中に入っていた料理店で、その創業は一九八一年にまで遡る事ができ、さらに、その本店はというと、一九一四年にフィレンツェで創業した店なのだ。

 こういった事を全て考慮に入れると、銀座サバティーニの系譜である神保町のデニーロは、イタリア料理店というよりも、より厳密に言えば、神保町の老舗フィレンツェ料理店という事になろう。


 さて、そのデニーロの「ランチパスタセット」は、「塩味」「トマトソース」、そして「カレーパスタ」の三種類が用意されているのだが、書き手が注文したのは、無論、カレーパスタである。

 具体的に言うと、デニーロのカレーパスタは、鶏挽肉と野菜のキーマカレーパスタで、その麺はかなり細く、カレーソースと麺が実によく絡み合っている、というのが書き手の印象であった。


〈訪問データ〉

 デニーロ神田店:小川町・錦町カレーエリア

 A06

 八月二十九日・火・十二時

 鶏ひき肉のキーマカレースパゲッティ(ランチ):一四〇〇円(QR)

 『北斗の拳』カード:No.01「ケンシロウ」


〈参考資料〉 

 「デニーロ神田店」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2023』、四十九ページ。

〈WEB〉

 「復活した銀座【サバティーニ】で、フィレンツェさながらの正統なるイタリア料理を」(二〇一九年三月二十二日付)、『食トレンド』、二〇二三年八月二十九日閲覧。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る